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融資実務
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裁
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融資実務
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融資実務
目 次
融
資
審
査
問1
融資審査の基本事項… …………………………………… 22
問2
貸出稟議の作成… ………………………………………… 23
問3
貸出利息の計算方法… …………………………………… 23
問4
貸出の事後管理… ………………………………………… 24
問5
JA統一ローン… ………………………………………… 25
問6
生活資金の融資… ………………………………………… 26
問7
事業資金融資の審査… …………………………………… 26
問8
運転資金・設備資金… …………………………………… 27
取 引 の 相 手 方
問9
融資の相手方… …………………………………………… 28
問10
代理人との取引… ………………………………………… 29
貸 出 取 引 約 定 書
問11
農(漁)協取引約定書… ………………………………… 30
問12
農(漁)協取引約定書の内容… ………………………… 30
問13
約定書・契約書徴求上の留意点… ……………………… 31
各
種
貸
出
取
引
問14
手形貸付… ………………………………………………… 32
問15
証書貸付… ………………………………………………… 33
問16
手形割引… ………………………………………………… 34
問17
当座貸越… ………………………………………………… 34
保
証
問18
特定債務保証… …………………………………………… 35
問19
貸金等根保証契約… ……………………………………… 36
問20
連帯保証… ………………………………………………… 37
問21
保証契約の締結… ………………………………………… 37
問22
手形保証… ………………………………………………… 38
問23
農(漁)業信用基金協会保証… ………………………… 39
問24
保証債務の消滅… ………………………………………… 39
−20−
融資実務
担
保
問25
担保物件… ………………………………………………… 40
問26
担保の特性… ……………………………………………… 41
問27
抵当目的物件… …………………………………………… 41
問28
自組合貯金担保… ………………………………………… 42
問29
譲渡担保… ………………………………………………… 43
問30
不動産担保… ……………………………………………… 44
問31
商手担保… ………………………………………………… 45
抵 当 権 ・ 根 抵 当 権
問32
普通抵当権と根抵当権の違い… ………………………… 45
問33
根抵当権の被担保債権の範囲… ………………………… 46
問34
根抵当権の元本の確定… ………………………………… 47
問35
抵当権の順位の変更… …………………………………… 48
問36
根抵当権の変更… ………………………………………… 48
問37
根抵当権の譲渡… ………………………………………… 49
問38
根抵当権の債務者死亡と相続… ………………………… 50
貸 出 金 の 管 理
問39
債務者の死亡と借入債務の相続… ……………………… 50
問40
債務者行方不明時の管理… ……………………………… 51
問41
法人取引先の変動… ……………………………………… 52
問42
債権の消滅時効と時効中断… …………………………… 53
貸 出 金 の 回 収
問43
代位弁済… ………………………………………………… 53
問44
代物弁済… ………………………………………………… 54
問45
相殺の要件と手続… ……………………………………… 55
問46
相殺通知の相手方… ……………………………………… 56
問47
債務引受… ………………………………………………… 56
問48
不動産抵当権の実行… …………………………………… 57
問49
債務名義と強制執行… …………………………………… 58
問50
各種の法的倒産手続… …………………………………… 59
−21−
融資実務
融
資
審
収益性の原則,流動性の原則,成長性
査
の原則,公共性の原則の 5 原則である。
したがって,4 原則とした⑴は誤りで
融 資 審 査 の 基 本 事 項
ある。
② 融資の相手方が計画している借入希
問 1 融資審査の基本事項について,正しい
望が資金需要に適合しているかどうか
ものを 1 つ選びなさい。
をチェックし,最もふさわしい資金の
⑴ 融資の基本原則は,安全性の原則,収益
調達方法が他にないか,検討の範囲を
性の原則,流動性の原則,成長性の原則の
広げて,相手方に最適な融資方法を提
4 原則である。
案する必要がある。したがって,⑵は
誤りである。
⑵ 融資先が資金需要に不適合な調達方法で
借入申込をしてきた場合でも,融資先の希
③ 融資にあたって,融資先に返済する
意思があるかないかを確認することは
望の方法を最優先にすべきである。
貸付債権の保全上重要なことである。
⑶ 融資先に返済能力が十分にあれば,返済
しかし,返済する意思はあっても,返
意思の確認は重要ではない。
⑷ 信用調査のポイントは,融資先のキャラ
済できる経済力がなければ貸出金の回
クター,キャパシティー,キャピタルの 3 つ
収はできない。したがって,両面の確
である。
認が重要であり,⑶は誤りである。
⑸ 申込者が組合の定款や規程に定められて
④ 信用調査は,相手方の実態を把握す
いる借入資格者であることの確認は,融資
ることであり,そのポイントは,融資
審査の最後にする。
先のキャラクター(性格=人物),キャ
パシティー(能力=収入),キャピタル
正解率 86%
正解 ⑷
(資本=財産)の 3 つである。したがっ
て,⑷は正しく,これが本問の正解で
解 説
ある。
① 融資の基本原則は,安全性の原則,
⑤ 組合融資では,融資の相手方が組合
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融資実務
の定款や規程に明示されている借入資
る。したがって,⑴は正しい。
格者であるかどうかの資格審査を,信
② 貸出稟議書には決裁権限者が決裁す
用調査を行う前にまず実施しなければ
るのに必要にして十分な情報を盛込む
ならない。したがって,⑸は誤りである。
ように心がけなければならないが,融
資条件(絶対的記載事項)として必ず
貸 出 稟 議 の 作 成
記載しなければならないのは,貸出先
名,貸出金額,貸出形式,貸出期限,
問 2 貸出稟議書の作成について,誤ってい
返済方法,貸出利率,保証・担保である。
るものを 1 つ選びなさい。
したがって,⑵は正しい。
⑴ 貸出稟議書は,起案者から回付を受けた
③ 季節資金融資などのように,前年ま
二次審査者が,稟議書を通して共同検討す
たは前回融資した資金(既に回収済み
るという過程を経て,組合としての意思を
で現在は残高がない状態にある資金)
作り上げていく役割を果たすものである。
と同種の貸付を再び取上げる稟議を復
活稟議という。したがって,⑶は誤り
⑵ 融資条件として必ず記載しなければなら
ない事項は,貸出先名,貸出金額,貸出形
であり,これが本問の正解である。
式,貸出期限,返済方法,貸出利率,保証・
④ 貸出形式の選び方は,資金使途・資
金需要の発生要因から導き出される返
担保である。
済財源によって決定される。すなわち
⑶ 前年または前回融資した資金(回収済み)
と同種の貸付を再度取り上げる稟議を継続
償却前利益や資金余剰を返済財源とす
稟議という。
る貸付は,原則として証書貸付で,売
上や収入を返済財源とする貸付は手形
⑷ 償却前利益や資金余剰を返済財源とする
貸付は,原則として証書貸付を貸出形式と
貸付か手形割引または当座貸越となる。
する。
したがって,⑷は正しい。
⑸ 貸出稟議書の機能は,意思決定機能,記
⑤ 貸出稟議書の機能は,意思決定機能,
録機能,融資実行上の指示機能である。
記録機能と融資実行上の指示機能の
3 つである。したがって,⑸は正しい。
正解率 60%
正解 ⑶
貸 出 利 息 の 計 算 方 法
解 説
① 貸出稟議書は,起案者から回付を受
問 3 貸出利息の計算方法について,誤って
けた二次審査者が,融資先の実態や将
いるものを 1 つ選びなさい。
来性,資金使途の妥当性,返済能力や
⑴ 貸出金の付利単位の上限は,法律で規制
債権保全の確認など,稟議書を通して
共同検討するという過程を経て,個人
されている。
⑵ 証書貸付および手形貸付の初回の利息徴
的な意思でなく,組合としての意思を
作り上げていく役割を果たすものであ
求は,原則として両端入れである。
⑶ 当座貸越の付利対象残高は,一般的には
−23−
融資実務
ものを 1 つ選びなさい。
その日の最終残高である。
⑷ 利息計算式における 1 年の日数は,平年,
⑴ 決裁を受けた融資案件を実行するにあ
たっては,原則として,融資条件が完備し
閏年とも 365 日である。
ていなければならない。
⑸ 手形割引料の徴収方法は,算出日数を手
形の割引日から満期日までの両端入れとし
⑵ 融資にあたって差入れを受けた約定書や
確認書類は,処理中以外は担当者の机の引
て算出し,割引実行日の前取りである。
出しにしまわず,ホルダーに入れてキャビ
正解率 19%
正解 ⑴
ネットに格納し,紛失しないような配慮が
必要である。
解 説
⑶ 融資実行後に,融資が決裁条件の資金使
① 貸出金の付利単位に法的規制は特に
途どおりに確実に使用されたかどうかを確
ない。したがって,⑴は誤りであり,
これが本問の正解である。
認することが必要である。
⑷ 生活資金でも事業資金でも,また運転資
② 貸付の利息徴求方法として,実行日
金でも設備資金でも,返済財源は組合の貯
と返済日の両日とも利息を徴求する方
金口座への入金という形で確保することが
法を両端入れというが,証書貸付や手
債権保全上重要である。
形貸付の初回,それに手形割引は両端
⑸ 継続して融資する場合おいては,融資先
入れである。したがって,⑵は正しい。
の状態や業績を常時把握していることが重
③ 当座貸越の場合には,一日の中で何
回も貸出と返済が行われるのでいつの
要である。
正解率 52%
正解 ⑵
時点での貸出残高を取上げたらよいか
の問題があるが,当座貸越の付利対象
残高として,一般的にはその日の最終
解 説
残高を採用している。したがって,⑶
① 決裁を受けた融資案件を実行するに
あたっては,融資先より差入れを受け
は正しい。
④ 利息計算式における 1 年の日数は,
た貸付,保証,担保権設定に関する契
平年,閏年とも 365 日として計算して
約書類への記載事項と稟議書の決裁条
いる。したがって,⑷は正しい。
件とを照合し,決裁条件を具備してい
⑤ 手形割引料の計算は,手形の割引日
るのを確認したうえで受領し,融資実
から満期日までの日数両端入れで,実
行手続をとって資金を交付しなければ
行日に前取りする。したがって,⑸は
ならない。したがって,⑴は正しい。
② 融資にあたって差入れを受けた約定
正しい。
書や確認書類は,処理中であっても担
貸 出 の 事 後 管 理
当者の机の引出しにはしまわず,ホル
ダーに入れてキャビネットに格納し紛
問 4 貸出の事後管理について,誤っている
−24−
失しないような配慮が必要である。し
融資実務
たがって⑵は誤りであり,これが本問
チェックの徹底を図るためチェックシート
の正解である。
方式となっている。
③ 融資実行後に,融資が決裁条件の資
⑷ 審査では,CRIN のネットワークシステ
金使途どおりに確実に使用されたかど
ム に よ り CIC( ㈱ シ ー・ ア イ・ シ ー) や
うかを確認することが必要である。そ
JICC(㈱日本信用情報機構)といった個人
うでないと,融資回収のための返済資
信用情報機関の「事故情報」や「ホワイト
源が確保できなくなってしまうおそれ
情報」を,信用状況の判断に利用している。
が生じることになる。したがって,⑶
⑸ 借入比率と返済比率の算出にあたっては,
は正しい。
給与所得者・自営業者とも「前年税込年間
④ 貸付金の返済資源の元は収入である
から,生活資金でも事業資金でも,ま
所得」を使用する。
正解率 77%
正解 ⑶
た運転資金でも設備資金でも,返済財
源を組合の貯金口座への入金という形
で確保することが債権保全上重要であ
解 説
る。したがって,⑷は正しい。
① 事前調査による借入申込の受付可否
⑤ 貸付期間の長い設備資金や特別生活
