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『臨床力向上プロジェクト』とは・・・・ 昨今の医療情勢、介護情勢を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。それに伴い、理学療法士の活躍す る場も広がりをみせています。これまでは、養成校の卒業後は、医療機関へ就職する方が大半でした。しかし、介 護施設や企業に就職する方も増えてきています。これは、社会的にみて非常に良いことなのですが、同時に理 学療法士業界の将来において、非常に不安定な要素を取り込んでいることになります。と言いますのも、新しい 分野への理学療法士の進出は、一人職場や少人数での職場環境になりやすいのです。そのため、臨床経験の豊 富な上司が不在である場合が多く、理学療法士としての専門的な立場から、多職種と連携していくことに難渋 している方が多くなっているようです。一方では、高齢化社会が進行していくなかで、impairment レベルの問題 から handicap の問題まで柔軟に対応できる理学療法士の社会的な期待度は高まっているように感じます。 これに、応えていくには、卒後教育の充実化を図って いくことが不可欠になります。これまで、卒後教育は各 職場で行っていたと思いますが、社会からみた場合、理 学療法士としての質の均一化をはかっていくことは、『職 業としての信用』につながっていきます。日本理学療法 士協会も新人教育プログラムや、認定/専門理学療法士 制度の作成など、卒後教育に力を入れているように思え ますが、社会が理学療法士に期待しているレベルに到達 していないのが現状です。そこで、『臨床力向上プロジェ クト』の企画が持ち上がってきたのです 【臨床力向上プロジェクトの概要】 ・ 現在、第一線で活躍している臨床家が講師 (各地区でご活躍している臨床家にお願いしました) ・ 毎週開催 :年間を通してセミナーを開催 ・ 平日開催 :土日勤務も多くなってきました。平日の夜に 2 時間程度で開催 ・ 低価格な参加料 :一回のセミナー受講料を低くおさえています ・ 幅広い分野での講義 :セミナーが偏らないようにカリキュラムを作成しています ※ ※ 英会話や音楽の教室に参加するような感じで、理学療法の臨床力を高めていきませんか!? 臨床力向上プロジェクトは、ハートリハ ソラが主催で行う、民間の卒後教育プロジェクトです。日本理学療 法士協会や県理学療法士協会とは、直接的な関係(依頼など)はありませんので、協会の方へのお問い合わ せはなさいませんように、ご注意ください! 『臨床力向上プロジェクト』の概略 【プロジェクト立ち上げの背景】 毎年 1 万人の新理学療法士が誕生しています。その一方で、理学療法士を辞める人も増えて きています。これを生き残りと言うのかはよくわかりませんが、理学療法士の就職難は今後も 続くと予想されます。今後は医療の主な方向性が、急性期病院から在宅へと変更されていくこ とが推察されています。これは理学療法士の活躍する場所が、病院から自宅に移行するといっ た単純な話ではありません。これまでの医療であれば、患者は医療機関に自ら出向いていかな ければなりませんでした。この場合、自分を担当する医師や看護師、理学療法士などから、納得 できる医療サービスを受けられないと感じたとしても、病院そのものを変更することは困難で した。病院とのトラブルを避けたい患者としては、不満があったとしても意見書箱に投稿する程 度にとどめ、「担当の変更」といった事態にまで発展することは少なかったのです。しかし、在宅 となれば、気に入らなければ、訪問してくる看護師や理学療法士の変更を求めてくる危険性が 高くなります。開業権の無い理学療法士にとっては非常に難しい時代が到来しつつあるのです。 この状況を打破するには、理学療法士の社会的な必要性(役割)をもう一度創造していく必要 があります。それには、高い臨床力が不可欠なのです。しかし、学生の臨床実習でその力を養う には現実的には無理があります。弁護士や医師など、高レベルの臨床力が必要な職種では、学 術レベルを高める大学院教育とは別に、専門職大学院のよ うな臨床力を高めることを主にした教育機関や研修医シス テムが準備されています。残念ながら、現在の理学療法士 教育にこのような教育システムを作ることは困難なのです が、それに類似した仕組み作りを始めることは決してマイ ナスにはならないと考えています。