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機械工学総合演習(熱・流体コース) 指導書 A-4 非線形振動におけるカオス現象とその予測及び制御 担当:吉永隆夫(A450,Tel:6191),渡辺陽介(A449,Tel:6193) 1 はじめに 1.1 カオス力学 1. 力学の研究はニュートンの(第二)法則:m¨ x = F (t, x, x) ˙ に始まって終わる? 初期条件 x(0), x(0) ˙ が与えられれば,原理的には x(t) が求まるので,未来の系の振る舞いが予測できるはず である. しかし,ある種の非線形性の下では系の振る舞いは不規則で予測できなくなる. このような現象を カオス現象とよぶ. 2. カオスの特徴 • 決定論的な(確率変数の入ってこない)方程式で記述される • 振る舞いは初期値に非常に敏感である 3. カオス力学研究の意義,効用 • 経験的にすでにカオスの存在に気づいている(乱流,ノイズ,ファジー,安全係数 · · ·) • 簡単な数理モデルによる不規則現象の原因特定や, 複雑な現象の記述 • 複雑な現象を解析するための新しい数学的手法の開発 4. カオス振動を引き起こす非線形性の例 非線形素子(ばね,ダシュポット,キャパシタ,インダクタ),応力-ひずみ関係,ガタ,あそび,流体方程 式における対流項や境界条件,万有引力,幾何学的非線形(重力場での振り子) etc. 5. カオス振動が見られるまたは予想される例 • 座屈弾性構造の振動,ギアのあそびやバックラッシュを持つ力学系,強制非線形 RLC 回路,滑り摩擦 をともなう系,ビデオフィードバック,化学反応(ベルーソフ-シャボチンスキー反応)etc. • 気象,彗星や人工衛星の軌道 (3 体問題),心臓の鼓動(心筋梗塞),地震力学,経済学モデル,ダイナ モモデル(地球磁場の逆転) etc. 1.2 フラクタル カオス現象で現れる不規則で予想不可能な状態にも秩序構造はあるか? 散逸系システムでは解軌道は位相空間内のストレンジアトラクターに引き込まれる.このアトラクターはフラク タル構造 (非整数次元) を示す. 1 2 非線形振動 2.1 1 自由度強制振動 振動の方程式: x ¨ + f (x, x) ˙ = F0 cos Ωt. • 線形方程式: f (x, x) ˙ = 2γ x˙ + ω02 x (ω0 ∼ Ω で共鳴) • 非線形方程式 (強制ダフィング方程式): f (x, x) ˙ = 2γ x˙ + ω02 x + βx3 カオス) 2.2 (ジャンプ現象,高調波や分数調波, 位相空間 振動の方程式を x˙ = y, y˙ = −f (x, y) + F0 cos θ, θ˙ = Ω であらわすとき,解軌道は位相空間 (x, y, θ) 内を動く. 特に,F0 ≡ 0(自律系)の場合,解の振る舞いは位相平面内での以下の四つの平衡点(x˙ = y˙ = 0)で特徴付けら れる:1. 渦中心 (中立安定), 2. 渦巻き点, 3. 結節点, 4. サドル点 (常に不安定). 2.3 アトラクターの種類 平衡点(点アトラクター),周期運動またはリミットサイクル(線アトラクター),準周期運動 (面アトラクター), ストレンジアトラクター(フラクタルアトラクター) 3 カオスを見る 3.1 フローとマップ 種々の初期値に対する位相空間内での解軌道の時間発展をフローという.カオスの場合,通常複数個の特異点 (平衡点)を含む広い範囲での複雑な解軌道の振る舞い (大域的振る舞い)を調べる必要がある.一方,フローを 適当な時間間隔で切断した断面をポアンカレ断面とよび, この断面を用いることにより位相空間の次元をひとつ下 げることができ, フローの定性的な振る舞いをより容易に知ることができる.この各断面間の関数関係を写像また はマップとよぶ. 3.2 マップにおける平衡点の安定性 • 不動点(平衡点)と周期点 ポアンカレ断面に現れる点列 (xn , yn ) が xn+1 = F (xn , yn ), yn+1 = G(xn , yn ) の関数関係で与えられるとき (n = 0, 1, 2, 3, · · ·),(1) 不動点 (xe , ye ):xe = F (xe , ye ), ye = G(xe , ye ),(2)m− 周期点:xn+m = xn , yn+m = yn (または,xn = F (m) (xn , yn ), yn = G(m) (xn , yn ).