の判定結果の連絡については,慎重な
資金の融資では,人や企業は生き物な
対応が求められ,役席者の指示を得て
ので最終償還期限までの間に変化が起
回答する必要がある。したがって,⑴
こる可能性は高い。したがって,貸付
は誤りである。
金の安全性を確保する観点からその変
② 借入申込書は,貸出稟議書と債務保
化を早めにキャッチして債権保全に対
証委託申込書とを兼ねた様式になって
策を講じていくことが大切である。特
おり,借入相談段階で作成した相談シー
に継続して融資する場合おいては,そ
トの内容と借入申込書の内容とが一致
の状態や業績を常時把握していること
していることを確認する必要がある。
が重要である。したがって,⑸は正しい。
したがって,⑵は誤りである。
③ 平成 11 年の統一ローン融資要綱の改
J A 統 一 ロ ー ン
正により,審査方式については,スコ
アリング方式から,審査事務の簡素化
問 5 JA 統一ローンについて,正しいもの
とともに項目チェックの徹底を図るこ
を 1 つ選びなさい。
とを目的にチェックシート方式に変更
⑴ 事前調査により借入申込の受付可否の判
された。したがって,⑶は正しく,こ
れが本問の正解である。
定を行えば,判定結果の申込者への連絡に
ついては,役席者の指示を必要としない。
④ 現在相互利用できる個人信用情報は
⑵ 借入相談シートの内容と借入申込書の内
「事故情報」に限定されている。したがっ
て,⑷は誤りである。
容の一致まで確認する必要はない。
⑶ 審 査 方 式 は, 審 査 事 務 の 簡 素 化 と 項 目
⑤ 借入比率と返済比率の算出にあたっ
−25−
融資実務
ては,給与所得者には「前年税込年収」
得」だけでも公的証明で確認し,それ
を,自営業者には「前年税引前所得」
に対する借入金の割合でローン返済が
を使用している。したがって,⑸は誤
できるかどうかを判断する方法が取ら
りである。
れており,「返済比率=年間払込元利金
÷税込年収~ 25%以内が基準」,「借入
生 活 資 金 の 融 資
比率=総借入金残高÷税込年収~ 50%
以内が基準」の 2 つの指標がある。し
たがって,⑵は正しい。
問 6 生活資金について,誤っているものを
③ 自営業者所帯に対する消費者ローン
1 つ選びなさい。
の融資の場合,事業収支を含む家計収
⑴ 生活資金の審査のポイントは,「収入の安
支によってその経済活動の全体像を計
定性」と「返済意思の有無」である。
数的に把握して考えることが大切であ
⑵ 消費者ローン審査における返済比率は,
り,返済財源は,「家計収支=事業収支
25%以内が基準である。
―税金―生活費=資金余剰(返済財源)」
⑶ 自営業者所帯に対する消費者ローンの融
資の場合,返済財源は,「家計収支=事業収
により算出する。したがって,⑶は正
支-税金-生活費=資金余剰(返済財源)」
しい。
④ 家族の生活費は全員で確保するよう
により算出する。
⑷ 世帯主ばかりでなく,家族特に配偶者の
に努めるものであるから,世帯主ばか
稼ぎがあればそれを含めて世帯全員の年間
りでなく家族特に配偶者の稼ぎがあれ
総収入額を聞出して判断することも可能で
ばそれを含めて世帯全員の年間総収入
ある。
額を聞出し,将来も継続する安定収入
であるかを判断することも可能である。
⑸ 返済能力は,融資先の取得する「現在の
したがって,⑷は正しい。
収入」の金額によって判断する。
⑤ 返済能力は融資先の取得する「将来
正解率 66%
正解 ⑸
の収入」の金額とその安定度によって
判断する。前年の税込年収を公的証明
解 説
によって把握し,勤労者については勤
① 生活資金の審査のポイントは,返済
務先の経営状態と勤務状態から収入の
財源である給与収入や事業所得が将来
安定性を判断する。したがって,⑸は
も継続して確保できるかどうかの「収
誤りであり,これが本問の正解である。
入の安定性」と消費を節約してでも返
事 業 資 金 融 資 の 審 査
済するとの堅い意思があるかどうかの
「返済意思の有無」を見きわめることで
ある。したがって,⑴は正しい。
問 7 事業資金融資の審査について,誤って
② 消費者ローンでは,便法として返済
財源のもとである「給与収入や事業所
いるものを 1 つ選びなさい。
⑴ 企業内容の実態把握にあたって,「ヒト」
−26−
融資実務
上される。したがって,⑷は誤りであり,
(事業主・経営者・従業員)の観察は,最も
これが本問の正解である。
重要な判断ポイントである。
⑵ 個人や小規模の法人の場合は,決算書だ
⑤ 金融バランスは「純資産+長期借入
けに頼る審査だけでなく,足を使った聞取
金-固定資産」の算式で現される。金
りを主体に定性面にも比重を置いた審査を
融バランスが「プラス」の場合は,自
心がけなければならない。
己資金に余裕があり好ましい財務構造
といえる。したがって,⑸は正しい。
⑶ 静態的な運転資金が「プラス」であれば
資金不足で運転資金の借入を必要とする。
運 転 資 金 ・ 設 備 資 金
⑷ 自営業者における不動産賃貸収入は「事
業主貸」として計上される。
⑸ 金融バランスが「プラス」の場合は,自
問 8 運転資金・設備資金について,誤って
己資金に余裕があり好ましい財務構造とい
いるものを 1 つ選びなさい。
える。
⑴ 回収条件の長期化,支払条件の短縮はい
ずれも増加運転資金の発生要因となる。
正解率 49%
正解 ⑷
⑵ 季節資金の返済財源は,融資対象の商品
等の販売代金である。
解 説
⑶ 運転資金は,決算書から,「売掛債権+棚
① 企業内容の実態把握にあたって,「事
卸資産-買掛債務」によって算出される。
業は人なり」といわれるように,
「ヒト」
⑷ 手元留保資金は,投資前の財務構造にお
(事業主・経営者・従業員)の観察は,
いて金融バランスがプラスの場合の「純資
最も重要な判断ポイントである。した
産+長期借入金-固定資産」分であり,新
がって,⑴は正しい。
規設備資金の自己資金として使える。
② 個人や小規模の法人の場合は,決算
⑸ 設備資金は,原則として,既往の設備を
書(定量面)だけに頼る審査だけでなく,
使って行う仕入・生産・販売の事業の循環
足を使った聞取りを主体に定性面にも
によって回収される売上代金によって返済
比重を置いた審査を心がけて,融資先
される。
の実体を把握するようにしなければな
正解率 27%
正解 ⑸
らない。したがって,⑵は正しい。
③ 静態的な運転資金が「プラス」であ
れば資金不足で運転資金の借入を必要
解 説
とし,逆に「マイナス」ならば資金に
① 営業規模の拡大に伴う仕入,売上増
余裕があって運転資金の借入は不要で
加,回収条件の長期化,支払条件の短
ある。したがって,⑶は正しい。
縮などはいずれも増加運転資金の発生
要因となる。したがって,⑴は正しい。
④ 自営業者における事業主からの借入,
利子配当収入,不動産賃貸収入,固定
② 季節資金の借入需要は,仕入代金の
資産売却益等は「事業主借」として計
支払資金調達のために原材料や商品の
−27−
融資実務
仕入時よりも支払条件だけ後にズレた
⑶ 任意後見契約が公正証書で締結されると,
時期に発生する。その季節資金によっ
任意後見受任者は契約締結時から任意後見
て生産された製品や仕入れた商品が現
人として本人の代理人となる。
金化されたら,その販売代金によって
⑷ 有限会社は,会社法施行後,新規設立す
返済される。したがって,⑵は正しい。
ることもまた株式会社に移行することもで
③ 運転資金は,決算書(貸借対照表)
きない。
からは静態的に,「売掛債権+棚卸資産
⑸ 取締役会がない株式会社において,会社
-買掛債務」によって算出される。し
が取締役の債務を保証するときは,代表取
たがって,⑶は正しい。
締役の承認が必要である。
④ 手元留保資金とは,投資前の財務構
正解率 64%
正解 ⑴
造において金融バランスがプラスの場
合の「純資産+長期借入金-固定資産」
分であり,新規設備資金の自己資金と
解 説
して使えるものである。したがって,
① 未成年者が,法定代理人の同意を得
ずに組合との間で資金の借入をした場
⑷は正しい。
⑤ 設備資金は,取得した設備を使って
合,未成年者本人または法定代理人が,
行う事業活動から獲得する事業利益を
それを取消すことができる(民法 5 条,
もって長期間にわたって返済される。
120 条)。したがって,⑴は正しく,こ
したがって,⑸は誤りであり,これが
れが本問の正解である。
② 成年被後見人は,日用品の購入等日
本問の正解である。
常生活に関する行為は単独でできるが,
それ以外の行為は法定代理人である成
取 引 の 相 手 方
年後見人の代理によらなければならな
い。成年被後見人が,成年後見人の同
意を得て行ったそれ以外の行為は,本
融
資
の
相
手
方
人または成年後見人が取消すことがで
きる(民法 9 条,120 条)。したがって,
⑵は誤りである。
問 9 融資の相手方について,正しいものを
③ 任意後見契約は公正証書で締結され,
1 つ選びなさい。
⑴ 未成年者が,法定代理人の同意を得ずに
その後本人の判断能力が不十分となっ
組合との間で資金の借入をした場合,未成
たときに,申立により任意後見監督人
年者本人または法定代理人が,それを取消
が選任されると,任意後見受任者は任
すことができる。
意後見人として本人の代理人となる。
したがって,⑶は誤りである。
⑵ 成年被後見人が,成年後見人の同意を得
て行った行為は,成年後見人は取り消すこ
④ 会社法施行に伴い,有限会社法は廃
止され,新しく有限会社を設立するこ
とができない。
−28−
融資実務
とはできなくなったが,既存の有限会
同一の権限を有するものとみなされ,
社は,定款を変更し株式会社に移行す
営業主は責任を負わなければならない
ることができる。したがって,⑷は誤
場合がある。したがって,⑴は正しく,
りである。
これが本問の正解である。
⑤ 取締役会がない株式会社において,
② 民法 100 条は「代理人が本人のため
会社が取締役の債務を保証するときは,
にすることを示さないでした意思表示
利益相反行為にあたり,株主総会の承
は,自己のためにしたものとみなす」
認が必要である(会社法 365 条)。した
と規定して,代理人自身の行為とみな
がって,⑸は誤りである。
して本人には及ばないとしている。し
たがって,⑵は誤りである。
代 理 人 と の 取 引
③ 任意代理の場合の復代理人の選任に
ついては,本人の許諾を得たとき,ま
問 10 代理人との取引について,正しいも
たはやむをえない事由(本人の行方不
のを 1 つ選びなさい。
明など)がある場合以外,復代理人を
⑴ 代理権がない使用人である支店長が行っ
選任することができない(民法 104 条)
た行為については,営業主は責任を負わな
としている。したがって,⑶は誤りで
ければならない場合がある。
ある。
⑵ 代理人が本人のためにすることを示さない
④ 無権代理人が行った契約を本人が追
認すれば,その行為は有効な代理行為
でした行為も,本人に対して効力が生じる。
⑶ 任意代理の場合は,常に本人の許諾を得な
となり(民法 113 条 1 項),原則とし
い限り復代理人を選任することができない。
て契約の時に遡って効力を生じるもの
⑷ 無権代理人が行った契約を本人が追認し
としている。したがって,⑷は誤りで
ある。
ても,契約の時に遡って効力を生じること
⑤ 代理人が権限外の行為をした場合に
はない。
⑸ 代理人が権限外の行為をした場合,相手
成立するのが表見代理であり,相手方
方が正当な事由に基づき代理権ありと信じ
が正当な事由に基づき代理権ありと信
ていても,相手方はその代理の効果を本人
じて,代理人との間に法律行為をした
に主張できない。
ときは,相手方はその代理の効果を本
人に主張できる。したがって,⑸は誤
正解率 55%
正解 ⑴
りである。
解 説
① 本店営業部長,支店長といったよう
な営業の主任者であることを示す名称
を付した使用人は,たとえ行った行為
について代理権がなくても,支配人と
−29−
融資実務
貸出取引約定書
書を締結しただけでは,農(漁)協と
取引先間に具体的な債権債務が発生す
るというものではない。したがって,
農(漁)協取引約定書
⑶は誤っており,これが本問の正解で
ある。
問 11 農(漁)協取引約定書について,誤っ
④ 農(漁)協取引約定書の条項と異な
ているものを 1 つ選びなさい。
る合意を別途個別約定書等で行った場
⑴ 農(漁)協取引約定書は,農(漁)協と
合には,個別約定書等による合意が優
取引先間での与信取引に共通する基本的な
先する。個々の取引に約定を適用する
契約事項を取決めしている。
にあたっては,まず個別約定書の条項
が適用され,その条項がないときに農
⑵ 当事者間で訴訟になったときには,農(漁)
(漁)協取引約定書の条項が適用される
協取引約定書の締結内容も有力な証拠の 1
ことになる。したがって,⑷は正しい。
つになりうる。
⑶ 農(漁)協取引約定書の締結により,農(漁)