日本理学療法士協会で も新人教育プログラムなどを作成し、卒後教育に力を入れ ているようにも見えますが、社会から求められている臨床レベルには遠くおよんでいないのが 現状でだと感じています。 しかし、大分県内でも臨床力にすぐれた理学療法士は大勢います。病院の枠を超え、講師とし て協力してもらい、若手理学療法士の臨床力をアップさせるためのプロジェクトを立ち上げた 次第です。 【目的】 ・高い臨床力をもった理学療法士の育成する ・講師のできる理学療法士を 10 年間で 100 人育成する ・在宅/訪問で安全に理学療法を展開できるレベルの PT を増やす →レクリエーションセラピストや訪問マッサージセラピストを生み出さない 2 ・医療から介護へのシームレスな連携の構築 【対象】 ・臨床現場に勤務する理学療法士および作業療法士 ・卒後 1~5 年程度の若手セラピストの卒後教育として ・5 年以上の先生方のブラッシュアップとしても有効 【セミナーについて】 ・プログラムのスタートは 6 月 (6月から翌年 5 月までが 1 年次となります) ・一回のセミナーは 2 時間程度 ・プログラムは3年間で終了する (3年制の学校をイメージしてください) 【カリキュラム】 ※各セミナーの内容はシラバスをご参照ください 1 年次:基本的な部分の理解から、臨床で必要となる技術まで、幅広い内容での講義となります 2年次:事例報告を含め、1 年次よりも臨床場面に近づけた内容での講義を予定しています 3年次:自ら疑問を解決していく手段として、統計学や研究デザインなど臨床研究手法の講義や、 県外の著名な理学療法士による講演を予定しています <1年次カリキュラムと講師の紹介(大分地区) ※五十音順> 1 年次は 16 分野で 42 回のセミナーを予定しています ・足関節 :大場整形外科 牧健一郎 先生 ・肩関節 :製鉄記念八幡病院 鈴木裕也 先生 ・筋触察 :大分大学医学部附属病院 川上健二 先生 ・筋力トレーニング :ハートリハ 大平高正 ・股関節 :川嶌整形外科病院 羽田 清貴 先生 ・呼吸器 :ハートリハ 大平高正 ・在宅/訪問リハビリテーション :介護老人保健施設 ・循環器 :臼杵医師会立 ・小児理学療法 ソラ ソラ 高橋知良 先生 安藤真治 先生 :別府発達医療センター 武田真樹 先生 ・神経難病 :ハートリハ 大平高正 ・スポーツ理学療法 :中村病院 高橋隆一 先生 ・体幹 :大分大学医学部附属病院 井上 仁 先生 ・脳卒中 :大分中村病院 畑中哲志 先生 ・膝関節 :新別府病院 河野礼治 先生 ・肘関節/手指 :ハートリハ ソラ 大平高正 ・物理療法 :ハートリハ ソラ 大平高正 ※ 清流荘 コスモス病院 ソラ 各分野は、1~3 回のセミナーがあります。詳細は、シラバスをご参照ください 3 【セミナー参加費】 ・受講者のセミナー受講費は 2000 円/回(税込) ・毎回のセミナー受講料とは別に、プロジェクト参加費 10000 円/年(税込)が必要となります つまり、すべてのカリキュラムを受講したとすると プロジェクト参加費 10000 円(税込) + セミナー受講費 2000 円×42 回 ということになり、最大で合計 94000 円/年がかかることになります ※ プロジェクト参加費以外は、セミナー受講時にその都度の支払いになりますので、負担 は最低限 ※ 1~2 回県外でセミナーを受講した場合と同じ程度の金額になります ※ 英会話や音楽の習い事と同程度の金額で、理学療法スキルを伸ばすことができる 画期的なセミナーです ※ 価格以上の価値があると自信をもってお勧めします!! ※ すべてのセミナーに必ず参加する必要はありませんが、魅力ある講師陣ですので、多く のセミナーで、勉強して欲しいと思っています ※ 2年次への受講資格は、一年次のカリキュラムの 50%以上を受講すること 3年次への受講資格は、一年次カリキュラムの 70%以上、二年次カリキュラムの 50%以 上を受講することとしています 【セミナーの開催場所について】 現在、大分地区と別府地区の2個所にて開催予定です どの地区に参加されてもかまいません(セミナーの内容は同じです) 現在、会場としてご協力いただくことになっている医療機関/施設は、以下の通りです ・大分記念病院 ・だいかく病院 ・西別府病院 ・黒木記念病院 ※ ※ ご要望があれば、県北や県南、久大方面でのセミナー開催も企画いたします この他にも、会場として協力いただける医療機関/施設を募集しております ご連絡お待ちしています!! 