東アジアの危機と日米同盟関係 東アジアの危機と日米同盟関係

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東アジアの危機と日米同盟関係 東アジアの危機と日米同盟関係
第 46 回・新三木会・講演会参考資料
2014 年 5 月 15 日
東アジアの危機と日米同盟関係
ー地政学的戦略の時代とインテリジェンスー
地政学的戦略の時代とインテリジェンスー
春名幹男
早稲田大学大学院政治学研究科客員教授
《 プロフィール 》 春名幹男 (はるな みきお) 氏
1946年
1969年
京都市生まれ
大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業 、 共同通信社入社。
1969~93年
大阪社会部、京都支局、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局、同支局次長
外信部次長
1993~96年
ワシントン支局長(在米報道活動通算12年)
1997~98年
編集委員兼論説委員
1998~04年
論説副委員長兼編集委員
2004年9月~07年3月
特別編集委員,
2007年3月
共同通信社退社
2007年4月~2010年3月 名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授
2010年4月~2012年3月
同
特任教授
2012年4月~2013年3月
同
客員教授
2010年4月~現在
早稲田大学大学院政治学研究科客員教授
【公的役職】
2009年7~8月
内閣官房「情報保全の在り方に関する有識者会議」構成員
2009年 11 月~2010年3月 外務省参与(
「いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会」委員)
【所属団体】
1980~1984年
1993~1996年
1990年~現在
1993年~現在
1997年~現在
2004年~現在
国連特派員協会(執行委員、書記、第二副会長)
ナショナル・プレス・クラブ(1995年国際委員長)
日本記者クラブ(1997~2007年企画委員)
国際文化会館
日本外国特派員協会
日本国際問題研究所
【受賞歴】
1995年(1994年度)
2004年(2004年度)
ボーン・上田記念国際記者賞
日本記者クラブ賞
【主な著書】
『核地政学入門』
(日刊工業新聞社)
、
『ヒバクシャ・イン・USA』
(岩波新書)
、
『スクリュー音が消えた』
(新潮社)
、
『秘密のファイル―CIAの対日工作』
(共同通信社)
、
『スパイはなんでも知っている』
(新潮社)
、
『秘密のファイル―CIAの対日工作』
(新潮文庫)
、
『米中冷戦と日本』
(PHP研究所)など
1
安倍政権発足後の日米関係
安倍政権発足後の日米関係 オバマ大統領と安倍晋三首相
2012・11・6
12
2013・1・5
1・7~9
1・17
1・18
1・31
2・7
米大統領選、オバマ再選 (p8、 Ⅴ 米社会構造の革命的変化)
自民党が総選挙圧勝・安倍首班指名、12/18 オバマ大統領電話「1月訪米説」
the Economist "Japan's dangerous cabinet"
河相外務次官訪米(首相訪米日程を調整)
米政府高官(キャンベル?)「河野談話」の見直しに懸念表明
安倍「日米首脳会談はできれば2月中にでも開催したい」
日米外相会談(首脳会談の具体的日程出ず)
(6年前にも)
安倍、衆院本会議「従軍慰安婦…心が痛む」。「河野談話」見直し論を封印
中国フリゲート艦、海自護衛艦に対して火器管制レーダー。
安倍訪米日程固まる。
22
日米首脳会談(公式共同会見なし、昼食込みで 1 時間 50 分) ①
6・7~8
18
8・30
8・31
9・3
米中首脳会談、8 時間会談
英サミットでオバマ・安倍立ち話会談
オバマ・安倍立ち話会談(画像、NHKにリーク)
オバマ・安倍立ち話会談
米政府、シリアが 8 月 21 日に化学兵器使用と報告書
オバマ大統領、シリア問題を議会の審議に委ねる
安倍・オバマ電話会談(シリア)
安倍・オバマ電話会談
9・5
G20 首脳会議、「シリア」で日米首脳会談
「シリア」で日米首脳会談 ②
1回目
2回目
9・9
日本の防空識別圏内に中国無人偵察機
9・23~28 安倍首相、カナダ・米国訪問、国連総会演説、オバマ大統領と会談せず
オバマ大統領と会談せず
10・3 ケリー国務、ヘーゲル国防両長官が千鳥ヶ淵戦没者墓園で献花
17 首相、靖国神社秋季例大祭で「内閣総理大臣」名で真榊を私費で奉納