ただし,F (2) = F (F ), F (3) = F (F (F )) · · ·) • 平衡点の安定性 平衡点 (xe , ye ) まわりの安定性を調べることにより,点列は以下の四つの場合に漸近 (n >> 1) する: 1. 渦中心 (中立安定), 2. 渦巻き点, 3. 結節点, 4. サドル点 (常に不安定). 2 • 1 次元マップの安定性 µ をコントロールパラメータとする 1 次元マップ xn+1 = f (xn , µ) で,平衡点が xe = f (xe ) で与えられる とき,|f 0 (xe )| > 1 の場合 xn は不安定,|f 0 (xe )| ≤ 1 の場合安定 (0 ≡ ∂/∂x) 3.3 カオスの判定 • フロー(時系列) フーリエスペクトル(カオスならスペクトル分布は連続的),位相面(サドル結合を含む複雑な解軌道) • ポアンカレ断面 (1)m 個の点:m 周期運動,(2) 閉じた曲線:準周期運動 (2-トーラス),(3) 有限領域内での一様な点の分 布 (保存系カオス) (4) 点のフラクタル的集合:ストレンジアトラクター (散逸系カオス) 3.4 カオスへのルート コントロールパラメータの増加と共にカオスにいたる代表的なルートは以下の三つである: • 周期倍加ルート:コントロールパラメータ µn (n = 0, 1, 2, 3, · · ·) に対して 2n T 周期の振動が順次現れる(T は 強制振動の周期).このとき,数列 δn = (µn+1 −µn )/(µn+2 −µn+1 ) がファイゲンバウム定数 (= 4.6692106 · · ·) を越えた時点でカオス発生 • 準周期ルート:f1 → f1 + f2 (f1 /f2 = 無理数比, (2-トーラス)) →(3-トーラス)→ カオス • 間欠性ルート:規則的な振動の中に時折不規則な振動が現れ (バースト),その不規則振動部が次第に長く なり最終的には全面的に不規則なカオス振動が現れる. 3.5 カオスアトラクターの特徴 • リャプノフ指数 λ カオスを定量的に表す測度,隣接する解軌道間の距離を d とすれば d ∼ eλt (カオスなら λ は正) • フラクタル次元 d ストレンジアトラクターを定量的に表す測度(フラクタルであれば d は非整数) 3.6 フラクタル • 次元の種類 容量次元 dC ,相関次元 dG ,情報次元 dI (dG ≤ dI ≤ dC ) • 自然界のフラクタル 地形(海岸線:1 ∼ 1.3), 川(アマゾン:1.85, ナイル:1.4),肺や血管(人肺:2.17,コウモリの血管:2.3, 脳のしわ:2.73 ∼ 2.79),植物(木の枝:1.5),星の分布(1.2),放電(1.7),雲(1.35) • フラクタル集合の例 カントール集合(dC = 0.6309),コッホ曲線(dC = 1.2618),シルピンスキーのスポンジ(dC = 2.7268) 3 4 カオス実験データの解析法 データの時系列からアトラクターの再構築を行い, 位相空間内に ‘埋め込まれた’ アトラクターの幾何学的構造を 調べ, そこから次元またはリャプノフ数を求める. • 微分位相空間による方法 時系列 x(t), x(t + ∆t), x(t + 2∆t), x(t + 3∆t), · · · より微分位相空間 [x(t), x(t), ˙ x ¨(t), · · ·] を構成する. ただし, 2 x(t) ˙ ' [x(t + ∆t) − x(t)]/∆t, x ¨(t) ' [x(t + 2∆t) − 2x(t + ∆t) − x(t)]/∆t , · · ·. 高次微分はノイズを拾うこ とに注意 • 遅延時間座標による方法 時系列 x(t), x(t + ∆t), x(t + 2∆t), x(t + 3∆t), · · · で遅延時間を τ (= m∆t, m は適当な正数) として, 埋め込 み次元 N の遅延時間座標系 [x(t), x(t + τ ), x(t + 2τ ), · · · , x(t + (N − 1)τ ))] を構成. ただし, τ , N を事前に 決定する必要がある (アトラクターの次元を D として N ≥ 2D + 1 とすれば十分 (Takens, 1981), また, 強制振動の周期を T と して τ ≤ T にとる). 