臨床力向上プロジェクトは、ハートリハ ソラが主催で行う、民間の卒後教育プロジェ クトです。日本理学療法士協会や大分県理学療法士協会とは、直接的な関係(委託)はあ りませんので、協会の方へのお問い合わせはなさいませんように、ご注意ください! 4 『臨床力向上プロジェクト』 参加申し込みの手順について 申込み: [email protected] ①氏名 ②所属 ③職種 ④経験年数 ⑤登録する E-mail アドレス ※ 資料送付に使いますので、パソコンの アドレスでお願いします ⑥参加する地区(大分地区、別府地区) ⑦できれば開催して欲しい地区 (例、宇佐や中津方面、大分市東部など) ※ 今年も大分地区と別府地区の2地区での開 催を準備しておりますが、参加者数が規定に満た なかった場合は、一地区(大分もしくは別府)での 開催になります。(6 月、7 月は、一会場で行います) ①-⑦を明記し、メールにてお申込みください。後日、事務局の方から、『参加費納 入のお願い』と題したメールが、登録する E-mail アドレスの方に届きます。 プロジェクトの参加振り込みが確認できましたら、事務局の方からご連絡させて いただきます。 ご不明な点は、遠慮なく上記メールアドレスへお問い合わせください ※ 『臨床力向上プロジェクト』のブログを開設しています。セミナーの内容や 開催場所などは、ブログにアップいたしますので、必ずブログにてご確認 ください http://rinpro2014.net/ 5 【2015 年 1 年次シラバス】 担当分野 足関節 担当者 牧 健一郎 所属 大場整形外科 臨床もっとも多く関わるであろう部位の一つにこの足関節があげられる。 また、急性期や回復期・運動器や脳血管疾患等でも多くのセラピストが直面す る問題ともいえる。 この足関節領域の疾患の把握をすることは、歩行獲得からランニング、さら にはスポーツなどに復帰していくためには重要と考える。 講義の概要 今回、この講義を通して足関節の機能の再確認、触診から評価を中心に、足 関節に対しての理解を深め、臨床に役立つことを目的にする。 到達目標 事前学習資料 など 各講義の テーマ 足関節の触診と機能評価 足関節に関係する解剖・運動学等 1回目 足関節の触診(骨・関節) 2回目 足関節の触診(靭帯) 3回目 足関節の触診(筋肉) 6 担当分野 肩関節 担当者 鈴木 裕也 所属 製鉄記念八幡病院 人体の中でも肩関節は股関節と同じように球関節であり、多軸性で 3 次元の 動きが可能な特殊な関節といえる。また、肩関節の動きには、単に肩甲上腕関 節のみならずいろんな関節が複合的に動くことで、1 つ 1 つの動作が作られ ている。 これらは何を意味しているのだろうか?肩関節障害に対して理学療法戦略 を立てる上で、いろんな運動軸を形成できるということは、1 つの構造的破綻 が生じても代償が効くという点では強みであり、逆に肩関節障害を評価する 際には色々と考えなければならず、難しいということにもなる。 講義の概要 肩関節障害の理学療法は、いろいろ考えること(いろんな視点で捉えない といけない)が多いという点で、我々理学療法士の「腕次第」(いかに障害の本 質にせまる仮説を立ててそれを評価で立証し、治療に繋げ、結果を示せるか) で結果が変わるということになるため、面白いと考えることもできる。 このように物事は考え方や診る方向が違うだけでいろんなことが生まれ てくる。本講義では、肩関節の基本的な解剖をはじめ、いろんな視点から肩関 節を捉えられるようになり、肩関節障害への治療戦略の幅を広げることを目 的とする。 到達目標 事前学習資料 など 各講義の 肩関節障害に対して、評価の視点を広げることができるようになり、その評価 の解釈ができるようになること 特になし 1回目 肩関節疾患の理解・評価・治療 : 主に腱板損傷 2回目 肩関節疾患の理解・評価・治療 : 主に骨折 テーマ 3回目 肩関節疾患の理解・評価・治療 : 肩関節の評価の実 際 7 担当分野 筋触察 担当者 川上 健二 所属 大分大学福祉健康科学部 (仮称)設置準備室 我々理学療法士には治療やトレーニングを行うために対象者の身体の状 態をイメージする能力が必要である。 臨床現場では、対象者の病態を知識や経験に基づく論理的思考による仮 説を検証する工程、およびそれを繰り返す過程が重要であると言われて いる。 