11・19 キャロライン・ケネディ大使、皇居で信任状奉呈
11・20 ライス米大統領補佐官、米中関係は「新しい大国関係のモデル」
11・23 中国が東シナ海に「防空識別圏」設定
12・3 バイデン米副大統領が訪日 ③ 4~5 日北京、6~7 日ソウル歴訪
6 特定秘密保護法が参院で可決、成立 ④
27 安倍首相、靖国神社参拝
2014・ 2・8 ソチで日ロ首脳会談、「日ロ関係の新しいページ」(p4 ☆安倍迂回外交 5回目)
3・24~25 ハーグで第 3 回核セキュリティ・サミット ⑤
4・23~29 オバマ大統領、日・韓・マレーシア・フィリピン歴訪 ⑥
3回目
Ⅰ 日米同盟への懸念
① 第1回安倍・オバマ首脳会談
2/21 ホワイトハウス・ブリーフィング(ダニエル・ラッセル当時 NSC アジア上級部長・現国務次官補):
「大統領は、前世紀からの非常にセンシティブな歴史問題があることをよく認識しており、癒しを
促進する措置をとるのが重要と考えている。われわれの立場は常に、日本が関係改善の措置をと
るよう督励するということだ」
2/22 首脳会談:
首脳会談: 大統領「日米同盟はアジア太平洋地域の安全保障に中心的な礎」
首相「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信をもって宣言したい」
cf.「大統領は野田首相の日米関係への貢献を評価している」(WH 報道官)
② シリア問題でオバマ・安倍対立: 8 月 21 日シリアが化学兵器使用/30 日「シリアが化学兵器使用」
とCIA報告書/31 日オバマ大統領、シリア問題を議会に委ねる。武力行使論急速に後退/9 月 3 日
2
オバマ大統領が安倍首相に電話、シリア非難共同声明への署名要請。安倍首相はシリアの化学兵器使
用の証拠を求める/5 日 G20 開催のサンクトペテルブルクで日米首脳会談、首相は納得せず/6日C
IAが追加の情報提供、日本は米支持表明
問題点:安倍首相に「イラク大量兵器」のトラウマ
問題点:
③ 中国の「防空識別圏」(ADIZ)設定とバイデン副大統領日中韓歴訪
11・20 ライス補佐官がジョージタウン大学講演で「新型大国関係」説明
23 中国、尖閣諸島上空を含む防空識別圏の設定を発表
ケリー国務長官「一方的に東シナ海の現状変更、外国機へのADIZ手続き適用不支持」、
ヘーゲル国防長官「米国は軍事行動を変更せず。尖閣に安保 5 条適用」
24 安倍首相、「日本の空も秋晴れに」(「日本の空をどう守るのか」との質問に)
25 安倍首相、中国に防空識別圏撤回を要請
26 非武装の米空軍戦略爆撃機B52 が事前通告なしで中国の防空識別圏内を飛行
日本政府は日本航空などに対して、中国に飛行計画を提出しないよう要請
(日本航空・全日本空輸は 23~26 日、中国当局に台湾線・香港線の飛行計画を提出)
27 中国、「(米軍機の)全行程を監視」
29 中国軍、日本の空自機、米軍機に対してスクランブルと発表
米国務省「米航空会社の中国への飛行計画提出を「期待」(USG
米国務省「米航空会社の中国への飛行計画提出を「期待」(USG expects)と通知
expects)と通知
(日米が民間航空会社のフライトプラン提出で対立)
12・1 安倍首相「米政府が民間航空会社に飛行計画提出を要請せず」と言明
3 バイデン副大統領、安倍首相と会談、中国に対する懸念表明
4 ヘーゲル国防長官「防空圏の設定事態は新しくない」と発言
バイデン副大統領、習近平中国国家主席と会談、緊張緩和措置を要求
13 バイデン副大統領、安倍首相に電話、靖国参拝回避説得ならず
★ 防空識別圏 領空侵犯に備えるため領空の外側に設定した空域。対外的に公表し、圏内に入る航空
機には事前に通過位置、通過予定時刻の報告を求め、国籍確認などを行う。通報なく侵入した場合
は国籍不明機と判断され、迎撃戦闘機の緊急発進(スクランブル)の対象となる。中国が発表した
防空識別圏は沖縄県・尖閣諸島付近を含み、既に設けられていた日本の防空識別圏と重なり合って
いる。1950 年代に米国が初めて設定。国際法上確立した概念ではないが、防衛上の必要性から国際
的に採用されている。2013 年9月9日には中国軍機とみられる無人機が日本の防空識別圏に入り、
尖閣諸島付近を飛行した。中国外務省報道局長は、他地域の防空圏についても「適宜発表していく」
と述べており、南シナ海や黄海でも設定作業を進めている。(中国の設定はライス演説の
(中国の設定はライス演説の 3 日後)
④ 安倍政権の対米関係改善意識 「秘密保護法」「集団的自衛権」は宿題。安保双務化?