⑤ 農(漁)協取引約定書は,従前は差
協と取引先間に具体的な債権債務が発生し
入方式をとっていたが,現在は双方契
たことになる。
約方式になっている。したがって,⑸
は正しい。
⑷ 農(漁)協取引約定書の条項と異なる合
意を別途個別約定書で行った場合は,個別
農(漁)協取引約定書の内容
約定書による合意が優先する。
⑸ 農(漁)協取引約定書は,現在,双方契
問 12 農(漁)協取引約定書に定められて
約方式になっている。
いる内容について,誤っているものを 1 つ選
正解率 82%
正解 ⑶
びなさい。
⑴ 手形の振出,裏書等によって取引先が手
解 説
形債務者になっている手形を組合が第三者
① 農(漁)協取引約定書は,農(漁)
との取引によって取得した場合についても,
協と取引先間での与信取引に共通する
手形債務の履行について本約定書の適用範
基本的な契約事項を取決めしている。
囲となる。
したがって,⑴は正しい。
⑵ 取引先は,弁済または相殺の充当指定権
② 農(漁)協取引約定書などの提出を
を有しており,組合の債権保全に支障が生
受けることは,万一訴訟になったとき
じるおそれがあるときでも,組合が取引先
の有力な証拠となり,また,契約内容
に異議を述べ,みずから充当の指定を行う
を明確にして未然のトラブルを防止で
ことはできない。
きる機能がある。したがって,⑵は正
⑶ 担保の処分方法等について,組合は法定
しい。
の担保権実行以外の方法で担保から回収す
③ 取引先との間で農(漁)協取引約定
−30−
ることができる。
融資実務
て,⑷は正しい。
⑷ 取引先は,貸借対照表,損益計算書等の
財務状況を示す書類の写しを定期的に組合
⑤ 組合を含め,企業の社会的責任とし
て反社会的勢力との関係を遮断するこ
に提出する義務がある。
とが必要であり,暴力団排除条項は,
⑸ 暴力団排除条項は,取引先が反社会的勢
力であることが判明した場合に取引関係を
取引先が反社会的勢力であることが判
解消する根拠になる。
明した場合に取引関係を解消する根拠
として規定している。したがって,⑸
正解率 64%
正解 ⑵
は正しい。
約定書・契約書徴求上の留意点
解 説
① 手形の振出,裏書等によって取引先
が手形債務者になっている手形を組合
問 13 約定書・契約書徴求上の留意点につ
が第三者との取引によって取得した場
いて,誤っているものを 1 つ選びなさい。
合についても,手形債務の履行につい
⑴ 契約の締結にあたっては,相手方の知識・
て本約定書の適用範囲となる。いわゆ
経験等に応じて,契約内容について理解し
る「まわり手形」について,約定書が
納得できるよう適切・十分に説明すること
適用されることを規定している。した
が必要である。
がって,⑴は正しい。
⑵ 契約書は,原則として組合職員の面前で
② 取引先は,弁済または相殺の充当指
署名押印を受けることが必要である。
定権を有しているが,組合の債権保全
⑶ 実務上,原則として印鑑証明書の提出は
に支障が生じるおそれがあるときにつ
作成後 3 ヶ月以内のものが必要である。
いては,組合が取引先に異議を述べ,
⑷ 契約書には署名押印のほかに,訂正があっ
みずから充当の指定を行うことができ
た場合の訂正印,契約書が 2 枚以上にわた
る。したがって,⑵は誤りであり,こ
る場合は欄外に契印と捨印が漏れていない
れが本問の正解である。
か点検する必要がある。
③ 担保の処分方法等について,組合は
⑸ 代理人届により届出された代理人と取引
法定の担保権実行はもちろん,法定以
を行う場合には,契約書の印影の照合は代
外の方法でも担保の取立,処分ができ
理人屈の届出印鑑をもって行う必要がある。
ることを定めている。したがって,⑶
正解率 52%
正解 ⑷
は正しい。
④ 取引先は,貸借対照表,損益計算書
等の財務状況を示す書類の写しを定期
解 説
的に組合に提出するものとしており,
① 契約の締結にあたっては,相手方の
また,取引先の財産,経営状況等につ
知識・経験等に応じて,契約内容につ
いても組合から請求があったときは提
いて理解し納得できるよう適切・十分
出することを約定している。したがっ
に説明することが必要である。したがっ
−31−
融資実務
各 種 貸 出 取 引
て,⑴は正しい。
② 契約書は,原則として組合職員の面
前で署名押印を受けることが必要であ
手
る。そうでないと,契約書が第三者の
形
貸
付
手で勝手に作成されたものであるとし
契約の成立をめぐり,訴訟となった例
問 14 手形貸付について,正しいものを 1
も多く発生している。したがって,⑵
つ選びなさい。
は正しい。
⑴ 組合は,金銭消費貸借契約に基づく債権
③ 印鑑証明書には本来有効期限の定め
と手形上の債権の両方を持つが,手形債権
はない。しかし実務取扱い上,原則と
して印鑑証明書の提出は作成後 3 ヶ月
を優先して行使しなければならない。
⑵ 手形債権が時効によって消滅しても,金
以内のものが求められている。したがっ
て,⑶は正しい。
銭消費貸借上の債権は当然には消滅しない。
⑶ 手形書替の法的性質について,現在の判
④ 契約書には署名押印のほかに,訂正
があった場合の訂正印,契約書が 2 枚
例の考えは更改説をとっている。
⑷ 手形訴訟を利用して債務名義を取得する
以上にわたる場合の各綴じ目への契印
ことはできない。
が必要である。捨印は,後日訂正する
⑸ 組合が金銭消費貸借上の債権を相殺する
場合を予想して念のため予め欄外に押
場合は,約定書において,手形を同時に返
印することをいうが,契約書が 2 枚以
還する旨を定めている。
上にわたる場合のみのものではない。
正解率 67%
正解 ⑵
したがって,⑷は誤りであり,これが
本問の正解である。なお,捨印は契約
内容を勝手に変更したとして訴訟とな
解 説
る例もあるのでみだりに利用すべきで
① 手形貸付により,組合は,金銭消費
貸借契約に基づく債権と手形上の債権
ない。
⑤ 法人取引では借入行為について,法
の両方を有し,そのどちらを行使して
人の代理人として,支店長や,経理部
もよいとしている(農協取引約定書 2
長などに任せる例があるが,この場合
条)。したがって,⑴は誤りである。
には,代理人届の提出を受け,届出さ
② 金銭消費貸借上の債権が時効によっ
れた代理人と取引を行う場合に,契約
て消滅すれば,手形債権も原因関係が
書の印影の照合は代理人届の届出印鑑
失われたことになるので,手形債権を
と照合している。したがって,⑸は正
行使しても貸出先はその事実を人的抗
しい。
弁として主張し,手形の支払を拒むこ
とができる。しかし,反対に,手形債
権が時効によって消滅しても,金銭消
費貸借上の債権は当然には消滅しない。
−32−
融資実務
したがって,⑵は正しく,これが本問
して保証人の承諾をもらっておかないと変
の正解である。
更後の期限を保証人に主張できない。
③ 手形書替の法的性質について,判例
正解率 9%
正解 ⑸
の考えは,当初更改説をとっていたが,
その後,特別の事情がないかぎり,旧
手形債務の支払延長と解するとしてい
解 説
る。したがって,旧手形を返却すれば
① 手形貸付が比較的短期間の貸付に適
旧手形の債務は消滅し,新手形債務の
した貸付方式とすれば,証書貸付は,
みが残ることになる。したがって,⑶
設備資金,長期運転資金などの長期融
は誤りである。
資に適した貸付方式といえる。したがっ
て,⑴は正しい。
④ 手形貸付の利点の 1 つとして,手形
債権を取得するので,手形訴訟を利用
② 証書貸付は,金銭消費貸借契約であ
して簡易迅速に債務名義を取得するこ
り,当事者の意思表示の合致と金銭の
とができる点がある。したがって,⑷
授受が成立要件であるとされているの
は誤りである。
で,金銭の借入についての意思表示が
⑤ 農(漁)協取引約定書により,組合
あったことを証するために,借主みず
が金銭消費貸借上の債権を相殺する場
から借用証書の債務者欄に住所・氏名
合は,貸付先は手形返還の同時履行を
を記入して押印するようにしている。
請求しない旨の特約をしている。した
したがって,⑵は正しい。
③ 借用証書を公正証書としても,契約
がって,⑸は誤りである。
条項中に「債務者および保証人は,債
証
書
貸
付
務不履行のときは直ちに強制執行を受
けても異議がない」旨の,いわゆる強
問 15 証書貸付について,誤っているもの
制執行認諾文言を付しておかないと(民
を 1 つ選びなさい。
事執行法 22 条,26 条),債務名義とし
⑴ 証書貸付は,設備資金,長期運転資金な
て強制執行することができない。した
がって,⑶は正しい。
どの長期融資に適した貸付方式である。
⑵ 証書貸付は,金銭消費貸借契約であり,
④ 課税文書に印紙を貼る場合には課税
当事者の意思表示の合致と金銭の授受が成
文書と印紙の彩紋にかけ,鮮明に作成
立要件である。
者またはその代理人・使用人の印章や
⑶ 借用証書を公正証書としても,契約条項中
署名で,印紙を消さなければならない
に強制執行認諾文言を付しておかないと,債
と定められている(印紙税法 8 条,同
務名義として強制執行することはできない。
施行令 5 条)。したがって,⑷は正しい。
⑷ 借用証書に貼付した印紙の消し込みは,
⑤ 貸付条件を変更したとき,保証人に
代理人・使用人の印章や署名でもよい。
ついてその保証債務を加重させるよう
⑸ 最終弁済期限を延長した場合は,原則と
な場合(弁済期の短縮,利率の引き上
−33−
融資実務
げなど)には,保証人の承諾をもらっ
② 手形の受け入れにあたって,手形の
ておかないと変更後の貸出条件を保証
形式を十分に点検し,手形に不備があ
人に主張できないが,そうでない場合
れば,依頼人に補完してもらい,完全
は,法律的には,主たる債務者との間
な手形にしてから割引に応じるように
で変更契約しておくだけで足りる。し
するべきである。したがって,⑵は誤
たがって,⑸は誤りであり,これが本
りである。
問の正解である。なお,債務者の経営
③ 手形については,商取引に基づいて
悪化に伴い最終期限を延長するような
振出された商業手形であれば決済され
ケースでは実務上は保証人の承諾をも
る見込みが高いが,商取引の裏付けの
らうようにしている。
ない金融のために振出された融通手形
の場合には決済されないおそれが高い
手
形
割
引
ため,手形を割引く場合には,その成
因要因を調査・確認し,融通手形の排
問 16 手形割引について,正しいものを 1
除に努めることが重要である。したがっ
つ選びなさい。
て,⑶は正しく,これが本問の正解で
⑴ 手形割引の法的性質は,消費貸借である
ある。
④ 物的抗弁とは,手形上の債務者がす
とされる。
べての債権者に対して対抗できる抗弁
⑵ 割引依頼の手形に不備があれば,組合で
(手形の形式不備,偽造,変造,時効等)
補完する義務がある。
⑶ 割引を依頼された手形については,その
をいう。一方,手形上の人的抗弁とは,
成因を調査・確認することが重要である。
手形上の債務者が特定の手形所持人に
⑷ 手形上の物的抗弁とは,手形上の特定の
対してだけ対抗できる抗弁(契約不履
行,心理留保や虚偽表示等)をいう。
手形所持人に対して対抗できる抗弁である。
したがって,⑷は誤りである。
⑸ 割引手形が不渡りの場合,組合は買戻請
求権を割引依頼人と手形上の他の債務者に
⑤ 買戻請求権は農(漁)協取引約定書
における組合と割引依頼人との間の約
対して行使できる。
定によって発生するもので,割引手形
正解率 65%
正解 ⑶
が不渡りの場合,組合は買戻請求権で
もって割引依頼人に請求することはで
解 説
きるが,手形上の他の債務者に対して
① 手形割引の法的性質は,過去には,
買戻請求権を行使することはできない。
手形の売買説と消費貸借説があったが,
したがって,⑸は誤りである。
現在は手形の売買であると解されてい
当
る。農(漁)協取引約定書もこの説を
座
貸
越
前提に構成されている。したがって,
⑴は誤りである。
問 17 当座勘定取引に付帯する当座貸越に
−34−
融資実務
質を明確にしていない。
ついて,正しいものを 1 つ選びなさい。
⑴ 組合は,その裁量により,貸越極度額を
③ 当座貸越の利息は,毎年の組合所定
超えて手形,小切手等の支払ができるが,
の日に,貸越金の利息計算として,組
債務者は,組合からその支払の請求があり
合が定める所定の利率・方法により毎
しだい直ちに支払わなければならないとさ
日の貸越金の最終残高について計算し,
れる。
当座勘定から引落とし,または貸越元
金に組入れされる(同 3 条参照)。した
⑵ 学説は,組合が一般に採用している当座
がって,⑶は誤りである。
勘定貸越約定書の法的性質は消費貸借予約
④ 当座貸越金がある場合には,当座貯
であるとして統一されている。
⑶ 当座貸越の利息は,毎日発生の都度,所
金勘定になされた入金や振込まれた手
定の利率・方法で計算し貸越元金に組入れ
形,小切手等は,貸越金の担保として
される。
譲渡されたものとなる(同 7 条参照)。
したがって,⑷は誤りである。