5 カオス予測 カオス軌道がストレンジアトラクター内に閉じ込められる性質を利用して, 局所的な軌道予測を繰り返す. • 過去の近接軌道を探す 得られた時系列データ x(t), x(t − τ ), x(t − 2τ ), x(t − 3τ ), · · · から, 埋め込み次元 N の遅延時間座標系を構成 し, ベクトル x(t) = [x(t), x(t − τ ), x(t − 2τ ), · · · x(t − (N − 1)τ ))] と, 過去のある時刻 t0 でのベクトル x(t0 ) の間で k x(t) − x(t0 ) k< ² となるような x(t0 ) を探す. ここで, ² は微小パラメータ. • 1-ステップ予測 上で求めた近接軌道から, x(t0 + τ ) ' x(t + τ ) とすることにより t + τ での予測値を得る. さらに, 同様な手 順で t + 2τ, t + 3τ, · · · と逐次予測を繰り返していく. ( x(t), x(t0 ) 間での遷移マトリックスを用い最小 2 乗 フィッティングをすることによりこの予測の精度は向上する). 6 カオス制御 予測不可能なカオス軌道を周期軌道に変え予測可能にすることを目的とする • フィードバック法 位相空間内の実際の解軌道を監視し, 何らかのフィードバックを通して適当な信号を外部から印加すること によりカオスアトラクタに含まれる不安定な周期軌道を安定化させる. 平衡点近傍での不安定軌道に制御信 号を印加することにより安定軌道に漸近させる OGY(Ott,Grebogi,York) 法や, 遅延時間に等しい周期を持 つ不安定軌道を安定化させる遅延フィードバック法が知られている. いずれもシステム自体を変えることな く制御できるがノイズに弱くまた装置が大掛かりになる. • 非フィードバック法 動吸収器 (dynamic damper) のようにシステムのパラメータやシステム自体を変化させることによりカオス 4 を抑える. 装置は比較的簡単であるが, システムの特性を十分知る必要があり, システム自体が変わってしま う可能性がある. 7 課題 7.1 電気回路に現れるカオス現象 電気系における1自由度強制振動モデルとして,図 1 に示すような正弦的に駆動される非線形 RLC 回路を考え る.ここで,駆動電圧 V は V0 sin ωt で与えられ,容量がキャパシタ間の電圧 Vc により変化する非線形キャパシ R Vc C(V ) d V で与えられる.このとき,回路を タ C(Vc ) が用いられている.キャパシタに蓄えられる電荷 Q は V sinω 図 1: 非線形 RLC 回路 流れる電流を I ,さらに θ = ωt とおくと,回路方程式は次のようになる: LI˙ = V0 sin θ − RI − Vc , 7.1.1 Q˙ = I, θ˙ = ω. (1) 非線形キャパシタの特性 可変容量ダイオード(P-N接合ダイオード)は逆バイアス電圧をかけることにより非線形キャパシタとして用 いることができる.このとき,容量の電圧特性を調べよ. • 使用器具:直流電圧源,LCR メータ,実験用可変容量ダイオード(東芝 1S2094; 並列 5 本組) • 検討事項 (i) 非線形キャパシタの容量 C の電圧特性が C(V ) = C0 (1 + V /F )−1 , (2) で与えられるとするとき,測定結果に最小二乗近似を用いて最適な F を決定せよ. (ii) 力学系と電気系との対応から,(2) 式で与えられる非線形キャパシタに対応する非線形バネはどのよう な特性を持つか調べよ. (iii) (2) 式を (1) 式に用いることにより次のような非線形の強制振動方程式が得られることを示せ: q¨ + rq˙ + (eq − 1) = v0 sin Ωτ, ただし,˙ ≡ d / d τ であり,以下の無次元変数が導入されている: p √ √ q = Q/C0 F, τ = t/ LC0 , r = R C0 /L, v0 = V0 /F, Ω = ω LC0 . 5 (3) 7.1.2 カオスの発生 周波数 f = ω/2π の正弦電圧で駆動される非線形 RLC 直列回路 (図 1) で,非線形キャパシタの電圧波形をオシ ロスコープで観察し, その周波数分布をスペクトルアナライザーを用いて調べる.駆動電圧を増加させるに従い, キャパシタの電圧波形が大きく歪み,駆動電圧の周波数 f の 高調波 (2f, 4f · · ·) だけでなく f /2, f /4, f /8, · · · の 周波数の波 (分数調波) が発生する様子を調べよ.