・11 月 20 日 ライス補佐官、ジョージタウン大学で講演:「同盟国の防衛責任分担を進める」
「日米防衛ガイドラインの改定に来年取り組む」「日本版NSCとの協力に期待」
・キャロライン・ケネディ大使派遣の意味
・11・27 International New York Times 紙社説:「超国家主義の安倍政権が挑発」
「オバマ政権は安倍を勇気づけることなく日本の国益を守る方法を見つけるべきだ」
⑤ 第 3 回核安全保障サミット 2014 年 3 月 24~25 日、オランダ・ハーグで開催
核安全保障サミット:世界に拡散した核物質を防護・保全する「核セキュリティー」強化のため、オ
核安全保障サミット:
バマ米大統領の呼び掛けで 2010 年から開催されている首脳会合。第1回はワシントンで約 50 カ国が
参加、管理の甘い核物質の安全を4年以内に確立するとしたコミュニケを採択した。2回目は 12 年に
韓国のソウルで開催。次回 2016 年は米国開催
*日本、米国に約 500 キロの濃縮ウラン、プルトニウムを米国に返還
・東海村の「高速炉臨界実験装置(FCA)」に濃縮ウラン 199Kg(英国から購入)、プルトニウム 290Kg
(うち 231Kg は純度 92%、米英から購入)、核武装?
核武装?
⑥ オバマ大統領アジア歴訪:
4/23~29 日本、韓国、マレーシア、フィリピン
日本:
「尖閣諸島は日米安保条約の適用対象」と大統領として初めて明言。
3
「集団的自衛権行使支持」「中国を封じ込めない」、TPPでは合意見送り
韓国:
「従軍慰安婦は人権侵害」米韓同盟強化、TPPへの参加期待
マレーシア:「TPP早期妥結目指す」
フィリピン:「新軍事協定締結」(スービック海軍、クラーク空軍両基地?)
★ 集団的自衛権: ・内閣法制局長官人事 局内繰り上がり人事を停止。小松一郎前駐仏大使を任命。
憲法 9 条①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認め
ない。
安保条約 前文 両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有している
ことを確認・・・
第3条 締約国は個別的に及び相互に協力して、…武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上
の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第5条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、
自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続き
に従って共通の危険に対処する…
★ 特定秘密保護法・日本版国家安全保障会議(NSC)
・秘密保護(秘密主義)× 民主主義(知る権利・報道の自由)とのバランス
情報公開法、公文書管理法の充実とのセットで
・日本版NSC: 危機管理、シチュエーションルーム、制度設計の熟慮欠く拙速主義
・安倍首相国会答弁 10 月 21 日予算委:
石破茂氏(自民)なぜ特定秘密保護法が必要なのか。
安倍晋三首相 各国と情報交換を行う上で秘密の厳守は大前提だ。日本版「国家安全保障会議(N
SC)」の機能を発揮させるためにどうしても必要だ。
石破氏 NSCで何をやるのか。
首相 例えば外国の潜水艦が領海侵入して出て行かない場合、状況を恒常化させようという狙いも
ある。今の法制度で適切な対応ができるか。NSCで選択肢を提供することは極めて有意義だ。
☆ 安倍迂回外交
★ 安倍第二次政権で訪問した諸国 ①ベトナム ②タイ ③インドネシア(2回) ④米国(2回) ⑤
モンゴル ⑥ロシア ⑦サウジアラビア ⑧アラブ首長国連邦 ⑨トルコ(2回) ⑩ミャンマー ⑪
ポーランド ⑫英国 ⑬アイルランド ⑭マレーシア ⑮シンガポール ⑯フィリピン
▽2013 年夏以降 8 月:中東 4 カ国⑰バーレーン、⑱クウェート、⑲ジブチ、⑳カタール
9 月: G20 首脳会議 21 ロシア、IOC総会 22 アルゼンチン、国連総会・米国
10 月: APEC首脳会議、ASEAN関連首脳会議 23 ブルネイ
ボスポラス海峡地下鉄工事計画トルコ
11 月: 24 カンボジア 25 ラオス(親中国、「じらし戦術」)
(フン・セン首相「日本と将来的に包括的、戦略的パートナーシップを結びたい」)
★ インフラ輸出とトップセールス
原発:
チェコ(2 基)、サウジアラビア(4 基)
高速鉄道:
タイ(バンコク周辺 4 路線 1400 キロ)
原発+高速鉄道:トルコ(4 基)、ベトナム(ハノイ-ホーチミン 1600 キロ)、インド(7 路線 4600
キロ、18 基)
★ 日ロ 2 プラス 2
・2013 年 11 月 2 日東京で日ロ外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)初めて
開催 岸田文雄外相・小野寺五典防衛相+ラブロフ外相・ショイグ国防相
・アジア太平洋地域での安全保障協力推進
・海自とロシア海軍の間でテロ・海賊対策共同訓練実施で合意
4
・サイバー安全保障協議の立ち上げ
・日本の「積極的平和主義」への理解求める
・次回2+2をモスクワで開催
★ 2プラス2 2カ国の外務、防衛当局の代表が安全保障政策を協議する枠組み。外務、防衛閣僚は
各国で首脳に次ぐ地位を占めることが多く、首脳会談と並んで信頼関係の証しとなる。日本は米国
との2プラス2で在日米軍再編などの主要な安保政策を決めてきた。2007年からオーストラリ
アとも開催し、米国を含む3カ国の協力を推進。ロシアとは今年11月に初めて開き、海上自衛隊
とロシア海軍の共同訓練拡充などで合意した。フランスとは 2014 年 1 月開催。武器輸出の対日事前
通報制で合意の見通し。
Ⅱ 米中関係への懸念
● 変化するオバマ政権の対中政策
米国の対中基本戦略: 「警戒」(hedge)と「包容」(engagement)の両面。中国の軍事力強化に備え、対
応策を進める「警戒」、強化経済協力の強化で中国の経済成長を取り込むため「包容」、と戦略を使い
分ける。
・2009~10 年「米中2国だけが世界の問題を一緒に解決できる」(G2
G2論)
G2
当時の胡錦濤国家主席は責任分担を拒否、同調せず。(中国は温暖化防止や対イラン制裁でも米国に協力
せず、中国発のサイバー攻撃も激化)
・2010~13 年 2010 年、強硬論に転じ、アジアへの「リバランス」(または pivot,事実上の対中包囲網)
形成に動く(米中冷戦
米中冷戦)
米中冷戦
・2013 年 3 月習近平国家主席の登場で再び事実上のG2
G2論に。(米国は対中協力関係を強化
しながら、リ
G2
バランス態勢も展開)
・6 月 7~8 日の米中首脳会談では習主席が「新型大国関係
新型大国関係の構築」を提案
①
新型大国関係
・7 月米中戦略・経済対話、ホットライン開設で合意
・9 月 6 日 サンクトペテルブルク G20 で米中首脳会談、オバマ氏「新型大国関係」合意 ②
・11 月 20 日ライス補佐官ジョージタウン大演説、米中「新型大国関係
新型大国関係」で「深く協力」③
③
新型大国関係
・11 月 23 日中国が東シナ海に「防空識別圏
防空識別圏」を設定。
防空識別圏
・12・3 バイデン副大統領訪日。(安倍・バイデン会談:夕食を含めて 2 時間半)
日米は「防空識別圏」の撤回で一致できず、「日中は危機管理の仕組みを」と要請。
・12・4~5 バイデン訪中、習近平国家主席と会談(3 回で計 5 時間半)④
④
・2014・4・6~7 ヘーゲル米国防長官来日
7~10 ヘーゲル米国防長官訪中(空母「遼寧」に乗艦)
① 米中首脳会談:2013
年 6 月 8 日米中首脳会談後ドニロン補佐官(当時)ブリーフィング
米中首脳会談:
「両首脳は尖閣諸島問題について、夕食時にある程度の長い時間をとって話し合った。米国は主権問題で
は一定の立場をとらないが、昨晩の大統領の立場は関係国が事態のエスカレートを避け、行動ではなく
外交的チャンネルを通じて話し合いを求めるべきだ」
*新型大国関係の提案 (ホワイトハウス HP)
)June 07, 2013 Sunnylands Retreat Palm Springs, California
2 日間で計 8 時間の会談
オバマ大統領: 「いかにして a new model of cooperation を形成できるか話し合いを」
習近平国家主席: 「新型大国関係形成で協力できるよう創造的に考える必要」
② 新型大国関係の形成で合意 September 06, 2013 サンクトペテルブルク
習近平主席: われわれは今一度中米の新型大国関係形成 a new model of major country relationship
between China and the United States で合意した
オバマ大統領: われわれは現実的協力と相違点について建設的に取り組む新型大国関係 new model of
great power relations の形成を継続することで合意した。
5