⑷ 当座貸越金があっても,当座貯金勘定に
入金された手形,小切手等が,貸越金の担
⑤ 債務者は,いつでも当座勘定貸越取
引を解約することができる。ただし,
保となることはない。
⑸ 債務者は,あらかじめ組合の承諾を得た
この場合には書面により組合に通知す
うえでないとこの取引を解約することがで
ることになっている(同 5 条参照)。し
きない。
たがって,⑸は誤りである。
正解率 19%
正解 ⑴
保 解 説
証
① 組合は,その裁量により,貸越極度
特
額を超えて手形,小切手等の支払がで
定
債
務
保
証
きるが,債務者は,組合からその支払
の請求がありしだい直ちに支払わなけ
問 18 特定債務保証について,誤っている
ればならない(約定書例 1 条参照)。し
ものを 1 つ選びなさい。
たがって,⑴は正しく,これが本問の
⑴ 保証契約は,債権者,債務者,保証人の
正解である。
3 者間の契約でもって成立する。
② 判例・学説とも,当座貸越契約の法
⑵ 債務者が保証人を立てる義務を負う場合,
的性質について,委任契約説,消費貸
その保証人は,行為能力者であり,かつ弁
借予約説,準消費貸借説等諸説がある。
済資力を有する者であることとされている。
したがって,⑵は誤りである。なお,
⑶ 主たる債務が無効となると,保証債務も
いずれをとっても実務上は格別の相違
無効となる。
はなく,組合が一般に採用している当
⑷ 主たる債務が民事債務で保証債務が商行
座勘定貸越約定書では,貸越契約の性
為により生じたときは,保証債務の消滅時
−35−
融資実務
いるものを 1 つ選びなさい。
効は 5 年である。
⑸ 主たる債務者に対する債権者の権利が移
転したときは,保証人に対する権利も移転
⑴ 個人を保証人とする契約である。
⑵ 極度額は,いわゆる債権極度額として定
めなければならない。
する。
⑶ 元本確定期日を定めなかった場合,法律
正解率 34%
正解 ⑴
上,当然に根保証契約の締結日から 3 年を
経過する日が元本確定期日となる。
解 説
⑷ 保証人が死亡し,元本確定期日が未到来
① 保証契約は,契約の当事者としては
であった場合に,保証人の相続人は極度額
債権者と保証人との間の成立する独立
内において,死亡後に行われた融資等につ
の債務である。したがって,⑴は誤り
いても保証責任を負う。
であり,これが本問の正解である。
⑸ 主たる債務者が破産手続開始の決定を受
② 債務者が保証人を立てる義務を負う
けたときは,元本確定期日が未到来であっ
場合には,保証人の要件として,行為
能力者であり,かつ弁済資力を有する
ても主たる債務の元本が確定する。
正解率 52%
正解 ⑷
者であることが要求される(民法 450
条 1 項)。したがって,⑵は正しい。
③ 保証債務は主たる債務に従属し,主
解 説
たる債務の存在を前提として存続する
① 貸金等根保証契約とは,①個人を保
性質をもっている。そこで,主たる債
証人とするもので,②根保証契約であ
務が無効となると,保証債務も無効と
り,③主たる債務の範囲に「貸金等債務」
なる。したがって,⑶は正しい。
が含まれていることという 3 要件す
④ 主たる債務が民事債務で保証債務が
べてに該当する保証契約をいう(民法
商行為により生じたときは,主たる債
465 条の 2 第 1 項)。したがって,⑴は
務の消滅時効が 10 年であっても,保証
正しい。
債務の消滅時効は 5 年となる(判例)。
② 極度額は,いわゆる債権極度額(主
たる債務の元本のほか,その利息,損
したがって,⑷は正しい。
⑤ 保証債務の随伴性により,債権が譲
害金等主たる債務に従たるすべてのも
渡された場合などのように,主たる債
のを含む)として定めなければならな
務者に対する権利が移転したときは,
い。しがたって,⑵は正しい。
保証人に対する権利も移転する。した
③ 元本確定期日を定めなかった場合に
は,法律上,当然に根保証契約の締結
がって,⑸は正しい。
日から 3 年を経過する日が元本確定期
貸 金 等 根 保 証 契 約
日 と な る( 民 法 465 条 の 3 第 2 項 )。
したがって,⑶は正しい。
問 19 貸金等根保証契約について,誤って
④ 民 法 は 元 本 確 定 事 由 を 定 め, 元 本
−36−
融資実務
確定期日が未到来であっても主たる債
ることを,保証契約のなかで明示して
務の元本が確定するものとして(民法
いるのが通常である。したがって,⑴
465 条の 4),その後行われた融資等に
は誤りである。
ついては,保証責任を負わないとして
②・⑤ 連帯保証人は,催告の抗弁権,
おり,その元本確定事由の 1 つとして,
検索の抗弁権,分別の利益を有してい
主債務者または保証人の死亡を定めて
ない。したがって,⑵と⑸は共に誤り
いる。したがって,⑷は誤りであり,
である。
③ 特約をしなくても,主たる債務が商
これが本問の正解である。
⑤ 上記以外の元本確定事由の 1 つとし
行為による債務であるとき,その保証
て,「主たる債務者または保証人が破産
は当然に連帯保証となり,また,保証
手続開始の決定を受けた」がある。よっ
が保証人にとり商行為であるときはも
て,元本確定期日が未到来であっても
ちろん,債権者にとり商行為であると
主たる債務の元本が確定する。したがっ
きは連帯保証となると解されている。
て,⑸は正しい。
したがって,⑶は正しく,これが本問
の正解である。
連
帯
保
証
④ 連帯保証は,保証の一種であるから
普通保証とその性質がよく似ており,
問 20 連帯保証について,正しいものを 1
附従性,随伴性,独立性,内容同一性
つ選びなさい。
が認められるが,補充性と共同保証の
⑴ 組合の融資実務では,通常,連帯保証で
際の分別の利益については有さない。
したがって,⑷は誤りである。
あることを,保証契約のなかで明示してい
ない。
保 証 契 約 の 締 結
⑵ 連帯保証人は,催告の抗弁権と検索の抗
弁権を有している。
⑶ 特約をしなくても,保証が債権者のため
問 21 保証契約の締結について,誤ってい
るものを 1 つ選びなさい。
に商行為であるときは連帯保証となる。
⑷ 連帯保証は,保証の一種であるが,その
性質としての附従性,随伴性,独立性,内
⑴ 保証契約は要式契約である。
⑵ 金銭消費貸借契約証書上に,保証人とし
て債務者と連署して署名・押印する場合は,
容同一性が認められない。
特定債務保証となる。
⑸ 連帯保証人は,共同保証の際に分別の利
⑶ 保証契約にあたっては,保証人に対して
益を有している。
その知識・経験に応じて,保証内容の十分
正解率 47%
正解 ⑶
な説明をし,保証意思を確認しなければな
らない。
解 説
⑷ 保証契約では,通常,組合の担保保存義
① 組合の融資実務では,連帯保証であ
−37−
務が免除される旨が特約されている。
融資実務
手
⑸ 貸付後に保証人をとり,また保証人を追
形
保
証
加するときは,原則として既に作成してあ
る証書や保証書に追加署名してもらわなけ
問 22 手形保証について,誤っているもの
ればならない。
を 1 つ選びなさい。
⑴ 手形保証は,手形法の規定に基づく保証
正解率 68%
正解 ⑸
である。
⑵ 手形保証は,必ず手形本体または補箋に
解 説
署名または記名押印しなければ成立しない。
① 保証契約は要式契約(民法 446 条 2
⑶ 手形貸付の保証では,保証書による保証
項,3 項)であるから組合と保証人合
意のほか借用証書,保証書などに保証
と手形上の保証がある。
⑷ 手形保証債務は,独立性,内容同一性,
人の署名・押印を受けることになって
いる。したがって,⑴は正しい。
補充性のいずれの性質も有している。
⑸ 手形保証人は,被保証債務者が有する人
② 金銭消費貸借契約証書上に,債務者
と連署して,その契約によって生ずる
的抗弁権を有しないとされている。
正解率 37%
正解 ⑷
債務の支払について,連帯保証の責め
に任ずる旨の約定をさせる場合は,特
定債務保証ということになる。したがっ
解 説
て,⑵は正しい。
① 手形保証は,手形法(30 条以下)の
規定に基づく保証である。したがって,
③ 保証契約にあたっては,保証人に対
⑴は正しい。
してその知識・経験に応じて,保証内
容の十分な説明をし,保証意思を確認
② 手形保証は,必ず手形本体または補
しなければならない。したがって,⑶
箋に署名または記名捺印しなければ成
は正しい。
立しない。したがって,⑵は正しい。
④ 保証契約では,通常,保証人の有し
③ 手形貸付の保証では,保証書による
ている相殺権の放棄,組合の担保保存
保証と手形上の保証があるが,一般に
義務の免除,保証人の代位権の制限な
は保証書による保証が多く行われてい
どが特約されている。したがって,⑷
る。しかし,手形上の保証の利点として,
は正しい。
手形訴訟による迅速な裁判を利用でき
るなどがある。したがって,⑶は正しい。
⑤ 貸付後に保証人をとり,また保証人
を追加するときは,原則として,既に
④ 手形保証債務は,合同責任とよばれ
作成してある証書や保証書に追加署名
ており(手形法 47 条 1 項),独立性,
するのではなく,別途に保証書を徴求
内容同一性を有しているが,補充性は
する。したがって,⑸は誤りであり,
まったく有していない(したがって催
これが本問の正解である。
告・検索の抗弁権はない)。したがって,
⑷は誤りであり,これが本問の正解で
−38−
融資実務
ある。
たがって,⑶も正しい。
⑤ 手形保証人は,被保証債務者が有す
④ 協会保証を受ける場合の手続は,協会の
る人的抗弁権を有しないというのが通
業務方法書等で定められている。また,保
説・判例である。したがって,⑸は正
証を受けた後の事後管理については,保証
しい。
約定書等で定められている。したがって,
⑷は正しい。
農(漁)業信用基金協会保証
⑤ 判例は,基金協会が保証人の立場で
代位弁済した場合,協会保証も通常の
問 23 農(漁)業信用基金協会保証について,
民法の保証と異なるところはなく,民
誤っているものを 1 つ選びなさい。
法 501 条 5 号によって,物上保証人に
⑴ 基金協会は,農業者,中小漁業者等の経
対しては,代位弁済額の頭割り分しか
営に必要な資金の融資を円滑にするための
抵当権に代位しないとしている。した
信用補完機関である。
がって,⑸は誤りであり,これが本問
の正解である。
⑵ 判例によると,協会保証の性質は民法上
の保証であるとされている。
保 証 債 務 の 消 滅
⑶ 保証債務の範囲,履行方法等については,
保証契約の約定書により特約される。
⑷ 協会保証を受ける場合の手続は,それぞ
問 24 保証債務の消滅について,正しいも
れの基金協会の業務方法書等で定められて
のを 1 つ選びなさい。
いる。
⑴ 被保証債務である貸付金が主債務者の弁
済により完済されても,保証債務は消滅し
⑸ 基金協会が保証人の立場で代位弁済した
ない。
場合,物上保証人に対しては,代位弁済額
⑵ 保証の免除は債権者の一方的な免除の意
全額につき抵当権に代位する。
思表示によっても成立する。
正解率 45%
正解 ⑸
⑶ 被保証債務者である貸付先が死亡すると,
保証債務は消滅する。
解 説
⑷ 貸付取引中に保証の免除が行われても,
① 基金協会は,農業者,中小漁業者等
の経営に必要な資金の融資を円滑にす
保証債務が消滅することはない。
⑸ 保証免除する場合,保証契約書を返却し
るための信用補完機関である。したがっ
て,⑴は正しい。
ない限り免除の有効性は生じない。
正解率 50%
正解 ⑵
②・③ 判例によると,協会保証の性質は
民法上の保証であるとされている。し
たがって,⑵は正しい。ただ,保証債
解 説
務の範囲,履行方法等については,保
① 被保証債務である貸付金が主債務者
証契約の約定書により特約される。し
の弁済により完済されると,その附従
−39−
融資実務
性により保証債務も当然に消滅するこ
とになる。したがって,⑴は誤りである。
じる担保物権を約定担保物権という。
⑷ 相殺権や代理受領は,
約定担保物権である。
② 保証の免除は債権者の単独行為で可
⑸ 対抗要件とは,当事者間で効力が生じた
能であり,債権者の一方的な免除の意
権利ないし法律関係の得喪を第三者に対し
思表示によって成立する。したがって,
て対抗するための要件である。
⑵は正しく,これが本問の正解である。
正解率 56%
正解 ⑷
③ 被保証債務が消滅ないし無効となら
ない限り,貸付先が死亡しても,保証
債務が消滅ないし無効となることはな
解 説
く,相続人に相続される。したがって,
① 担保物権には民法に規定されている
もの(質権,先取特権等)のほかに,
⑶は誤りである。
④ 継続的取引について,取引の途中で
特別法に規定されているもの(仮登記
保証人の交替が行われ,旧保証人につ
担保等),判例によって認められたもの
いて保証の免除が行われると,保証債
(譲渡担保権)もある。したがって,⑴
は正しい。
務は消滅する。したがって,⑷は誤り