その際に体表から見えない人体の構造や機能を知る必要がある。また、こ れらの基礎的な知識を知ることで応用力が身に付くと考える。 講義の概要 しかし、複雑な人体の構造を頭の中だけでイメージすることは極めて難し い作業である。 そこで、私に与えられたテーマである「筋触察」は筋肉の三次元的構造や 走行、隣接する組織(筋肉、靭帯、骨等)を知り、効果的な理学療法を行う 上で必要な技術である。 筋肉は、良くも悪くも変化しやすく、治療により即時的な変化(筋出力向 上、疼痛緩和)を起こすことができる組織であり、感覚器または効果器と して人が効率的な運動をするために大切な役割を果たしている。 今回の講義が皆さんの触察技術の向上に繋がれば幸いである。 ① 筋肉の形態や構造を理解する 到達目標 ② 筋肉とその他の骨、靭帯、神経との位置関係を理解する ③ 上記 2 つのことをイメージして触察する(マッピングを行う) ④ 可能であれば、徒手刺激前後の変化を感じる 事前学習資料 など 骨格筋の形と触察法 1回目 各講義の テーマ 2回目 3回目 改定第 2 版 骨格筋の解剖学的基礎知識と触察に必要な知識と して、4つの項目を講義しながら触察を行う 骨格筋の解剖学的基礎知識と触察に必要な知識と して、4つの項目を講義しながら触察を行う 骨格筋の解剖学的基礎知識と触察に必要な知識と して、4つの項目を講義しながら触察を行う 8 担当分野 筋力トレーニング 担当者 大平 高正 所属 ハートリハ ソラ 臨床場面では、非常に良く行われる筋力トレーニング。10RM をベースとした ものが良く用いられているが、この理論の対象群は、スポーツ選手や兵士で ある。つまり、Hyper Normal を目指す場合の理論である。大半の臨床現場で は、手術後や廃用により何らかのダメージを受けている筋を持っている方が 対象である。写真は、ラットの筋の毛細血管で ある。左が正常筋、右が廃用性筋萎縮を起こ している筋である。廃用筋は毛細血管系も正 常とは言えないくらい変化している。このよう 講義の概要 な状態の筋に対して、どのような力学的な負 荷を加えていけば、我々が目指しているよう な結果がえられるのかを考えていく必要がある。また、最終的には身体動作 や活動に反映させていかなければならない。身体動作には、多くの筋が共同 的に活動する。主動作筋と拮抗筋の関係であるならば、拮抗筋は十分に弛緩 しなければならない。しかし、色々な要因で拮抗筋の弛緩は得られなくなる。 その場合は、相対的に主動作筋の筋力が低下するばかりでなく、ボディ・イメ ージが変化してしまう。 このような筋機能を十分に理解したうえで、筋力トレーニングを実施するこ とが重要である。 到達目標 事前学習資料 など 各講義の 筋機能を理解し、運動プログラムが立案できるようになる 特になし 1回目 筋トレ前の筋機能の理解 2回目 なし 3回目 なし テーマ 9 担当分野 股関節 担当者 羽田 清貴 所属 川嶌整形外科病院 股関節疾患に対する理学療法は、単関節の機能改善だけでなく、多関節運動 連鎖および姿勢制御の視点から、重力環境に適応できるための姿勢や動作の 改善に着目する必要がある。そのためには局所的な機能障害を理解するだけ では不十分である。全身的な機能障害との相互関係を明らかにしなければな らない。そして多様な運動パターンと動作のバリエーションを獲得することが 特定部位への過剰な力学的ストレスの軽減につながると考えられる。 本セミナーでは、そのための理学療法評価および治療を紹介していく 講義の概要 到達目標 事前学習資料 など 股関節の解剖、運動学が理解できる。股関節と隣接関節、あるいは体幹と の関連性について理解できる。それに基づいた評価,治療が実践できる なし 1回目 各講義の テーマ 股関節を理解する:解剖学的,運動学・運動力学的視 点 2回目 股関節を評価する:局所的評価,全身的評価 3回目 股関節を治療する:局所的治療,全身的治療 10 担当分野 呼吸器 担当者 大平 高正 所属 ハートリハ ソラ 日本人の死亡要因の一つであった肺炎は、脳血管疾患を抜いて、現在では 第3位となっている。これは、高齢化の影響と考えられる。高齢化は今後も進 んでいくため、ますます増加すると推察される。また、高齢化の他にも、若年 層や女性の喫煙率の増加があり、肺がんや COPD など肺疾患そのものも増加 している。今や呼吸機能に対する知識や技術は、医療機関のみならず介護施 設、訪問においても不可欠なものとなっている。 