③ 新型大国関係の確認 National Security Advisor Susan E. Rice November 20, 2013
ライス補佐官: われわれは新型大国関係の運用を模索する。アジアでの不可避的な競争、朝鮮半島非
核化、イラン核問題の平和的解決、安定したアフガニスタンなど取り組む
④ 米中首脳級会談 バイデン&習近平
12・5 22:44 米政府高官が在中国大使館でバックグラウンドブリーフィング
・「初めて両氏の会談に立ち会ったが、そのダイナミックさ、気安さに驚いた」
・バイデンは「防空識別圏を認めない、深く憂慮している」「米国は緊張緩和に動いており、中国は危機
を招く強制的行動を避け、日本との対話のチャンネルを確立するよう期待する。他の隣国とも失敗や誤
算、事故を避けるよう求める」
・「副大統領が主張したことに習主席は乗った。問題は行動だ」
・北朝鮮の問題や経済問題も出た。(3 回の会談で 5 時間半)
★米国の対中巻き返し
ミャンマー民主化、南スーダン独立、統合エアシーバトル構想 A2AD(接近阻止・領域拒否)
Ⅲ 尖閣諸島をめぐる対立の激化
1894~95
日清戦争 1895 下関条約 ①
1943・11~12 カイロ会談、テヘラン会談 ①
1945・7~8 ポツダム会談 ①
1945・8・15 第 2 次世界大戦終戦 ①
1951・9・8 サンフランシスコ平和条約調印(1952・4・28 発効)①
①
1969
国連極東経済委員会(ECAFE)尖閣・東シナ海海底に石油埋蔵有望と報告書
1970
中国、尖閣諸島の領有権主張
1971・6・17 日米、沖縄返還協定署名 ①
1972・5・15 沖縄施政権返還①
①
・29 日中国交正常化(9・27 田中角栄・周恩来日中首脳会談 ②)
1978・8・12 日中平和友好条約調印
10・23 鄧小平副首相、尖閣諸島の領有問題に触れないと両国が約束したと発言
1996・7・14 日本の政治結社が尖閣諸島の北小島に灯台を設置
2004・3・24 中国人7人が尖閣上陸
2010・8・16 共同通信、尖閣領有権めぐる新しい「米政策」でスクープ ③
9・7 漁船衝突事件 8 船長逮捕 24 船長釈放と発表
10・16 四川省成都市などで大規模反日デモ
27 前原・クリントン、ハワイで日米外相会談 ④
2012・9
日本、尖閣諸島を国有化
2014・4
常万全中国国防相、尖閣で戦い、勝つと発言
オバマ大統領訪日「尖閣は日米安保第 5 条の適用対象」と明言
① 下関条約・サンフランシスコ平和条約・沖縄返還協定
1895 年 5 月発効日清戦争の講和条約。清は朝鮮の独立認め、遼東半島・台湾・澎湖諸島割譲。尖閣諸島は、
これとは無関係に、現地調査の結果、無人島であり清国の支配が及んでいる痕跡がないと確認、1895 年 1
月 14 日に閣議決定し領土に編入。
サンフランシスコ平和条約で尖閣諸島は、日本が放棄した領土のうちには含まれず、沖縄返還協定
沖縄返還協定により
サンフランシスコ平和条約
沖縄返還協定
日本に施政権が返還された地域の中に含まれている。中国はサンフランシスコ平和条約第 3 条で米国の施
政下に置かれた地域に同諸島が含まれている事実に対して異議を唱えなかった。中華人民共和国政府も台
6
湾当 局も 1970 年後半東シナ海大陸棚の石油開発の動きが表面化後、尖閣諸島の領有権を主張。
年後半東シナ海大陸棚の石油開発の動き
カイロ会談では、ルーズベルト米大統領が蒋介石総統に琉球諸島領有を持ち掛けたが、蒋介石は「米中共
カイロ会談
同管理なら・・・」と断った。
ただ、日米の沖縄返還協定
沖縄返還協定調印
10 日前の 1971 年 6 月 7 日、台湾が「尖閣諸島を日本に返還しなければ、
沖縄返還協定
繊維交渉で妥協」と提案。ニクソン大統領が同日、キッシンジャー、ピーターソン両補佐官と協議、予定
通り尖閣を含む沖縄返還で決着。同時に日台間で話し合いを求めることになった。6 月 9 日パリで愛知揆
一外相とロジャーズ米国務長官が会談、愛知外相は台湾との話し合いに同意。他方、蒋経国副首相は 9 日、
沖縄返還に伴い、尖閣への台湾の領有権主張は侵害されないとの確認を求めた。10 日、ジョンソン国務次
官とキッシンジャー補佐官が台湾の主張を受け入れ。17 日の沖縄返還協定調印の際、国務省スポークスマ
ンが「尖閣主権をめぐる台湾の主張は侵害されない」と明言。現在に至っている。米国は尖閣諸島が日本
の施政権下にあることを認めるが、主権は当事国間で話し合うべきとの立場維持。
(『文藝春秋』2013 年 7 月号春名論文)
② 1972
1972・