② 法定担保物権とは,法の立場からみ
である。
⑤ 保証免除する場合に,保証契約書を
て,より強く保護すべきであると考え
直ちに返却できない場合には,免除証
られる債権者に,法律の規定によって
書を交付するといった方法が取られ免
当然に担保物権が与えられる場合で,
除の有効が生じることになる。したがっ
留置権や先取特権がこれにあたる。し
て,⑸は誤りである。
たがって,⑵は正しい。
③ 債権者と財産所有者との合意(担保
物権の設定契約)によって生じる担保
担 保
物権を約定担保物権といい,質権,抵
当権等が利用されている。したがって,
⑶は正しい。
担
保
物
件
④ 相殺権や代理受領は担保的機能を有
するものの,合意による担保権の設定
問 25 担保物権について,誤っているもの
契約ではないから約定担保物権とはな
を 1 つ選びなさい。
らない。したがって⑷は誤りであり,
⑴ 担保物権には,民法に規定されているも
これが本問の正解である。
ののほかに,特別法に規定されているもの
⑤ 対抗要件とは,当事者間で効力が生
や,判例によって認められたものもある。
じた権利ないし法律関係の得喪を第三
⑵ 法定担保物権には,留置権や先取特権が
者に対して対抗するための要件であり,
不動産に関する登記,動産に関する引
ある。
⑶ 債権者と財産所有者との合意によって生
−40−
渡しなどが該当する。したがって,⑸
融資実務
は正しい。
定者が取得する保険金,売却代金,賃
貸料,損害賠償請求権等の上に担保権
担
保
の
特
性
の効力が及ぶことをいう。しかし,こ
の物上代位権を行使するには,これら
問 26 担保の特性について,正しいものを
の保険金等が担保権設定者に支払われ
1 つ選びなさい。
る前にみずから差押をしなければなら
⑴ 留置権,質権,普通抵当権,元本確定後
ないとされる(民法 304 条 1 項但書)。
の根抵当権は,いずれも附従性を有する。
物上代位性を有する担保権は,先取特
⑵ 確定前の根抵当権は,随伴性を有する。
権,質権,および抵当権のみである。
⑶ 先取特権,質権,抵当権は,物上代位性
したがって,⑶,⑸は誤りである。
④ 不可分性とは,担保権者は被担保債
を有さない。
⑷ 不可分性とは,担保提供者は被担保債権
権の全部の弁済を受けるまでは担保物
の一部弁済をしなければ担保物件の一部解
件の全部について担保権を行うことが
除を請求することができないという性質の
できるという性質である(民法 296 条
ことである。
ほか)。したがって,⑷は誤りである。
⑸ 物上代位権を行使するには,保険金,売
抵
却代金,賃貸料等が担保権設定者に支払わ
当
目
的
物
件
れる前後にかかわらず,みずから差押をす
問 27 抵当目的物件について,正しいもの
ればよいとされている。
を 1 つ選びなさい。
正解率 42%
正解 ⑴
⑴ 一般的に更地は,建付地に比べて担保力
が小さくなる。
解 説
⑵ 山林に抵当権を設定した場合,立木法に
① 担保物権のなかで附従性をもつもの
より登記された立木についても当該抵当権
は,留置権,先取特権,質権,普通抵当権,
の効力が及ぶ。
元本確定後の根抵当権などである。し
⑶ 農地は,市街化区域内に存在する物件で
たがって,⑴は正しく,これが本問の
あっても,すべて添担保として取扱わなけ
正解である。
ればならない。
② 随伴性は,担保物権が被担保債権の
⑷ 工場を担保にとる方法には,工場抵当法
処分に従うということであり,確定前
第 3 条により,機械・器具等の目録を作成
の根抵当権では,被担保債権が譲渡さ
して土地建物とともに抵当権を設定する方
れても根抵当権は移転せず,随伴性が
法がある。
否定されている(民法 398 条の 7 第 1
⑸ 自動車を抵当権の目的とする場合には,
項)。したがって,⑵は誤りである。
抵当権者がその自動車を占有することが第
③・⑤ 物上代位性とは,担保物の滅失,
毀損,売却,賃貸等により,担保権設
−41−
三者対抗要件となる。
融資実務
る自動車登録を受けたものにつき認め
正解率 66%
正解 ⑷
られ,抵当権設定の登録を受けなけれ
ば自動車抵当権の得喪変更について第
解 説
三者に対抗できないものとされている。
① 宅地を抵当にとるとき,更地か建付
したがって,⑸は誤りである。
地かまたは貸地かを確かめなければな
自 組 合 貯 金 担 保
らいないが,一般的に更地は担保力が
大きく,建付地の場合は地上建物によっ
て制約をうけるため担保力はやや小さ
問 28 自組合貯金担保について,誤ってい
くなる。したがって,⑴は誤りである。
るものを 1 つ選びなさい。
② 立木法により登記された立木は独立
⑴ 自組合貯金担保は,担保として最も確実
して抵当の目的となるが,未登記の立
木はその土地と一体をなしているもの
性の高いものであるといえる。
⑵ 担保貯金の名義人が債務者と異なる場合,
とみなされ,明認方法が施された立木
相殺によって債権回収するには貯金名義人
を除外して,抵当権の効力が及ぶこと
を連帯保証人にしておく必要がある。
になる。したがって,⑵は誤りである。
⑶ 貯金債権を目的とする質権設定には,法
③ 農地でも市街化区域内の場合は,既
律上,貯金証書(通帳)の差入れを必要と
に開発許可を受けているか,または開
する。
発許可が不要な場合で転用の届出書が
⑷ 質権として第三者に対抗するには,貯金
受理されているか,または提出済みの
担保差入証に質入承諾文言を奥書し確定日
ときは,正式担保として差支えない(そ
付を付す必要がある。
の他の物件は,問題があり,添担保と
⑸ 相殺の要件を満たしている場合には,第
して取扱わなければならない)。した
三者から差押をうけても,組合は相殺によ
がって,⑶は誤りである。
り回収することができる。
④ 工場を抵当に入れる場合は,工場に
正解率 49%
正解 ⑶
属する土地・建物・機械類等をもって
財団を組成して抵当権を設定する方法
(工場抵当法第 8 条~第 50 条)と,こ
解 説
のような財団を作らず工場抵当法第 3
① 自組合貯金担保は,担保取得手続や
条により機械・器具等の目録を作って
その後の管理に手数がかからず,また
土地建物とともに抵当権を設定する方
担保価値が低落するおそれもなく,貸
法とがある。したがって,⑷は正しく,
出金の回収等が必要な場面では確実に
これが本問の正解である。
しかも容易に換価でき,担保としては
最も確実性が高いといえる。したがっ
なお,前者は規模の大きい工場に利
て,⑴は正しい。
用される。
⑤ 自動車抵当は,道路運送車両法によ
② 相殺によって回収しようとする場合,
−42−
融資実務
債権(自働債権)と相殺による債務(受
を 1 つ選びなさい。
働債権)とが,お互いに当事者間で対
⑴ 譲渡担保では,債権者が債務者に対して
立していなければならない。そこで,
有する債権を担保するために,担保権設定
担保貯金の名義人が債務者と異なる場
者が有する物の所有権や権利の譲渡をする。
合,相殺によって債権回収するには貯
⑵ 譲渡担保の担保目的物が指名債権の場合,
金名義人を連帯保証人(保証債権と貯
譲渡の対抗要件は確定日付のある債権譲渡
金債務の対立)にしておく必要がある。
の通知または承諾である。
したがって,⑵は正しい。
⑶ 「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する
③ 貯金債権を目的とする質権設定は,
民法の特例等に関する法律」では,個人事
要物契約ではないから法律上は貯金証
業者および法人が行う動産の譲渡について,
書(通帳)の差入れは必要ではない。
登記することにより,第三者に対する対抗
したがって,⑶は誤りであり,これが
要件である民法 178 条の引渡しがあったも
本問の正解である。ただし,貯金証書
のとみなすことにしている。
(通帳)を確認することにより貯金者特
⑷ 手形の譲渡担保は,国税の法定納期限に
定等にトラブルを生じないよう,実務
上の配慮として行うことが望ましい。
関係なく国税に優先する。
⑸ 債務の不履行があると,譲渡担保権者は
④ 自組合貯金に質権を設定し,これを
担保目的物から優先的に弁済を受けること
第三者に対抗するためには,貯金担保
ができるが,被担保債権額と担保目的物の
差入証に質入承諾文言を奥書し確定日
価格との差額を清算しなければならない。
付を付す必要がある。したがって,⑷
正解率 17%
正解 ⑶
は正しい。なお,国税等の滞納処分に
よる差押に対抗するためには,差押の
時点ではなく,国税等の法定納付期限
解 説
以前に質権が設定されていたことを担
① 譲渡担保では,債権者が債務者に対
保差入証の確定日付で立証しなければ,
して有する債権を担保するために,担
これに対抗できないことになっている。
保権設定者が有する物の所有権や権利
の譲渡(移転)をする。したがって,
⑤ 第三者から差押をうけても,相殺の
⑴は正しい。
要件を満たしている場合には,組合は
相殺により回収することができるので,
② 譲渡担保は,目的財産の権利を移転
実務上は確定日付を省略しているケー
するのであるから,その目的財産によっ
スも多い。
て移転(譲渡)の対抗要件が異なり,
指名債権ならば確定日付のある債権譲
したがって,⑸は正しい。
渡の通知または承諾である。したがっ
譲
渡
担
保
て,⑵は正しい。なお,不動産ならば
所有権移転登記,動産ならば物の引渡
問 29 譲渡担保について,誤っているもの
−43−
である。
融資実務
③ 「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関
する民法の特例等に関する法律」では,
れる。
⑸ 土地について抵当権設定後にその土地上
法人が行う動産の譲渡について,登記
に建物が建築され,建物所有者が土地所有
することにより,第三者に対する対抗
者以外の第三者の場合であっても,一括競
要件である民法 178 条の引渡しがあっ
売が認められる。
たものとみなすことにしており,個人
正解率 22%
正解 ⑵
は対象外である。したがって,⑶は誤
りであり,これが本問の正解である。
④ 手形の譲渡担保は,国税等の法定納
期限に関係なく国税等に優先する(国
解 説
① 民法上,従物はすべて主物の処分に
税徴収法附則 5 条 4 項)。したがって,
したがうことになっている。よって,
⑷は正しい。
家屋に抵当権を設定すると,別段の定
⑤ 債務の不履行があると,譲渡担保権
めがない限り,従物である畳・建具な
者は担保目的物から優先的に弁済を受
どにも当然抵当権の効力が及ぶことに
けることができるが,被担保債権額と
なる。したがって,⑴は正しい。
担保目的物の価格との差額を清算しな
② 区分所有建物における,専用部分に
ければならず,譲渡担保権者による利
対する抵当権設定の効力は共用部分の
益の取り込みは認められない。したがっ
持分に及び,これを排除する特約もま
て,⑸は正しい。
た共同部分のみを分離してこれに抵当
権を設定することも認められない。し
不
動
産
担
保
たがって,⑵は誤りであり,これが本
問の正解である。
問 30 不動産担保について,誤っているも
③ 滞納処分による差押,仮差押,競売
のを 1 つ選びなさい。
手続開始等の登記はそれらの権利が実
⑴ 家屋に抵当権を設定すると,別段の定め
現することによって,現在の所有名義
がない限り,その家屋に付属する畳・建具
人はその所有権を失うことになるので
などにも当然に抵当権の効力が及ぶ。
登記記録の甲区欄に記載される。した
がって,⑶は正しい。
⑵ 区分所有建物における,専用部分に対す
る抵当権設定の効力は共用部分の持分には
④ 甲区欄と乙区欄に登記された権利に
関する相互間の優劣は,登記申請が受
及ばない。
理されたときの受付番号の前後によっ
⑶ 滞納処分による差押,仮差押,競売手続
開始の登記は登記記録の甲区欄に記載さ
て決定される(不動産登記法 4 条他)。
れる。
したがって,⑷は正しい。
⑷ 甲区欄と乙区欄に登記された権利に関
⑤ 土地について抵当権設定後にその土
する相互間の優劣は,登記申請が受理され
地上に建物が建築され,建物所有者は
たときの受付番号の前後によって決定さ
土地所有者以外の第三者の場合,抵当
−44−
融資実務
権者に建築の同意を得ているなど対抗
る形式があるが,一般的には譲渡担保
することができる権利を有していない
の形式が採用されている。したがって,
限り,一括競売が認められる。したがっ
⑵は誤りである。
て,⑸は正しい。
③ 手形を譲渡担保とする場合は,取引
先に通常の譲渡裏書をさせて交付を受
商
手
担
保
ける。「担保のため」「質入のため」な
どの文言を記載すると質入裏書となる。
したがって,⑶は誤りである。
問 31 商手担保について,正しいものを 1
⑤ 商 業 手 形 約 定 書 の 約 定 に よ り, 担
つ選びなさい。
保手形明細表記載の手形は,現在およ
⑴ 商手担保貸付の法的性質は,手形の売買
び将来のいっさいの債務の担保として
である。