また, このときスペクトルアナライザーを用いて周波数が 1/2m 倍(周期が 2m 倍)になるときの駆動電圧の振幅 Vm を測定せよ(m = 1, 2, 3 · · ·). • 使用器具:波形発生器,オシロスコープ,スペクトルアナライザー,ハイ-インピーダンスプローブ,実験用 RLC 回路 • 検討事項 (i) 駆動周波数 f に対して,2m 周期 (m = 0, 1, 2, 3 · · ·)の波形が現れるときの駆動電圧 Vm および,カオ ス窓が現れるときの駆動電圧 Vw の範囲を調べ,Vm や Vw と f の間の関係を図示せよ. (ii) 測定値 Vm を用いて (Vm+1 − Vm )/(Vm+2 − Vm+1 ) = δm , (m = 0, 1, 2, 3 · · ·) (4) で与えられる数列 δm を求め,十分大きな m に対して δm がファイゲンバウム定数 δ = 4.6692106 · · · に近づくかどうか調べ, 実験で観察されたカオスへの移行ルートが周期倍加によるものか検討せよ. (iii) 実験値より得られた r,F ,Ω に対して (3) 式を数値的に解くことにより,v0 を増加させるに従い解の振 る舞いがどのようになるか調べ, 実験結果と比較せよ. 7.2 写像におけるカオス 周期倍加を経てカオスに至るルートを示す簡単な 1 次元マップとして,次のロジスティック (Logistic) マップが 知られている: xn+1 = µxn (1 − xn ), xn ∈ [0, 1], µ > 0. (5) 上式で,コントロールパラメータ µ を 0 より次第に増加させると,0 < µ ≤ 1 で安定な平衡点 xe = 0,1 < µ ≤ 3 では xe = 0 は不安定になり 1-周期点 xe = (µ − 1)/µ が現れる.しかし,µ > 3 ではこの平衡点も不安定となり n さらに別の平衡点が現れる.このように,µ が増加するにつれて xe = f (2) (xe ), xe = f (4) (xe ), · · · , xe = f (2 ) (xe ) で与えられるような 2, 4, · · · 2n − 周期点が安定な平衡点として順次現われる.そして,µ = µ∞ (= 3.56994 · · ·) ま でこのような周期倍加を繰り返した後 µ > µ∞ でカオスが発生する.さらに,カオスが現われた後も,µ の短い 区間で周期状態が現れる ‘周期窓 (periodic window)’ が存在する.たとえば,µ ∼ 3.83 で 3 周期窓が現れる(この 周期窓は間欠性ルートと深く関係のある ‘接線分岐’ を通して現われることが知られている). • 検討事項 (i) パラメータ µ を増加させた場合のロジスティックマップの分岐図を描き,周期倍加分岐を通してカオス に至る様子を示せ.さらに,µ = 3.83 近傍で周期 3 カオス窓がカオス状態からどのように現われるか 調べ,カオス窓付近の詳しい分岐図を描け. (ii) 2m 周期運動が始まる µ を µm として,(µm − µm−1 )/(µm+1 − µm ) = δm なる数列を作るとき,m → ∞ で δm が δ = 4.6692106 · · · なるファイゲンバウム定数に収束するかどうか検討せよ. 6 (iii) 適当な変数変換を用いることによりロジスティックマップ (5) に対応する微分方程式が d X/ d t = λX(1 − X), (6) で与えられることを示し,(6) 式の解析解と (5) 式の数値解を比較検討せよ. (iv) (3) 式の解の時間発展 (フロー) を強制振動の周期 T = 2π/Ω で切断したポアンカレ断面 (q, q) ˙ を用い て,v0 を増加させていくに従ってどのようにカオスが発生するか調べよ.さらに, このカオスに至る過 程をロジスティックマップ (5) の場合と比較検討せよ. 7.3 ストレンジアトラクターとフラクタル 2 次元写像に現れるフラクタル集合の例として,以下に示すエノンマップを取り上げる: xn+1 = 1 + yn − αx2n , yn+1 = βxn , (7) • 検討事項 (i) (7) 式は β = 0 でロジスティックマップ (5) に帰着し,|β| < 1 では面積縮小写像となることを示せ. (ii) どのような α, β に対してストレンジアトラクターが現れるかを調べて,そこにフラクタル(自己相似) 的な構造があることを示せ. 7.4 離散システムのカオス予測 µ をパラメータとする 1 次元離散システム xn+1 = f (xn , µ) を考える. 