・9・27 日中首脳会談で田中角栄「尖閣問題についてどう思うか」と質問。周恩来首相「今回は話
したくない。今これを話すのはよくない」と先送りを求めた。(野中広務元官房長官は 2013 年 6 月 4 日
の訪中で日中は「尖閣問題棚上げで日中正常化」と発言。菅義偉現官房長官はその事実はないと否定)
1978・10・23 鄧小平副首相が日本記者クラブで、尖閣諸島の領有問題に触れないと両国が約束したと発
言。
③ 共同通信報道 2010 年 8 月 16 日「安保条約対象と明言せず オバマ政権尖閣諸島で中国に配慮、方針変更
日本政府にも伝達」
2004 年3月、エアリー米国務省副報道官は記者会見で、
1.尖閣諸島は 1972 年の沖縄の施政権返還以来、日本の施政権下にある
2.日米安保条約第5条は、条約が日本の施政下にある領域に適用されると明記している
3.従って、安保条約は尖閣諸島に適用される――
しかし、オバマ政権は 1、2 の表明にとどめ、3 は米側からは自ら表明しない、と決定。
日本は 2009 年 3 月、米政府に尖閣諸島に関する見解の確認を求め、米側は 1、2 のみを伝達したが、当時
の河村建夫官房長官は「米国は見解を変更していない」と発表。
2010 年 8 月 16 日、国務省定例会見
国務省定例会見でクローリー報道官:
:1、2 を認め、3 については「もしあなたが今日、
国務省定例会見
安保条約が尖閣諸島に適用されるかと質問すれば、答はイエスです」。
④ 前原外相: 2010 年 9 月、オフレコ論説会見で尖閣諸島領有権をめぐる日中間の「黙契」(暗黙の了解)
に言及、宮本
宮本雄二元中国大使
宮本雄二元中国大使 2012 年 7 月 7 日付朝日新聞掲載の座談会で、日中間に「暗黙の了解」と明
言
2010 年 10 月 27 日ハワイ日米外相会談後の記者会見でクリントン国務長官が、改めて「尖閣は安保
「尖閣は安保
条約5条の適用対象」と明言、政策を再変更
⑤ ヘーゲル国防長官と常万全中国国防相の共同会見 2014 年 4 月 8 日
常国防相:党と人民の要請を受けて、中国軍は直ちに終結し、到着するや戦い、勝利する。
ヘーゲル国防長官: 米国は領土主張に特定の立場を取らない。外交的に平和的に、国際法に従って解決さ
れるべきだ。日本に対しては条約上の防衛義務あり、全面履行を公約。
*
ファネル米太平洋艦隊情報副部長 2014 年 2 月「中国(海軍)は短期戦で尖閣奪取の訓練」
*
現実には漁民等による尖閣占拠など「グレイゾーン」が課題
Ⅳ 中国海軍戦略・真の狙い 海洋覇権から米国との対等関係へ
1982 年 劉華清、第3代海軍司令員 「沿岸防衛」能力→「沖合防衛」
(防衛ラインは黄海、東シナ海、南シナ海に拡大。第一列島線
第一列島線* 内の制海権目標に)
1989 年 天安門事件
1991 年 湾岸戦争
7
1992 年 劉華清、中央政治局常務委員(97 年引退)
1996 年 台湾海峡危機 2米空母打撃グループが台湾近海に出動、中国は「沈黙」
1999 年 南シナ海ミスチーフ環礁実効支配強化(「漁民避難施設」恒久化と「行動基準」)
旧ユーゴ紛争(在ベオグラード中国大使館誤爆事件)
2003 年 イラク戦争開戦(~11)
2008 年 「海賊対策」でフリゲート艦2隻と補給艦1隻をソマリア沖に派遣
中国国防白書が初めて「遠洋での作戦行動能力」向上の方針
中国海軍増強推定
米海軍
2009 年 主要艦 136 隻
レーガン政権時代 主要艦 600 隻体制
2015 年
146~147
現在
約 300 隻
戦略ミサイル潜水艦(SSBN)4~5+空母1~2
空母 10 隻体制
潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)で第 2 撃能力 太平洋/大西洋 50/50→60/40 へ
*第一列島線(日本列島~沖縄~台湾~フィリピン)突破能力が戦略的焦点
Ⅴ 米社会構造の革命的変化
--- マイノリティがマジョリティ化する米国 --白人票4割取れなくても勝ったオバマ × 白人票6割固めても負けたロムニー
▽2008/2012大統領選出口調査結果(ピュー・リサーチ・センター、単位%)
08
12
オバマ マケイン オバマ ロムニー
全体
53
46
50
48
オバマ連合
男
49
48
45
52
∥
女
56
43
55
44
マイノリティ
+
白人
43
55
39
59
黒人
95
4
93
6
女性
ヒスパニック 67
31
71
27
▽人口の変化
1960
1990
2000
白人
85%
75.6%
70.4%
マイノリティ
