四探針法による導電性薄膜の抵抗率測定

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四探針法による導電性薄膜の抵抗率測定
平成 20 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会
講演番号:120
四探針法による導電性薄膜の抵抗率測定
Resistivity measurements for conducting thin films by four-point probe method
井坂 大智
Daichi ISAKA
若松 孝
Takasi WAKAMATSU
2
面抵抗ρs[Ω /cm ]
電流源
茨城工業高等専門学校 電気電子システム工学科
Department of Electrical and Electronic Systems Engineering, Ibaraki National College of Technology
1. はじめに
A
金属薄膜やインジウム-スズ酸化物(ITO)のような導電性薄膜は、
V
太陽電池、液晶、有機 EL ディスプレイ等に用いられている。こ
れらの抵抗率測定では、四探針法による測定が用いられる。薄膜
抵抗率の測定器は市販されているが、汎用的に使用されることが
多く、低抵抗の導電性薄膜の精密な抵抗値測定が難しい場合があ
る。そこで、本研究では、面抵抗 102[Ω/cm2]以下の導電性薄膜
s
を対象に抵抗率測定を行い、測定における問題点等を検討した。
A B C D
2. 直流四探針法による抵抗率測定
四探針法は、図 1 に示すように、試料に 4 本の針状電極を一
図 1 直流四探針法測定回路
直線上に置き、両外側の探針 A,D 間に一定の電流 I を流し、内
側の探針 B,C 間に生じる電位差 V を測定し、抵抗 R を測定する。
9.0
近似値
二点間の電位を求めるポアソン方程式を解くことにより得られる
補正値
8.0
補正係数を F、試料の厚さを t[m]とし、探針間距離に比べ試料
サイズが十分大きい場合、F=π/ln2=4.532 と近似できる。体積
7.0
抵抗率ρ[Ω・cm]と面抵抗ρs[Ω/cm2]は次式により算出する
-120-
6.0
5.0
10
20
30
40
測定位置[mm]
50
60
25mm
0
図2
8.0
面抵抗 ρs[Ω/cm2]
今回の測定では、探針に先端半径 30µm のタングステン針を
用い、探針間に 30[mA]程度まで電流を変化させ I-V 特性から R
を求めた。
3. 測定結果
(1) 測定位置と面抵抗値
試料サイズ 25×65mm のガラス上に形成された ITO 膜に対し
て、探針を置く測定位置を変えたときに、F=4.532 として近似
した場合と、試料サイズと測定位置を考慮して F を算出した場
合の面抵抗値を比較した。図 2 に示すように、近似値では試料
端に近づくほど、面抵抗は増加する。試料サイズと測定位置を考
慮した場合には、試料端においても正確な値を示した。
(2) 探針間距離と面抵抗値
(1)と同じ試料を用い、試料中心に探針を置き、探針間距離 s
が 0.5mm から 3.0mm の範囲で抵抗値を測定し、(1)同様に比較
を行った。この場合も F を各々の測定条件について求めた場合
は探針間距離に依存せず、正確な値を示すことが分かる。
(3)Ag 蒸着膜の膜厚と面抵抗値
真空蒸着法で作製した膜厚の異なる Ag 薄膜の面抵抗を測定し、
バルク時の抵抗値との比較を行った。測定は Ag のバルクの体積
抵抗率 1.59×10-8[Ω・m](文献値)と比較を行った。膜厚が小さい
ほど、面抵抗はバルクよりも大きな値を示した。
4. まとめ
導電性薄膜の抵抗率は、補正係数 F を正確に求めれば、測定
条件が異なっても正確な抵抗値を求められる。しかし、実際の抵
抗率測定には、探針間距離をできるだけ小さくし、試料の中心付
近で測定することが望ましい。
65mm
測定位置と面抵抗値
近似値
補正後
7.8
7.6
7.4
7.2
7.0
0.0
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
探針間距離s[mm]
図3 探針間距離と面抵抗値
3.0
面抵抗 ρs[Ω/cm2]
ρ = F ⋅ t ⋅ R = ρs ⋅ t
3.5
測定値
バルク値
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
10 20
30 40 50 60
膜厚t[nm]
70 80
90
図4 Ag蒸着膜の面抵抗値変化
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