埋め込み次元 N = 3 とするとき, ベクトル xn = [xn , xn−1 , xn−2 ] とベクトル xn−j = [xn−j , xn−j−1 , xn−j−2 ] (j = 3, , 4, · · ·) の間でノルムが k xn −xn−j k< ² となるような j を探す. ただし, ² ¿ 1 で q (8) k xn − xn−j k= (xn − xn−j )2 + (xn−1 − xn−j−1 )2 + (xn−2 − xn−j−2 )2 とする. このとき, 最も粗い近似で xn+1 ' xn−j+1 と予測される. • 検討事項 (i) ロジスティックマップ f = µx(1 − x) で周期現象が現れるような µ に対して予測を行い, その精度を確 かめよ (ii) カオス現象が現れる µ(3.57 < µ ≤ 4) に対しカオス予測を行い, どの程度まで予測可能かを調べよ. 7.5 連続システムのカオス予測 時系列データが [x(t), x(t − ∆t), x(t − 2∆t), · · ·] で与えられるとき, 埋め込み次元 N 遅延時間 τ の遅延時間座 標系で以下のベクトル列を考える: x0 = [x(t), x(t − τ ), x(t − 2τ ), · · · , x(t − (N − 1)τ )], (9) x1 = .. . [x(t − τ ), x(t − 2τ ), x(t − 3τ ), · · · , x(t − N τ )], (10) = [x(t − jτ ), x(t − (j + 1)τ ), x(t − (j + 2)τ ), · · · , x(t − (N − 1 + j)τ )]. xj (11) 7 (12) ただし, 適当な正数 m を用いて τ = m∆t. このとき, 適当な N と τ に対して, k x0 − xj k< ² となるような j が決 定されると, 最も粗い精度で予測値は x(t + τ ) ' x(t − (j − 1)τ ) となる. • 検討事項 ダフィング方程式 x ¨ + δ x˙ − αx + βx3 = f0 cos ωt で得られる時系列データを用いてカオス予測を行い, 埋め込 み次元 N や遅延時間 τ が精度や予測時間にどのような影響を与えるかを調べよ. ただし, N ≥ 3, τ < 2π/ω とする. 7.6 離散システムのカオス制御 以下では, µ をパラメータとする次のような 1 次元離散システムを考える: xn+1 = f (xn , µ). 7.6.1 (13) OGY 法 (13) 式で与えられるカオス軌道 (· · · xn−1 , xn , xn+1 · · ·) の中には, x(i + 1) = f (x(i), µ0 ) で与えられる不安定 m周期軌道 (x(1), x(2), · · · , x(i − 1), x(i), x(i + 1), · · · , x(m), x(m + 1) = x(1) ) が含まれる. 今, µ ∼ µ0 とし xn が x(i) の近傍にあるとき, xn+1 と x(i + 1) の差は, ∂f ¯¯ ∂f ¯¯ xn+1 − x(i + 1) ∼ (xn − x(i)) + (µ − µ0 ). (14) ¯ ¯ ∂x x(i),µ0 ∂µ x(i),µ0 となるので, xn+1 もまた x(i + 1) の近傍にあるためには, xn+1 = x(i + 1) とおいて µ を以下のように選べばよい: ¯ −(∂f /∂x)¯(x(i),µ ) (xn − x(i)) ¯0 . (15) µ = µ0 + (∂f /∂µ)¯ (x(i),µ0 ) このようにパラメータ µ を (15) 式に従いコントロールすることにより, カオス軌道を周期軌道に漸近させること ができる. • 検討事項 (i) ロジスティックマップ f (x, µ) = µx(1 − x) の場合, カオス軌道の中に現れる周期軌道が不安定であるこ とを, 1-周期, 2-周期軌道を例にとり数値的に示せ. (ii) 適当な µ(> µ∞ ) に対して現れるカオス軌道を 1 周期及び 2 周期軌道に漸近するように µ を制御せよ. 7.6.2 遅延フィードバック法 1 次元離散システム (13) に対して xn+1 = f (xn , µ) + G · (xn−k − xn ), (16) で示されるような遅延フィードバックを考える. ここで, G はゲイン定数, k は離散遅延時間で xn−k = xn のとき システムは k-周期解をもつ. 