差し入れられることになる。したがっ
⑵ 商手担保貸付の手形担保取得の形式は,
て,⑸は正しく,これが本問の正解で
一般的に質権である。
ある。
⑶ 手形を譲渡担保とする場合は,取引先に
「担保のため」などの文言を記載してもらい
交付を受ける。
抵 当 権・根 抵 当 権
⑷ 担保手形が不渡りになった場合,組合に
は取引約定書に基づき,買戻請求権が発生
する。
普通抵当権と根抵当権の違い
⑸ 担保手形明細表記載の手形は,現在およ
び将来の債務の担保として差し入れられる。
問 32 普通抵当権と根抵当権の違い等につ
正解率 19%
正解 ⑸
いて,誤っているものを 1 つ選びなさい。
⑴ 民法における抵当権に関する規定は原則
解 説
として根抵当権には適用されない。
①・④ 手形割引は手形の売買であるが,
⑵ 普通抵当権は特定の債権を担保し,根抵
商手担保貸付は商業手形を担保とす
当権は不特定の債権を担保する。
る貸付であり,もし担保手形について
⑶ 代位弁済により債権が移転した場合,普
不渡りなど事故が発生した場合につい
通抵当権は弁済者に移転するが,確定前の
て は, 商 業 手 形 担 保 約 定 書 に お い て
根抵当権は移転しない。
取引先は手形面記載の金額を支払う旨,
⑷ 普通抵当権も根抵当権も,同一の債権を
商手担保特有の特約条項が設けられ
担保するために数個の不動産を共同担保と
ている。したがって,⑴,⑷は誤りで
することができる。
ある。
⑸ 被担保債権が消滅した場合,それに伴っ
② 商手担保貸付において担保取得の仕
方に,譲渡担保による形式と質権によ
−45−
て,普通抵当権は消滅するが,元本確定前
の根抵当権は消滅しない。
融資実務
根抵当権はそれだけでは消滅しない。
正解率 59%
正解 ⑴
したがって,⑸は正しい。
根抵当権の被担保債権の範囲
解 説
① 根抵当権は設定行為をもって定める
ところにより,一定の範囲に属する不
問 33 根抵当権の被担保債権の範囲につい
特定の債権を極度額の限度において担
て,誤っているものを 1 つ選びなさい。
保するために設定する抵当権であると
⑴ 被担保債権の範囲に属する債権は,現在
定義されている。すなわち根抵当権も
既に生じている特定の債権も担保される。
抵当権の一種である。また,他の諸規
⑵ 被担保債権の範囲に保証委託取引による
定に照らしても,民法における抵当権
債権とあれば,債務者が他人のための保証
に関する規定は原則として根抵当権に
人となり組合に対して保証債務を負ってい
適用される。したがって,⑴は誤りで
る場合の組合の保証債権が担保される。
あり,これが本問の正解である。
⑶ 手形・小切手上の債権については,原則
② 被担保債権において,普通抵当権は
として債務者との取引によらないで取得し
特定の債権を担保し,根抵当権は不特
たものが担保される。
定の債権で,設定当時にはその発生時
⑷ 被担保債権の範囲に属さない特定の債権
期,内容,金額,口数等が確定しない
も,不特定の債権と一緒に被担保債権に加
多数の債権を担保する。したがって,
えることができる。
⑵は正しい。
⑸ 被担保債権の範囲を変更しないで,債務
③ 代位弁済により債権が移転した場合,
普通抵当権は弁済者に移転するが,確
者だけを変更することができる。
正解率 12%
正解 ⑵
定前の根抵当権は,随伴性を有せず,
債権の移転に伴って移転することはな
解 説
い。したがって,⑶は正しい。
④ 普通抵当権の場合は共同抵当として,
① 被担保債権の範囲に属する債権は,
根抵当権の場合は,共同抵当に関する
将来生ずる不特定の債権のみならず,
民法 392 条,393 条の規定を適用して
現在既に生じている特定の債権も担保
共同根抵当として,同一の債権を担保
される。したがって,⑴は正しい。
するために数個の不動産を共同担保と
② 被担保債権の範囲に保証取引による
することができる。したがって,⑷は
債権とあれば,債務者が他人のための
正しい。
保証人となり,組合に対して保証債務
⑤ 被担保債権が消滅した場合,それに
を負っている場合にその組合の保証債
伴って,特定の債権の存在を必要とす
権が担保され,保証委託取引による債
る普通抵当権は消滅するが,特定の債
権とあれば,組合が取引先の委託を受
権の存在を必要としない元本確定前の
けて保証人になり,保証人として債権
−46−
融資実務
者に弁済した場合の求償債権等が担保
は確定するが,根抵当権設定者の破産では
される。したがって,⑵は誤りであり,
元本は確定しない。
これが本問の正解である。
⑸ 確定期日を定めない場合には,根抵当権
③ 手形上,小切手上の債権については,
者はいつでも元本の確定請求をすることが
原則として債務者との取引によらない
で取得したもの,いわゆる回り手形,
できる。
正解率 44%
正解 ⑸
小切手債権が担保される。したがって,
⑶は正しい。
④ 担保債権の範囲に属さない特定の債
権も不特定の債権と一緒に被担保債権
解 説
① 根抵当権は,確定期日と定められた
に加えることができる。この場合には,
日の午前 0 時の到来をもって確定する
その特定の債権は根抵当権者と債務者
(民法 398 条の 6)。したがって,⑴は
誤りである。
との間の取引によって生じたものでな
くても差支えない。したがって,⑷は
② 根抵当権の元本が確定すると,その
元本債権とそれに付随して生ずる利息・
正しい。
⑤ 被担保債権の範囲を変更しないで,
損害金は極度額を限度として何年度分
債務者だけを変更することもでき,逆
でも担保される。したがって,⑵は誤
に,債務者を変更することなく被担保
りである。
債権の範囲だけ変更することもできる
③ 根抵当物件に滞納処分による差押え
(民法 398 条の 4)。したがって,⑸は
がされた場合,根抵当権者が,その事
実を知ってから 2 週間を経過すると元
正しい。
本が確定する。したがって,⑶は誤り
根抵当権の元本の確定
である。
④ 債 務 者 ま た は 設 定 者 が 破 産 手 続 開
問 34 根抵当権の元本の確定について,正
始の決定を受けたときは,決定のとき
しいものを 1 つ選びなさい。
に 元 本 は 確 定 す る( 民 法 398 条 の 20
⑴ 根抵当権は,確定期日と定められた日の
第 1 項 4 号)。したがって,⑷は誤りで
ある。
午後 0 時の到来をもって確定する。
⑵ 根抵当権の元本が確定すると,その元本
⑤ 確定期日を定めない場合には,根抵
債権とそれに付随して生ずる 1 年分の利息・
当権者はいつでも元本の確定請求をす
損害金について,極度額の範囲内で担保さ
ることができ,請求のあったときに元
れる。
本は確定する(民法 398 条の 19 第 2 項)。
⑶ 根抵当物件に滞納処分による差押えがさ
れた場合,根抵当権者が,その事実を知っ
てから 1 週間を経過すると元本が確定する。
⑷ 債務者の破産手続開始の決定により元本
−47−
したがって,⑸は正しく,これが本問
の正解である。
融資実務
抵 当 権 の 順 位 の 変 更
るのは,普通抵当権と元本確定後の根
抵当権であり,元本確定前の根抵当権
問 35 抵当権の順位の変更について,正し
には認められていない(民法 376 条)。
いものを 1 つ選びなさい。
したがって,⑷は誤りである。
⑴ 順位の変更は,抵当権の優先関係を当事
⑤ 順位の変更の登記では,当事者全員
(中間順位者を含む)の合意に加えて順
者間で絶対的に変更する手続である。
位変更する抵当権等に登記上の利害関
⑵ 順位の変更をするには中間順位者の協力
係を有する者がいる場合はその者の承
は必要としない。
諾書の添付が必要とされる。したがっ
⑶ 抵当権が数個の物件に共同担保として設
て,⑸は誤りである。
定されている場合,その一部物件について
のみ順位の変更をすることはできない。
根 抵 当 権 の 変 更
⑷ 順位の譲渡と順位の放棄は,普通抵当権
にも元本確定前の根抵当権にも認められて
問 36 根抵当権の変更について,正しいも
いる。
⑸ 順位の変更の当事者の合意があれば,順
位変更する抵当権等に登記上の利害関係を
のを 1 つ選びなさい。
⑴ 被担保債権の範囲,債務者,確定期日,
極度額はいずれも元本の確定前においての
有する者の承諾は必要としない。
み変更が可能である。
正解率 48%
正解 ⑴
⑵ 被担保債権の範囲の変更登記は,一般の
登記と同様に対抗要件である。
解 説
⑶ 極度額の増額は,後順位担保権者など利
① 順位の変更は,民法 374 条において
害関係人の承諾があれば可能であり,その
認められた手続であって,抵当権の優
登記は常に付記登記でもってなされる。
先関係を,当事者間で絶対的に変更す
⑷ 債務者の変更で,債務者甲を乙に換える
る手続である。したがって,⑴は正しく,
ことは可能であるが,乙を追加して今後の
これが本問の正解である。
債務者を甲・乙とすることはできない。
② 順位の変更をするには,順位変更の
⑸ 確定期日の変更は,期日の到来前に変更
当事者(中間順位者も含む)全員の合
契約がなされることが条件で,その変更登
意が必要である。したがって,⑵は誤
記は変更前の期日の到来後に行うことで
りである。
よい。
③ 抵当権が数個の物件に共同担保とし
正解率 41%
正解 ⑶
て設定されている場合,その一部物件
についてのみ順位の変更をすることも
可能である。したがって,⑶は誤りで
解 説
ある。
① 被担保債権の範囲,債務者,確定期
④ 順位の譲渡と順位の放棄が認められ
−48−
日の変更は,いずれも元本の確定前に
融資実務
おいてのみ可能であるが,極度額の変
更は元本の確定の前後を問わず変更で
の後順位となる。
⑶ 一部譲渡の場合,譲渡人の債権は,譲受
きる。したがって,⑴は誤りである。
人の債権とともに引き続き担保される。
② 被担保債権の範囲の変更は,根抵当
⑷ 全部譲渡により,その根抵当権設定契約
権の元本の確定前に登記しないと,変
に付随してなされている各種の特約は,当
更されなかったものとみなされる(民
然には譲受人に移転しない。
法 398 条の 4 第 3 項)が,この登記は
⑸ 全部譲渡,分割譲渡,一部譲渡のいずれも,
一般の登記のように対抗要件でなく,
効力要件である。したがって,⑵は誤
根抵当権設定者の承諾が必要である。
正解率 49%
正解 ⑵
りである。
③ 極度額の増額は,後順位担保権者な
ど利害関係人の承諾があれば可能であ
解 説
り,その登記は常に付記登記でもって
① 全部譲渡されると,これまで担保さ
なされる(不動産登記法 66 条)。した
れていた譲渡人の債権は,その根抵当
がって,⑶は正しく,これが本問の正
権で担保されなくなる。したがって,
解である。
⑴は正しい。
④ 債務者の変更で,債務者甲を乙に換
② 根抵当権の分割譲渡とは,1 個の根
えることも,また乙を追加して今後の
抵当権を極度額において二つの同順位
債務者を甲・乙複数にすることするこ
の根抵当権に分割し,その一つの根抵
とも可能である。したがって,⑷は誤
当権を第三者に譲渡することである。
りである。
したがって,⑵は誤りであり,これが
本問の正解である。
⑤ 確定期日の変更は,期日の到来前に
変更契約し,変更前の期日が到来する
③ 一部譲渡の場合,譲渡人の債権は,
前にその変更の登記をする必要がある。
譲受人の債権とともに引き続き担保さ
しがたって,⑸は誤りである。
れる。したがって,⑶は正しい。
④ 全部譲渡により,その根抵当権設定
根 抵 当 権 の 譲 渡
契約に付随してなされている各種の特
約は,当然には譲受人に移転しない。
問 37 根抵当権の譲渡について,誤ってい
そこで,譲受人と根抵当権設定者との
るものを 1 つ選びなさい。
間において改めてそれら付随契約を特
⑴ 全部譲渡されると,これまで担保されて
約する必要がある。したがって,⑷は
正しい。
いた譲渡人の債権は,その根抵当権で担保
⑤ 全部譲渡,分割譲渡,一部譲渡のい
されなくなる。
⑵ 根抵当権者甲が極度額 1,000 万円を 700
万円と 300 万円の二つの根抵当権に分割し
て,乙に 300 万円を譲渡した場合,乙は甲
−49−
ずれも,根抵当権設定者の承諾が必要
である。したがって,⑸は正しい。
融資実務
根抵当権の債務者死亡と相続
上保証の場合,債務者の相続人とは関
係なく,物上保証人である根抵当権設
問 38 根抵当権の債務者死亡と相続につい
定者と根抵当権者である。したがって,
て,誤っているものを 1 つ選びなさい。
⑶は正しい。
⑴ 被相続人である債務者が相続開始時に負
④ 「指定債務者」の合意の登記(共同
申請)をするには,前提として,相続
担していた債務は当然に引続き担保される。
による債務者の変更の登記(共同申請)
⑵ 相続開始後 6 ヶ月以内に新たな債務者(以
下,「指定債務者」)を定めその登記をしな
をする必要がある(不動産登記法 92
いと,根抵当権は 6 ヶ月経過の時点で元本
条)。したがって,⑷は正しい。
⑤ 「指定債務者」の合意が適法になさ