呼吸器疾患に対する理学療法は、臨床場面ではパーカッションや呼吸介助 法などの技術的な部分は非常に重要となる。呼吸苦を軽減させることもでき 講義の概要 るし、排痰を行うこともできる。即時効果を出しやすい分野なのである。しか し、理学療法技術によって、肺そのものが良くなるわけではないことを考える と、理学療法単独では長期効果は期待できにくい。そのため、慢性肺疾患に罹 患している患者に対しては、医師や看護師、栄養士など多職種との連携が必 要であり、包括的なアプローチが効果的とされている。多職種連携の中で、理 学療法士の存在意義を主張するには、短期効果のみではなく、長期効果にお いてもプラスの要素を提供していかなければならない。そのためには、『肺』 といった単一の臓器に着目するのではなく、呼吸循環機能といった広い視点 で捉えていくことも必要となる。 到達目標 事前学習資料 など 呼吸循環機能(大循環と小循環)を理解し、呼吸器疾患に対してではなく、呼 吸機能に対する理学療法を実施できるようになる 特になし 1回目 呼吸循環機能および呼吸不全の理解 呼吸介助法の習得(実技) 各講義の テーマ 2回目 3回目 胸郭と呼吸機能(実技) 急性呼吸不全と慢性呼吸不全に対する理学療法 プログラムの立案 11 担当分野 在宅/訪問リハビリテーション 担当者 高橋 知良 所属 介護老人保健施設 清流荘 我が国の医療政策は、病院医療から在宅福祉に大きく進んでいます。医療に勤 務する理学療法士も「地域は興味ない」と言っていたのでは、もはや通用しない。 自分の勤務する施設も含めた地域において何が起こっているのか? どのよう なニーズが我々に求められているのかを知り、今後の変化に臨機応変に対応でき る理学療法が望まれている。 初回の講義では、介護保険や地域社会において、「これだけは知っておいてほ しい制度」を学んでほしい。これ無しでは、いくら良い技術があっても地域の中で は他職種との連携ができない。小難しいが大切なのである。 2回目は、生活支援について理学療法士の視点、いわゆる評価について話をし たい。我々は身体機能を向上させることが基本的使命であるが、地域ではその先 に生活が存在している。いくら麻痺が治り、痛みが取れても 講義の概要 生活が変わらなけ れば我々は社会から評価されない。生活をどのようにとらえて、どこを見て、何を 治すのか。評価方法は臨床で行っていることと何ら変わらない。違うのはその先 の生活の変化をどうイメージできるかということである。生活を変えるためには 環境因子と個人因子の双方を変える必要がある。手っ取り早いのは生活環境を体 に合わすことであるが、その方の生活が見えていなければ、理学療法士が考えた 「よさそうな環境」は その後の生活や人生に強みとして働くことはない。しっか りと「生活が見えている環境つくり」は、たとえ手すり1本でも、その後のその人の 人生にしっかりと役立つのである。そんな、環境つくりのポイントを話したい。 3回目では、少し技術的な側面に触れたい。個人因子としは、維持期の身体機能 を保つために継続したコンディショニングを行う。実際の治療に近い場面も存在 するが、それは他の講師にお任せして、身体機能のチェックとホームプログラム そして、環境の中で動くための介助法(動作介入)・トランスファーガイドについて も実技を交えながら話したい。 到達目標 各講義の テーマ 地域理学療法を理解し、地域活動ができる。在宅場面で訪問しても困らない 1回目 介護保険と訪問リハに関する制度について学ぶ 2回目 生活支援の視点と評価・環境のつくり方 3回目 維持期のコンディショニングケア 12 担当分野 循環器 担当者 安藤 真次 所属 臼杵市医師会立コスモス病院 「循環器疾患に対するリハビリテーション」は、患者本人の「自覚症状」と「予 後」を改善させることです。 「自覚症状」については心疾患の場合、心不全が改善されることで自立度 は改善されるものの、日常生活における過負荷な生活状況が続くと心不全を 再発する危険性があります。「循環器系に過剰に負担をかけない方法を検討 する」これが ADL をチェックする際に大事なキーワードです。 次に「予後」を改善するためには退院後の生活変容が重要です。本人及び 家族が学習してきた生活様式が心疾患に悪影響を及ぼすことに気づき、教育 講義の概要 入院において学習を行い、変わらせるのではなく気づいてもらうことで自ら が変わっていく行動変容を促すような関わり方についてお伝えできればと思 います。 