特に, k=1 の場合 (16) 式は以下のような 2 次元離散システムと等価である: xn+1 = f (xn , µ) + G · (yn − xn ), 8 yn+1 = xn . (17) 適当な G の範囲に対してカオス振動は 1 周期点 xn = yn = xe に漸近するが, その点近傍での解軌道が安定である ためには, (17) 式で平衡点 xe の近傍で線形固有値問題を解くことにより, 以下の条件を満たす必要があることが 示せる: ¯ ¯ ¯ (f 0 (x , µ) − G) ± p(f 0 (x , µ) − G)2 + 4G ¯ ¯ ¯ e e ¯ ¯ ≤ 1, ¯ ¯ 2 (18) ここで, f 0 = ∂f /∂x. • 検討事項 (i) f (x, µ) = µx(1 − x) に対して (18) を満たすような G の範囲を求めよ. (ii) k = 1 の場合, 適当な µ(> µ∞ ) に対して現れるカオスが遅延フィードバック制御により 1 周期軌道に 漸近することを示せ. また, このときの G の値の範囲が上で求めた結果と一致するか調べよ. 7.7 連続システムのカオス制御 連続システムの例として質量 m (変位を x とする), 非線形バネ (力を f (x) = kx + kc x3 とする), 線形ダシュポッ ト c で構成される強制 1 自由度振動系を記述する以下の強制ダフィング方程式を考える: x ¨ + Ax˙ + Bx + Cx3 = F (t) (19) ここで, x は質点 m の変位, F (t) は強制力, A = c/m, B = k/m, C = kc /m. • 検討事項 (i) 上式で A = F = 0 としたときの平衡点の性質を調べ, 平衡点近傍での解の振る舞いを (x, x) ˙ 面で描け. 7.7.1 遅延フィードバック法 遅延時間を τ とした以下のような遅延フィードバックを (19) 式に用いる: x˙ = y, y˙ = −Ay − Bx − Cx3 + F (t) + G[y(t − τ ) − y(t)], (20) 特に y(t0 ) = y(t0 + τ )(0 ≤ t0 ≤ τ ) の場合, 系は周期 τ の振動に漸近する. • 検討事項 (i) パラメータ A, B, C の適当な値に対して, G = 0, F (t) = F0 + F1 cos ωt としたとき, F0 , F1 , ω のどのよ うな範囲でカオス振動が現れるかポアンカレ断面 (強制振動の周期で切断) を用いて調べよ. (ii) G や τ の値をどのように選べばカオスが抑えられるかを調べよ. 7.7.2 フィードバックを用いないカオス制御 (19) 式で示されるような強制 1 自由度振動系に, さらに小さな質点 ma (変位を y とする) と線形バネ (バネ定数 ka ) からなる振動系を直列に付け加えた 2 自由度振動系を考える (図 2). このとき, 付け加えた振動系は動吸収器 (dynamic damper) としての役割を果たす. 9 F(t) f(x) 図 2: 動吸収器を伴う 1 自由度強制振動系 • 検討事項 (i) x, y が以下の方程式で記述されることを示せ: x ¨ + Ax˙ + Bx + Cx3 + D(x − y) = F (t), y¨ + E(y − x) = 0 (21) ここで, A = c/m, B = k/m, C = kc /m, D = ka /m, E = ka /ma . (ii) F (t) = F0 + F1 cos ωt として, 適当なパラメータが与えられたときどのような F1 と D/E の範囲に対 してカオスが抑えられるかを調べよ. 参考文献 [1] 図解カオス入門:エイブラハム・ショー(現代数学社,1995,東保光彦訳). [2] カオス入門:長島弘幸・馬場良和(培風館,1992). [3] フラクタル:高安秀樹(朝倉書店,1986). [4] カオス応用システム:合原一幸, 五百旗頭正編著(朝倉書店,1995). [5] カオス制御 : 潮俊光 (朝倉書店, 1996). [6] Chaotic Vibration: F.C.Moon (Wily-Interscience, 1987). [7] Controlling Chaos: T.Kapitaniak (Academic Press, 1996). 10