15%
23.5%
29.2%
(黒人+ヒスパニック+アジア系)
2010
65.6%
34.4%
2050(推定)
47%
51%
▽アジア系アメリカ人(2010 年国勢調査)
・人口 全米 2011
311,591,910
・教育 学士取得率
アジア系アメリカ人 17,320,856
米国民平均
28
中国系
4,010,114
アジア系
49
フィリピン系
3,416,840
白人
31
インド系
3,183,063
黒人
18
ベトナム系
1,737,433
ヒスパニック 13
コリアン系
1,706,822
日系
1,304,286
沖縄系
10,000
▽大震災・原発事故と日米の動き
3・11 東日本大震災発生
12 1号機で水素爆発。ベント。
14 3号機で水素爆発。2号機で燃料棒露出
2011
・米国への留学生
中国 194,029
インド 100,270
韓国
72,295
サウジ 34,139
カナダ 26,821
台湾
23,250
日本
19,966
米側
12 オバマ大統領、菅首相に電話
13 空母レーガン三陸沖、U2 機
「トモダチ作戦」始動*①
8
15 2号機圧力抑制室爆発。4号機で火災。
(「最も大変な日だった」)
16 陸自ヘリ、上空からの放水断念。
17 陸自ヘリ、放水開始
19 東京消防庁 HR 隊3号機に放水
福島県産原乳などから基準超の放射能
20 東京消防庁が3号機に連続放水
21 自衛隊消防車と米軍の放水車が4号機に放水
22 コンクリートポンプ車が4号機に放水
福島県 5 市町の水道から乳児基準値超放射能
23 福島県産野菜の出荷制限、金町浄水場基準超
緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)データ*④
24 3号機タービン建屋内で3人被曝
25 1~3号機への注水を海水から真水へ
4・2 CBIRF*⑤が来日(4月末帰国)
6 1号機原子炉格納容器内に窒素ガス注入
12 原発事故レベルを7に引き上げ
(米政府、日本の初動に懸念)
16 在日米国人 80 ㌔圏から退避
チュー長官「矛盾する情報」
17 オバマ・菅、2度目の電話
17 NYT、日米間で対立と報道
(米から消防車 2、防護服 2 万着)
17 米グローバルホーク投入*②
19 菅・ルース大使会談
20 チュー長官「最悪期脱す」
22 日米協議の枠組みが始動*③
24 ルース・民主党有力議員会談
オバマ、天皇に書簡
26 米軍バージ船が横須賀出港
26 NRC 報告書、窒素注入必要
28 ヤツコ NRC 委員長来日
31 サルコジ仏大統領来日
9 (IHT)東芝、WH など提案
*① トモダチ作戦
Since March 12, III MEF has been engaged in a relief mission known as Operation Tomodachi. Marines and
sailors have delivered food, fuel, water and supplies to disaster-stricken areas in East Japan as part of this
operation.
Dubbed Operation Tomodachi -- Japanese for "friendship"
*② グローバルホークと U2
グローバルホーク 主翼幅約40メートル、全長約14・5メートルの大型無人偵察機。ノースロッ
プ・グラマン製。18,000 メートルの高高度を飛行、赤外線センサーで夜間や悪天候下でも目標の捕捉
が可能。米軍は 2001 年からアフガニスタン攻撃で実戦に導入し始め、攻撃能力(空対地「ヘルファ
イアー」ミサイル搭載)を持つ無人機プレデターとともに戦場での運用を拡大中。気象観測や災害状
況の把握などでも活用されている。
U2: ロッキード社が開発。1955 年就役。25,000 メートルの高高度を飛行。冷戦時から特殊カメラ
で共産圏上空を飛び、軍事情報収集。CIA と米空軍が運用。1960 年 5 月 1 日、ソ連領空で CIA 所属
の U-2 偵察機が S-75 地対空ミサイルにより撃墜された。
NYT(3/18):米軍が無人偵察機グロ-バルホーク、U2偵察機(在韓米空軍基地・烏山配備)を
投入、東京電力福島第1原発の原子炉建屋内部の解析などに当たっている。スパイ衛星も使われた
可能性がある。グロ ーバルホークやU2は通常、北朝鮮の核施設を監視するために飛行。高度な偵
察能力を備えた米軍機の投入は、オバマ政権が現在の事態を安全保障上の緊急課題ととらえている