循環器疾患というと「何かあったら、どうしよう」という不安があるのでは ないでしょうか?病気を知る事、心電図を確認できるようになる事、「何かあ った場合」の対処法を明確にすることで安心安全な理学療法およびホームプ ログラムを提供できるようになる事でしょう。 それが、地域包括ケア時代における地域社会が理学療法士に期待している 一面でもあるのですから。 到達目標 事前学習資料 など 各講義の 循環器疾患に対する運動療法の実践ができる。 再発予防を理解することで生活期での指導が行えるようになる 特になし 1回目 循環器疾患について知る 2回目 心電図および検査について テーマ 3回目 運動療法の実際と在宅における疾病管理の実践に 向けて 13 担当分野 小児理学療法 担当者 武田 真樹 所属 別府発達医療センター 大分県内には 1,000 人を超える理学療法士がいるが、その中の何名が 小児理学療法に携わっているのだろうか?私自身の素朴な疑問である。 多分、県内にある数カ所の療育機関に従事する理学療法士が、その殆ど ではないかと思われる。 この現状は、対象者・疾患の特殊性(年齢・希少性等)や、障がい児を取り 巻く医療資源・制度により、全国的に同様の傾向である。しかし、近年の疾 病構造の変化(軽度・重度の二極化)や、国の医療政策(病院→在宅)は、こ の傾向に変化を齎している。例えば、在宅の超重症児が増えることによっ て、呼吸器疾患(感染症等)のため基幹病院の小児科病棟に入院するケー 講義の概要 スが増え呼吸リハ対象になる。療育機関に通院できない超重症児が、地域 の医療機関の訪問リハ対象になる。等である。 今回の講義では、療育機関以外の理学療法士が、小児ケースを担当し た時に必要な基本的知識、具体的な介入方法(評価と治療)についてお話 をする。時間の都合もあり、小児対象疾患を幅広く網羅することは出来な いので、代表的な疾患である脳性麻痺に限定して、より理解を深めて頂き たい。また、『子どもは大人を小さくしたものではない』とよく言われるが、 まさにこの事が小児理学療法の専門性であり、面白さ・難しさでもあると 考えている。この面白さ・難しさもダイレクトにお伝えしたい。当日、お会い できる方々にとって、有意義な情報・時間が提供できれば、講師として幸い である。 到達目標 事前学習資料 など 小児理学療法を実践するために必要な基本的知識、具体的な介入方法に ついて理解を深める。(対象疾患は脳性麻痺とする) 特になし 1回目 各講義の テーマ 2回目 小児理学療法を取り巻く社会的背景、基本的な考 え方、正常運動発達知識について 脳性麻痺の理学療法評価と治療(正常発達知識の 応用と姿勢ケアの紹介) 14 担当分野 神経難病 担当者 大平 高正 所属 ハートリハ ソラ これまで整形外科単科の医療機関に所属していれば、あまり経験すること は無かったかもしれない。しかし、これから理学療法士の活躍する場所が介護 現場や在宅に移れば、神経難病に罹患した方を担当する可能性は非常に高 い。そのように考えれば、疾患の特性を理解し、最終的なゴール設定を考える ことができるようになっておくことは非常に重要である。この講義では、神経 難病疾患の中でも比較的経験する可能性の高い、パーキンソン病、ギランバレ 講義の概要 ー症候群、運動ニューロン疾患、脊髄小脳変性症の4疾患を中心に病態の理 解をはかり、理学的評価および運動プログラムが立案できるようになるまで の話ができればと考えている。 到達目標 事前学習資料 など 神経難病患者への評価と運動プログラムの立案、実践ができるようになる 特になし 1回目 各講義の 2回目 テーマ 3回目 パーキンソン病 / ギランバレー症候群に罹患した 患者に対する評価と運動プログラムの立案 運動ニューロン疾患 / 脊髄小脳変性症に罹患した 患者に対する評価と運動プログラムの立案 なし 15 担当分野 スポーツ理学療法(テーピング) 担当者 髙橋 隆一 所属 中村病院 テーピングとは様々な素材の粘着テープやバンデージなどを使用し、機能 解剖や運動や競技の特性を考慮し、身体の各部位に対して貼ったり、巻き効果 を期待する手法である。 スポーツ現場でも競技者は様々な状況下で身体損傷を負う事がある。損傷 の予防、リハビリテーション、競技復帰までの過程において損傷部位への補強 をし、安全かつ効率的に競技復帰の助けとなる方法の一つにスポーツテーピ ングがある。 