が確定したものとみなされる。
⑶ 「指定債務者」合意の当事者は,物上保証
れ,その登記が法定期間内になされた
の場合,物上保証人である根抵当権設定者
場合,根抵当権は,「指定債務者」(指
と根抵当権者であり,債務者の相続人とは
定相続人)が相続開始後に負担する債
関係ない。
務も担保することになる。したがって,
⑸は正しい。
⑷ 「指定債務者」の合意の登記をするには,
前提として,相続による債務者の変更の登
記をする必要がある。
貸 出 金 の 管 理
⑸ 「指定債務者」の合意が適法になされ,そ
の登記が法定期間内になされた場合,根抵
当権は,「指定債務者」が相続開始後に負担
債務者の死亡と借入債務の相続
する債務も担保することになる。
正解率 24%
正解 ⑵
問 39 債務者の死亡と借入債務の相続につ
いて,正しいものを 1 つ選びなさい。
解 説
⑴ 相続債務は,当然に遺産分割協議の対象
① 被相続人である債務者が,相続開始
時に負担していた債務は当然に引続き
とすることができる。
⑵ 共同相続人相互間には相続債務について
担保される(民法 398 条の 8)。したがっ
て,⑴は正しい。
連帯債務の関係が生じる。
⑶ 相続人が相続放棄しても,相続債務につ
② 相続開始後 6 ヶ月以内に新たな債務
いて責任を免れることはない。
者(以下,「指定債務者」)を定めその
⑷ 相続財産の限度において相続債務を弁済
登記をしないと,根抵当権は相続開始
する限定承認は,共同相続人全員が共同し
の時に元本が確定したものとみなされ
て行わないと受理されない。
る(同 4 項)。したがって,⑵は誤りで
⑸ 相続債務が相続財産を超過する場合でも,
あり,これが本問の正解である。
相続人自らが破産の申立をすることはでき
③ 「指定債務者」合意の当事者は,物
−50−
ない。
融資実務
⑴ 農協取引約定書では,債務者が行方不明
正解率 38%
正解 ⑷
となり組合から宛てた通知が届出の住所に
到達しなくなった場合,一切の債務につい
解 説
て当然期限の利益を失う旨の約定がなされ
① 遺産分割の対象となる遺産とは,相
ている。
続人が任意に処分できるものに限られ
⑵ 債務者の行方不明の事実については,捜
るから,消極財産である相続債務につ
索手続の顛末を詳細に記録にとどめておく
いては遺産分割の対象とすることはで
必要がある。
きない。そこで,判例は相続人の各法
⑶ 債務者の行方不明による貸出金等期限の
定相続分に応じて当然に分割承継され
利益喪失による弁済期日は,稟議書等によ
るとしている。したがって,⑴は誤り
り組合長等然るべき決定権限者の承認を得
である。
ておく必要がある。
② 相続債務について,共同相続人相互
⑷ 貸出金の期限の利益を喪失させるという
間には連帯債務の関係は生じない。し
意味は,当初の約定弁済期日にかかわらず
たがって,⑵は誤りである。
貸出金の弁済期日を到来させるということ
③ 相続放棄とは,相続人が自分の相続
に関し,はじめから相続人とならない
である。
⑸ 行方不明債務者の期限の利益の喪失は,
ための手続であるから,相続人が相続
その旨を連帯保証人に発信しないと,連帯
放棄すると相続債務について責任を負
保証人には対抗できない。
うことはない。したがって,⑶は誤り
正解率 51%
正解 ⑸
である。
④ 相続財産の限度において相続債務を
弁済する限定承認は,共同相続人全員
解 説
が共同して行う必要がある(民法 923
① 現行の農協取引約定書では,債務者
条)。したがって,⑷は正しく,これが
が行方不明となり組合から宛てた通知
本問の正解である。
が届出の住所に到達しなくなった場合,
⑤ 相続財産が債務超過の場合には,相
組合からの通知催告等が無くても一切
続債権者,受遺者,相続人,相続財産
の債務について当然に期限の利益を喪
管理人等が破産の申立をすることはで
失する旨の約定がなされており,債務
きる(破産法 129 条,131 条 1 項)。し
者の行方不明の事実が組合において確
たがって,⑸は誤りである。
認されれば,その時点で貸出金につい
て期限の利益を失わせることができる。
債務者行方不明時の管理
したがって,⑴は正しい。
② 行方不明者債務者の期限の利益を喪
問 40 債務者行方不明時の管理について,
失させるためには,債務者の行方を捜
誤っているものを 1 つ選びなさい。
索したが,どうしても行方がわからな
−51−
融資実務
かったときには捜索手続の顚末をでき
代表者が変わっても,原則として新代表者
るだけ詳細に記録にとどめておき,期
名による代理人届をとりなおす必要はない。
限の利益喪失についての内部稟議書等
⑸ 株式会社が資本金の減少を行う場合につ
に添付する必要がある。したがって,
いては,合併と異なり,債権者保護手続を
⑵は正しい。
とる余地はない。
③ 債務者の行方不明による貸出等の利
正解率 17%
正解 ⑷
益喪失による弁済期日は,内部稟議書
を作成して組合長等の承認を得て明確
にしておく必要がある。したがって,
解 説
⑶は正しい。
① 会社が解散した場合には清算手続に
入り,取締役はその地位を失い清算人
④ 期限の利益の応用問題…債権者から
がその地位に代わる(ただし清算事務
みたもので,⑷は正しい。
⑤ 保証の応用問題…債務者の期限の利
だけ)が,株主総会や監査役は継続す
益の喪失の効力はそのまま連帯保証人
ることになる。したがって,⑴は誤り
に及ぶ。したがって,⑸は誤りであり,
である。
これが本問の正解である。ただし,行
② 事業譲渡は当事者間の契約によって
方不明者の連帯保証人にはその旨連絡
行われ,積極財産,消極財産を一括し
し,回収について今後の協力を求める
て譲渡することもできるし,消極財産
ようにすることが得策である。
を除いて積極財産のみを譲渡すること
もできる。したがって,⑵は誤りである。
法 人 取 引 先 の 変 動
③ 法人の代表者が変わると,代表者変
更届と登記事項証明書,印鑑証明書な
どを提出してもらう必要があるが,農
問 41 法人取引先の変動について,正しい
(漁)協取引約定書等をとりなおす必要
ものを 1 つ選びなさい。
はない。したがって,⑶は誤りである。
⑴ 会社が解散した場合,取締役や監査役は
その地位を失い清算人がその地位に代わる
④ 代理人届が提出されている場合,法
人の代表者が変わっても,代理人は法
ことになる。
⑵ 事業譲渡については,積極財産,消極財
人自体の代理人であり,代表者個人の
産を一括して譲渡することはできるが,消
代理人ではないから,新代表者名によ
極財産を除いて積極財産のみを譲渡するこ
る代理人届をとりなおす必要はない。
とはできない。
したがって,⑷は正しく,これが本問
の正解である。
⑶ 法人の代表者が変わると,代表者変更届
と登記事項証明書,印鑑証明書などを提出
⑤ 株式会社が資本金等の減少を行う場
してもらうとともに,農(漁)協取引約定
合については,その減少は債権者の利
書をとりなおす必要がある。
害に関わるため,合併の場合と同様に,
⑷ 代理人屈が提出されている場合に,法人の
−52−
債権者保護手続がおかれている。した
融資実務
がって,⑸は誤りである。
貸付金の弁済期の翌日が消滅時効の起
算日となる。したがって,⑵は正しい。
債権の消滅時効と時効中断
③ 訴訟の提起,支払督促の申立,和解
の成立また破産手続参加などは,「裁判
問 42 債権の消滅時効と時効中断について,
上の請求」に当たり,時効の中断となる。
誤っているものを 1 つ選びなさい。
したがって,⑶は正しい。
⑴ 手形割引の場合の時効期間は,買戻請求
④ 弁済猶予依頼書の提出,債務の一部
権 5 年,約束手形振出人,為替手形引受人
支払,利息の支払,手形の書替,担保
に対する請求権 3 年,手形裏書人,為替手
の提供などは債務の承認として時効中
形振出人に対する遡求権 1 年である。
断となる。したがって,⑷は正しい。
⑵ 証書貸付,手形貸付については,各弁済
⑤ 連帯保証人の財産に対する差押・仮
期日の翌日が消滅時効の起算日となる。
差押また物上保証人提供担保物件に対
⑶ 訴訟の提起,支払督促の申立は,「裁判上
する担保権実行は,そのことを債務者
の請求」に当たり,時効の中断となる。
に通知した後でないと時効中断の効力
⑷ 弁済猶予依頼書の提出,債務の一部支払,
を生じない(民法 155 条)。したがって,
利息の支払,手形の書替,担保の提供はす
⑸は誤りであり,これが本問の正解で
べて「承認」として時効の中断となる。
ある。
⑸ 連帯保証人の財産に対する差押・仮差押
また物上保証人提供担保物件に対する担保
貸 出 金 の 回 収
権実行は,その事実をもって直ちに債務者
に対して時効中断の効力を生じる。
正解率 28%
正解 ⑸
代
位
弁
済
解 説
問 43 代位弁済について,誤っているもの
① 手形割引の場合の時効期間は,融資
を 1 つ選びなさい。
先に対する買戻請求権 5 年,約束手形
⑴ 法定代位権者が弁済すると,債権者が主
振出人,為替手形引受人に対する請求
債務者に対して有する債権とそれに付随す
権 3 年,手形裏書人,為替手形振出人
る担保権は,債権者の意思にしたがって弁
に対する遡求権 1 年である。したがっ
済者に移転する。
て,⑴は正しい。
⑵ 法定代位権者以外の者であっても,原則
② 消滅時効は,権利者が権利を行使で
として弁済が可能であるが,債務者の意思
きる状態になった時から進行する。す
に反した弁済は無効となる。
なわち,弁済期の定めのある債権につ
⑶ 保証人,連帯債務者,物上保証人,担保
いては弁済期が到来した時から進行す
物件の第三取得者,後順位担保権者はすべ
る。証書貸付,手形貸付について,各
て法定代位権者である。
−53−
融資実務
⑷ 法律上,利害関係のない親兄弟が主債務
方が代位弁済したときは,頭割りで代
者の意思に反せず弁済した場合で,債権者
位できる。例えば保証人 2 人,物上保
の同意があれば,主債務者に対する債権や
証人 1 人であって,保証人の 1 人が代
担保権は弁済者に移転する。
位弁済すれば,その者は他の保証人と
物上保証人に対して各 3 分の 1 ずつ代
⑸ 保証人と物上保証人がおり,その一方が
位できる。したがって,⑸は正しい。
代位弁済したときは,頭割りで代位できる。
正解率 19%
正解 ⑴
代
物
弁
済
解 説
問 44 代物弁済について,誤っているもの
① 法定代位権者が弁済すると,債権者
を 1 つ選びなさい。
が主債務者に対して有する債権はそれ
⑴ 融資の際に代物弁済予約契約を行い不動
に付随する担保権と共に,債権者の意
産の所有権移転請求権の仮登記を行った場
思にかかわらず弁済者に移転する。し
合で,回収時に対象不動産の価額が被担保
たがって,⑴は誤りであり,これが本
債権額を上回っているときには,債権者は
問の正解である。
債務者等にその差額を清算金として支払わ
② 法定代位権者以外の者であっても,
原則として弁済が可能であるが,債務
なければ所有権の移転登記が受けられない。
⑵ 金銭債務について代物弁済を行うには,
者の意思に反した弁済は無効となる(民
債権者と弁済者との間で金銭以外のものを
法 474 条 2 項)から,主債務者が第三
弁済として給付する旨の合意が成立し,現
者の弁済に反対した場合には弁済を受
実にその物が引渡される必要がある。
入れることができない。したがって,
⑶ 代物弁済により原債権は消滅し,それに
⑵は正しい。
付随する担保・保証も消滅する。
③ 保証人,連帯債務者,物上保証人,
⑷ 手形あるいは小切手でもって代物弁済し
担保物件の第三取得者,後順位担保権
た場合,その手形・小切手が不渡りとなっ
者などは法律上の利害関係を有する者
ても原債権は復活しない。
であり,弁済をなすに付き正当な利益を
⑸ 動産または不動産をもって代物弁済した
有する者とされ,これらの者を法定代
場合,目的物件にかくれた鍛疵があり,債
位権者という。したがって,⑶は正しい。
権者がこれを知らなかったときでも,契約
④ 法律上利害関係のない親兄弟が主債
の解除または損害賠償の請求をすることは
務者の意思に反せず弁済した場合でも,
債権者の同意がない限り移転しないが,
できない。
正解率 56%
正解 ⑸
債権者の同意があれば,主債務者に対
する債権や担保権は弁済者に移転する。
解 説
したがって,⑷は正しい。
⑤ 保証人と物上保証人があり,その一
① 仮登記担保が代物弁済予約契約の場
−54−
融資実務
合(代物弁済予約契約を行い不動産の
⑴ 相殺適状とは,相殺するためのすべての
所有権移転請求権の仮登記を行った場
合)で,それによる回収にあたっては,
要件を満たした状態である。
⑵ 貯金通帳・証書が回収できなくても相殺
その対象不動産の価額が被担保債権額
の効力に影響はない。
を上回っているときには,債権者は債
⑶ 相殺するためには,同一当事者の債権・
務者等にその差額を清算金として同時
債務が同種であれば,どちらかが弁済期に
履行で,支払わなければ所有権の移転
あればよい。