表れ。米 軍は日本政府の許可を得てU2などによる情報収集を実施。
*③ 日米協議の枠組み
・「トモダチ作戦」の 日米共同調整所: 横田、市ヶ谷(防衛省)、仙台空港
*④ 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI): 原子力施設で緊急事態が発生し
た際、放射性物質の広がり方や放射線量を予測するシステム。文部科学省傘下の原子力安全技術セ
ンターに設置されたコンピューターを中心に、国と自治体、日本気象協会がネットワークで結ばれ
ている。風向きや降水量といった気象情報、地形、放射性物質に関するデータを使って試算する。
1979 年の米スリーマイルアイランド原発事故を受け、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発
機構)が 80 年から開発に着手。原子力安全委員会の指針で、国や自治体の避難計画策定に活用す
るとされている。
*⑤ CBIRF(Chemical Biological Incident Response Force、化学生物事態対処部隊、シーバーフ): 米
海兵隊所属の、生物兵器、化学兵器、核兵器、放射能兵器、高爆発物対処を専門とする即応部隊。1996
9
年、オウム真理教による地下鉄サリン事件を受け設置。初期対応部隊(IRF)2部隊の計約 450 人
①化学②生物③放射線④核⑤高性能爆発物―の頭文字を取った「CBRNE(シーバーン)」に関す
る攻撃や災害への緊急対応と人命救助を担う。米側は「戦闘集団ではない」。2001 年の米炭疽(たん
そ)菌事件などで出動、五輪のテロ警戒。国外派遣は初めて。自衛隊には「特殊武器防護隊」(朝霞
駐屯地)。
Ⅵ 米外交の苦境
★シリアをロシア、北朝鮮を中国にアウトソース、当面イラン集中
★ウクライナの混乱
★北朝鮮 米国は「戦略的忍耐」政策
中国に対北朝鮮制裁実施を委ねる形
★朝鮮半島の第 3 次核危機 第 1 次 1993~94 年、第 2 次 2002~03 年
★金正恩後継体制 1 代目・金日成主席 2 代目・金正日総書記 3 代目・金正恩第一書記
2010・3
9
10
11
11・3
12
12・4・11
13
15
7・15
16
17
12
13・2・12
4・11
韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没
北朝鮮の朝鮮人民軍大将に
朝鮮労働党代表者会で党中央軍事委副委員長に就任、党指導部入り
金正日総書記の後継者に確定
党創建65周年の軍事パレードを金総書記らと観閲
北朝鮮が韓国延坪島を砲撃(金正恩は砲兵出身、手柄称賛)
韓国の国家情報院高官が、中国が正恩氏訪中を公式招請と言明
金正日総書記が死去、金正恩氏、人民軍最高司令官(軍)に
朝鮮労働党代表者会、金正恩氏第一書記(党)就任
長距離弾道ミサイル発射失敗。正恩氏、国防第1委員長(国家)就任
金日成主席生誕 100 年(「強盛大国」の大門をたたく)
李英鎬朝鮮人民軍総参謀長の全役職を解任
玄永哲大将、次帥に昇格、総参謀長就任(10 月 10 日大将に降格?)
正恩氏に元帥称号授与決定
金格植大将、人民武力相就任(元軍総参謀長)
北朝鮮、3 回目の核実験
クラッパー米国家情報長官、1968 年プエブロ号事件、1976 年ポプラ事件の方が「緊張
という点では今よりずっと厳しかった」と証言
・当初の側近、7人の有力者(12/28/2011 葬儀の霊柩車護衛、金正恩後継体制を支える核心的グループ、
霊柩車の右側は「党」、左側は「軍」の側近)
×張成沢氏(故金正日氏の義弟・後見人、国防委員会副委員長、党行政部長)↓×××
×李英鎬総参謀長(政治局常務委員、中央軍事副委員長)↓―→玄永哲総参謀長
◎崔竜海軍総政治局長→労働党書記
↑↓
(政治局員候補)
金己男党書記(党宣伝扇動部長)
崔泰福党書記(最高人民会議議長)
金永春元人民武力部長(?)―→金正角軍前人民武力部長↑↓―→金格植人民武力部長
禹東則国家安全保衛部第1副部長
(政治局員候補)
・粛清されたとみられる有力者
張成沢国防委副委員長 李英鎬総参謀長 2012 年 7 月 15 日「病気のため」前役職を解任(韓国筋「政
治的粛清」)朱霜成政治局員(人民保安部長解任)―→崔富一人民保安部長(政治局員候補)洪石亨
政治局員(党書記解任)朴寿吉副首相(党中央委員)金正角前人民武力部長 柳京上将: 国家安全
保衛部副部長=02年9月日朝首脳会談開催へ向け日本外務省と秘密協議を重ねた「ミスターX」。
2011 年1月にスパイ罪で処刑か
10