講義の概要 テーピングの目的には外傷の予防、応急処置、再発防止の3つがあり、効果 としては関節可動域の制限、固定、圧迫、疼痛緩和、精神的な支えなどがあ る。 ここでは広く使われることの多い非伸縮テープや伸縮テープを使用した 基本的なスポーツテーピングの方法を行う。 またテーピングの活用法はスポーツに留まらず趣味のレジャーや日常の生 活においても役立つ事があるため、初歩的なテーピングの扱い方から行い、 最終的に一つの手法として身に付けて頂きたい。 到達目標 事前学習資料 など テープの扱い方とスポーツテーピングの基本的な巻き方の習得し、自分 で目的に合った可能なテーピング手法を身に付ける 特になし 1回目 各講義の テーピングについて(総論:目的・活用方法など) テーピングを扱い方 2回目 テーピングの実際① 足部を中心に 3回目 テーピングの実際② 膝関節・その他 テーマ 16 担当分野 体幹 担当者 井上 仁 所属 大分大学医学部附属病院 姿勢による動作への影響は大きく、肩関節周囲炎や変形性膝関節症など必 ずしも当該部位が原因となっているとは限らない。そんな中、『体幹』に眼を 向けてアプローチを行うと症状が改善することを多く経験してきた。このよう に体幹は重要な部位であるにも関わらず、学生時代に体幹について学習する 時間はほとんどないのが現状ではないだろうか。 『体幹』とは明確な定義がなく、セラピストによって多少の認識の違いがあ る。この部位は人体の質量の割合として最も重い部位で、その質量比は約 講義の概要 50%に及ぶ。この質量をどうのように制御するかによって動作効率は変化す る。そのためにはインナーユニットやアウターユニットの活動が必要となる。し かし、これらの安定化機構の破綻は姿勢の変化につながり、運動器だけでな く呼吸器にも影響を及ぼす。 この講義では体幹の基本的な構造・体幹機能や姿勢の診方・『認知』から診 た体幹機能に関する内容を、実技を踏まえて行っていく予定である。 到達目標 事前学習資料 など 各講義の 四肢の疾患と体幹機能との関連付けが行えるようになり、治療プログラ ムを立案できるようになる 特になし 1回目 体幹の基本的構造を理解する 2回目 体幹機能の評価 3回目 姿勢の評価・『認知』から診た体幹とは テーマ 17 担当分野 脳卒中 担当者 畑中 哲志 所属 大分中村病院 脳ほど、機能性に富んだ臓器はない。その脳が障害されることで引き起 こされる様々な機能障害群が脳卒中という疾病である。 平成 25 年国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な原因は、要 介護者では脳血管疾患(脳卒中)が、21.7%と最も多く、全ての介護度の原因 において上位 3 位以内に入っており、脳卒中患者に対するリハビリテーション は、より質の高いものが求められてきている。 近年、脳科学の発展に伴い、脳の機能や病態が次々と明らかとなり、それに 講義の概要 伴いさまざまなリハビリテーションの手法が考案されている。しかし、実際に は教科書通りにいくことは少なく、患者が表出する現象に対して、解釈できず に困惑する場面も多いのではないだろうか。 そこで、今回は基礎的な脳生理を学習していきながら、脳卒中患者の表 出する現象を脳生理の観点から分析していきたい。それにより、脳卒中患者の おかれている状況を理解することができるようになり、患者一人ひとりに対 し、オーダーメイドの医療(練習内容、練習量など)を行い、その上で『結果』を 出していけるようになることを目指す。 到達目標 事前学習資料 など 脳卒中患者の脳機能の状態を理解し、それをふまえ評価、理学療法プロ グラムの立案、実践ができるようになる 特になし 1回目 各講義の テーマ 2回目 3回目 脳生理、姿勢制御、運動学習について 脳卒中患者に対する評価と治療 -基本動作を中心に 脳卒中患者に対する評価と治療 -日常生活動作を中心に - 18 担当分野 膝関節 担当者 河野 礼治 所属 新別府病院 多くのセラピストがかかわる医療、介護現場において、急性期・回復期・維持 生活期や疾患別(脳血管疾患、呼吸器循環器疾患等)を問わず、動作改善に対 して膝関節機能の低下が問題となっている。また、スポーツ場面では、膝関節 の疼痛や機能低下によるパフォーマンスの低下が生じていることは多いので はないだろうか。