登記が受けられない(仮登記担保法 3
⑷ 会社更生法および民事再生法の場合,債
条)。したがって,⑴は正しい。
権届出期間内でないと相殺できない。
② 金銭債務について代物弁済を行うに
⑸ 貯金が差押えされた当時に,貸付金債権
は,債権者と弁済者との間で金銭以外
がある限り,原則として貯金と貸付金の弁
のものを弁済として給付する旨の合意
済期の前後いかんに拘わらず,相殺をもっ
が成立し,現実にその物が引渡される
て差押債権者に対抗できる。
必要がある。したがって,⑵は正しい。
正解率 56%
正解 ⑶
③ 代物弁済の効果として,代物弁済に
より原債権は消滅し,それに付随する
担保・保証等も消滅する。したがって,
解 説
⑶は正しい。
① 相殺適状とは,相殺するためのすべ
ての要件を満たした状態である。した
④ 手形あるいは小切手でもって代物弁
がって⑴は正しい。
済した場合,その手形・小切手が不渡
りとなっても原債権は復活せず,債権
② 貯金通帳・証書はできるだけ回収に
者はその手形または小切手による回収
努めるべきであるが,回収できなくて
をはかるほかない。したがって,⑷は
も相殺の効力に影響はない。したがっ
正しい。
て,⑵は正しい。
⑤ 動 産 ま た は 不 動 産 を も っ て 代 物 弁
③ 相殺の要件として,同種の債権・債
済した場合,目的物件にかくれた瑕疵
務が同一当事者で対立しており,双方
があり,債権者がこれを知らなかった
の債務が弁済期にあることとが必要で
ときは,契約の解除または損害賠償の
あり,自働債権と受働債権の弁済期が
請求をするこができる(民法 570 条,
到来していないと相殺できない。した
566 条)。したがって,⑸は誤りであり,
がって,⑶は誤りであり,これが本問
これが本問の正解である。
の正解である。
④ 会社更生法および民事再生法の場合,
相 殺 の 要 件 と 手 続
債権届出期間内でないと相殺できない
(会社更生法 162 条,民事再生法 92 条)。
したがって,⑷は正しい。
問 45 相殺の要件と手続について,誤って
いるものを 1 つ選びなさい。
⑤ 貯金が差押えされた当時に,貸付金
−55−
融資実務
債権がある限り,貯金と貸付金の弁済
破産管財人が選任された場合,貯金者
期の前後いかんに拘わらず,相殺をもっ
の財産の処分権は管財人に移っており,
て差押債権者に対抗できると判示され
相殺通知は破産管財人に対して行わな
ている(判例)。したがって,⑸は正しい。
ければならない。したがって,⑵は誤
りである。
相 殺 通 知 の 相 手 方
③ 民事再生法の場合,原則として貯金
者本人に通知すればよいが,管財人が
問 46 相殺通知の相手方について,正しい
選任された場合は管財人が管理処分権
ものを 1 つ選びなさい。
をもつことになるので,管財人に通知
⑴ 融資先の貯金とともに連帯保証人の貯金
しなくてはならない。したがって,⑶
は誤りである。
を相殺する場合は,融資先の貯金について
は融資先に,連帯保証人の貯金については
④ 転付命令が確定すると,貯金は,転
付債権者に移転するので,相殺通知は
連帯保証人に相殺通知しなければならない。
転付債権者に通知しないと効力を生じ
⑵ 貯金者に破産手続開始決定がなされた場
ない。したがって,⑷は誤りである。
合,破産管財人の有無にかかわらず相殺通
⑤ 相続開始の場合に複数の相続人がい
知は従来の貯金者宛でよい。
るときでは,それぞれの法定相続分に
⑶ 民事再生法の場合,常に貯金者本人に通
従って分割相続されたものとして相殺
知することになる。
し,各共同相続人にその旨の通知を行
⑷ 差押転付命令を受けた貯金との相殺は,
当初貯金者または転付債権者に通知しない
わなければならない。したがって,⑸
と効力を生じない。
は誤りである。
⑸ 相続開始の場合,複数の相続人がいると
債
きでも,いずれか 1 人の相続人に通知をす
務
引
受
ればよい。
問 47 債務引受について,誤っているもの
正解率 60%
正解 ⑴
を 1 つ選びなさい。
⑴ 債務引受とは,債務がその同一性を維持
解 説
したまま旧債務者から新債務者に移転する
① 相殺通知の相手方は原則的には貯金
ことをいう。
者である。融資先の貯金とともに連帯
⑵ 新旧債務者間だけで免責的債務引受契約
保証人の貯金を相殺する場合は,融資先
をしても,債権者の同意がない限り債務引
の貯金については融資先に,連帯保証
受の効力を生じない。
人の貯金については連帯保証人に相殺
⑶ 免責的債務引受の結果,第三者提供担保
通知しなければならない。したがって,
や保証は,原則として担保提供者や保証人
⑴は正しく,これが本問の正解である。
の同意がない限り消滅する。
② 貯金者に破産手続開始決定がなされ
⑷ 重畳的債務引受は債権者と引受人の契約
−56−
融資実務
によってすることができるが,旧債務者の
ているものを 1 つ選びなさい。
意思に反すると無効となる。
⑴ 不動産競売の申立を行う場合,組合の職
⑸ 重畳的債務引受の場合,従来の債務に付
員で,当該債権の管理回収事務を担当して
帯する担保・保証はそのまま存続する。
おり,競売についての知識を有する者であ
れば,裁判所の許可を得て申立代理人とな
正解率 58%
正解 ⑷
ることができる。
⑵ 裁判所に提出する不動産競売申立書に添
解 説
付する目的不動産の登記事項証明書は,申
① 債務引受とは,債務がその同一性を
立前 1 ヶ月以内のものが必要である。
維持したまま旧債務者から新債務者に
⑶ 競売対象不動産の現況調査報告書,評価
移転することをいう。したがって,⑴
書にもとづき裁判所が決定した売却基準価
は正しい。
額の 7 割が買受可能価額となる。
② 新旧債務者間だけで免責的債務引受
⑷ 買受可能価額が,競売手続費用と申立債
契約をしても,債権者の同意がない限
権者の債権に優先する債権を弁済して剰余
り債務引受の効力を生じない。したがっ
を生ずる見込みがないと裁判所が認めたに
て,⑵は正しい。
もかかわらず,申立債権者が所定の手続を
③ 免責的債務引受の結果,第三者提供
担保や保証の場合は,担保提供者や保
とらなかったとき競売手続は取消される。
⑸ 最高価買受申出人が所定期日までに代金
証人の同意がない限り消滅する(判例)。
を納付したときに,移転登記を待たずに,競
したがって,⑶は正しい。
売対象不動産の所有権は買受人に移転する。
④ 重畳的債務引受は,通常,債権者,
正解率 44%
正解 ⑶
旧債務者,引受人の三者契約で行われ
るが,債権者と引受人の契約によって
することもでき,この場合は,旧債務
解 説
者の意思に反しても有効となる。した
① 不動産競売の申立を行う場合,弁護
がって,⑷は誤りであり,これが本問
士だけでなく,組合の職員で,当該債
の正解である。
権の管理回収事務を担当しており,競
売についての知識を有する者であれば,
⑤ 重畳的債務引受の場合,従来の債務
者の債務もそのまま存続するので,従
裁判所の許可を得て代理人となること
来の債務に付けられていた担保・保証
ができる。したがって,⑴は正しい。
は債務引受があってもそのまま存続す
② 裁判所に提出する不動産競売申立書
に添付する目的不動産の登記事項証明
る。したがって,⑸は正しい。
書は,申立前 1 ヵ月以内のものが必要
不 動 産 抵 当 権 の 実 行
である。したがって,⑵は正しい。
③ 競売対象不動産の現況調査報告書,
問 48 不動産抵当権の実行について,誤っ
−57−
評価書にもとづき裁判所が決定した売
融資実務
却基準価額の 8 割が買受可能価額とな
る。したがって,⑶は誤りであり,こ
ものもある。
正解率 26%
正解 ⑴
れが本問の正解となる。
④ 買受可能価額が,競売手続費用と申
立債権者の債権に優先する債権を弁済
解 説
して剰余を生ずる見込みがないと裁判
① 債務者の資産に対し差押などの強制
所が認めたにもかかわらず,申立債権
執行を行って債権を回収しようとする
者が所定の手続をとらなかったときに
ためには債務名義が必要であるが,仮
は競売手続は取消される。したがって,
差押は債務名義を必要としない。した
⑷は正しい。
がって,⑴は誤りであり,これが本問
の正解である。
⑤ 最高価買受申出人が所定期日までに
代金を納付したときに,移転登記を待
② 確定判決,仮執行宣言付支払督促,
たずに,競売対象不動産の所有権は買
調停調書,破産債権者表はいずれも債
受人に移転する(民事執行法 64 条他)。
務名義として認められている。その他
したがって,⑸は正しい。
の債務名義には,仮執行宣言付判決,
執行証書,再生債権者表などがある。
債 務 名 義 と 強 制 執 行
したがって,⑵は正しい。
③ 強制執行をするためには,債務名義
問 49 債務名義と強制執行について,誤っ
につき執行文の付与を受け,債務者に
ているものを 1 つ選びなさい。
送達しておくことが必要である(民事
⑴ 債権を回収しようと債務者の資産に対し
執行法 29 条)。したがって,⑶は正し
い。
仮差押を行うためには,債務名義が必要で
④ 差押債権の取立方法で転付命令を得
ある。
⑵ 確定判決,仮執行宣言付支払督促,調停
る方法の場合,第三債務者が支払不能
調書,破産債権者表はいずれも債務名義と
の場合でももとの債権は復活しないの
して認められている。
で注意が必要である。したがって,⑷
は正しい。
⑶ 強制執行をするためには,債務名義につ
き執行文の付与を受け,債務者に送達して
⑤ 差押えた動産は原則として執行官が
保管するが,金銭,有価証券,貴金属,
おくことが必要である。
⑷ 差押債権の取立方法で転付命令を得る方
宝石など以外の物は,封印または差押
法の場合,第三債務者が支払不能の場合で
物件標目票の貼付などを行って差押物
ももとの債権は復活しない。
である旨を表示したうえで債務者等に
⑸ 差押えた動産は原則として執行官が保管
保管させ,後日競売を行って売得金を
するが,封印または差押物件標目票の貼付
債権者に配当する。したがって,⑸は
などを行って差押物である旨を表示したう
正しい。
えで債務者等に保管させ,後日競売を行う
−58−
融資実務
各 種 の 法 的 倒 産 手 続
がって,⑵は正しく,これが本問の正
解である。
問 50 各種の法的倒産手続について,正し
③ 民事再生手続は,破産原因がなくとも
弁済困難の事情があれば申立ができる。
いものを 1 つ選びなさい。
⑴ 破産の申立は,債権者と債務者のいずれ
したがって,⑶は誤りである。
④ 給与所得者等の再生手続きでは,債
かだけが行うことができる。
⑵ 裁判所は,破産手続開始決定の時点で,
務者の手取り収入から本人及び扶養を
破産財団を構成する破産者の資産が少なく,
受ける者の最低限度の生活費を控除し
破産手続費用が賄えないことが明らかな場
た額の 2 年分を再生計画の弁済に充て
合は,同時に破産手続廃止の決定を行う。
られる場合,債権者の決議を要せずに
⑶ 民事再生手続は,破産原因および弁済困
裁判所が再生計画を認可する手続があ
る。したがって,⑷は誤りである。
難の 2 つの事情が揃えば申立ができる。
⑷ 給与所得者の再生手続きでは,債務者の
⑤ 会社更生手続において,担保権を有
手取り収入から本人及び扶養を受ける者の
する債権者も担保権の実行は禁止され,
最低限度の生活費を控除した額の 2 年分を
更生担保権として届出のうえ,更生計
再生計画の弁済に充てられる場合,反対す
画に従って弁済を受けざるをえない。
る債権者が半数を超えない場合には書面決
したがって,⑸は誤りである。
議方法で決定される。
⑸ 会社更生手続において,担保権を有する
債権者は別除権として,更生計画外で債権
の回収を行うことができる。
正解率 29%
正解 ⑵
解 説
① 破産の申立は債権者,債務者のほか
に,法人の取締役,理事,清算人およ
び債務者死亡の場合は相続人,相続財
産管理人なども申立を行うことができ
る。したがって,⑴は誤りである。
② 破産手続開始決定の時点で,破産財
団を構成するもの(破産者の資産)が
極めて少なく,破産手続費用さえ賄え
ないことが明らかなときは,裁判所は
破産手続開始決定と同時に破産手続廃
止の決定を行う(破産法 216 条)。した
−59−
融資実務
正解番号
問題番号
正解番号
問題番号
正解番号
問題番号
正解番号
4
5
5
3
5
1
4
2
1
2
5
4
5
5
2
2
3
1
4
5
1
3
1
3
4
2
4
1
3
2
3
1
1
4
3
4
正解番号
1
4
2
3
3
1
4
2
5
3
6
5
7
4
8
5
9
1
問題番号
問題番号
2
5
2
3
1
−60−
50
40
30
20
10
49
39
29
19
48
38
28
18
47
37
27
17
46
36
26
16
45
35
25
15
44
34
24
14
43
33
23
13
42
32
22
12
41
31
21
11

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