しかし、それに対するアプローチとして、単純な大腿四頭筋 の筋力強化や関節可動域(単純な屈曲・伸展)改善のみによって、膝関節周囲 の疼痛、動作改善(立ち上がりや歩行等を含め)および向上を期待していない だろうか。また、膝関節のみを診てはいないだろうか。 講義の概要 まずは膝関節機能低下の原因となりうる要因(自律神経、脊柱機能、内臓 機能)を知る必要がある。そして、動作における膝関節の機能(運動学、解剖 学)を知り、筋出力の向上(出力抑制の原因)や除痛、アライメント改善、運動学 習を含めたアプローチを考え、動作やパフォーマンス改善、生活機能向上に効 果的な運動療法の実際の話をしたい。 到達目標 事前学習資料 など 膝関節機能の評価と運動プログラムの立案、実践ができるようになる 特になし 1回目 各講義のテ 2回目 膝関節機能低下に与える影響:自律神経系、脊柱機 能などによる筋出力抑制を考える 膝関節の機能:動作場面での運動学的な視点 ーマ 3回目 膝 OA、TKA 術後のアプローチの実際(時間があれ ば、ACL 損傷も含む) 19 担当分野 肘関節/手指 担当者 大平 高正 所属 ハートリハ ソラ 肘/手指は、比較的受傷しやすい身体部位であるにも関わらず、整形外科の 外来診療のみで対応されることが多い。そのため、あまり臨床現場では経験 しにくい部位なのではないだろうか。しかし、手指と脳の関係性は非常に強 く、単に運動器疾患として捉えることが難しい部位でもある。CRPS など初期 対応を間違えてしまうと、症状が長期化、重症化する疾患もある。脳卒中にお いては、シェーピングを考えていく際にも知っておかなければならない事は 多い。また、年齢や疾病を問わず ADL の拡大や QOL の向上を考える際には、 キーワードになる部位でもある。 講義の概要 このように考えると、肘/手指は、我々セラピストにとって、常に得意分野に しておくことが重要であると考えている。 今回の講義では、上腕から前腕の解剖および肘/手指の運動学について勉 強し、手根骨や手指のモビライゼーションができるような実技を行っていく予 定である。その上で、理学的評価および運動プログラムが立案できるように なるまでの話ができればと考えている。 到達目標 事前学習資料 など 肘/手指の解剖および運動学の基本的な部分の理解と、運動プログラムの立 案、モビライゼーションの方法 特になし 1回目 各講義の 肘/手指の解剖および運動学およびモビライゼー ション技術の取得 2回目 肘/手指の疾病の理解と運動プログラムの立案 3回目 なし テーマ 20 担当分野 物理療法 担当者 大平 高正 所属 ハートリハ ソラ 我々が臨床場面で使用する物理療法機器の種類は 20 年ほど前から大きく は変化していないが機器の性能は非常に大きく進歩している。その最たる例 が電気治療器(EMS)ではないだろうか。20 年前は、EMS を使うには、モーター ポイントを探しだす必要があった。また EMS により筋収縮を生じさせるために は、低周波帯域での通電が必要となる。しかし、低周波帯域では皮膚抵抗が指 数関数的に増大してしまい、疼痛や火傷の原因となるため医療機器としては 致命的なのである。EMS の開発の歴史は皮膚抵抗との戦いであった。皮膚抵 抗を抑えて高い出力を生体内へ流すための様々な工夫がなされてきたこと で、最近の EMS は、高出力、小型化がなされ、運動療法室内だけでなく、病棟 講義の概要 や訪問にも携帯できるようになっている。しかし、EMS のハードの面が進歩し たことに対して、我々セラピストによる EMS の使用方法(ソフト面)は、あまり進 歩したとは言えない。これまでの EMS の使い方は、疼痛部位に電極を貼付し て、一定時間通電しその間は安静にしている、といったものであった。しかし、 コンバインド エクササイズは、セラピストが通電中に自動もしくは他動運動を 行うことで、大きく3つの利点がある。一つ目は、筋性の可動域制限を改善さ せるための時間が非常に短時間で済むこと。二つ目は、通電により疼痛軽減 が得られること。三つ目は、疼痛や可動域制限の原因を幅広く探れることで ある。今回は、物理療法の基礎的な話とコンバインド エクササイズを行う予 定である 到達目標 事前学習資料 など 各講義の 物理療法の安全で効果的な使い方の理解 特になし 1回目 物理療法の基礎知識 2回目 コンバインド エクササイズ 3回目 なし テーマ 21 超音波/低周波 大分市東大道 1-7-8-102 ハートリハ ソラ 097-574-7742