わが社のインターンシップ

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わが社のインターンシップ
公益社団法人 化学工学会 http://www.scej.org/
わが社のインターンシップ
インターンシップ委員会から
1.‌富
‌ 士フイルム株式会社におけるインターン
シップの紹介
れたら実験開始です。実験器具や材料は予め指導員が準備
していますが,実験企画や実験実施の段階で新たなアイデ
アが出る場合も多く,その場合は手配に走り回ることにな
当社の化学工学会インターンシップは,8 月中旬から 3
ります。そのような生々しい様子を見てもらえるのもイン
週間ほどの日程でおこなわれています。研修先は R&D 統
ターンシップならではのことだと思います。実験が始まる
括本部 生産技術センターで,化学工学的テーマの実験を
と,指導員やアシスタントだけでなく,実験室や測定装置
主におこなっています。研修期間中は,研修生は社員と同
などを共用する他の社員とのやりとりも必要になります。
じ職場に席を置き,毎朝の安全ミーティングにも参加しま
測定装置の使用予約の交渉もできるだけ研修生本人にやっ
す。研修の最後には成果発表会をおこないます。研修生の
てもらいます。実験は,いろいろな問題により計画通りに
指導教員,化学工学会事務局,および社内の関係者が出席
進まないことが多く,研修生も指導員も正念場を迎えま
し,プレゼンテーションと質疑・意見交換をおこないます。
す。様々な工夫と頑張りにより結果をまとめ,結論へと導
短期間に一つのテーマを仕上げるのは大変ですが,学生さ
きます。最後は,発表資料の作成です。発表は 5 分∼ 10 分
んには達成感を感じてもらっており,また大学での研究活
ほどですが,指導員の指導のもとで資料作成,プレゼンテー
動にも活かしてもらっています。
ションの練習をおこない,成果発表会に臨みます。成果発
研修生には,若手技術者の指導員が 1 名つき,さらに実
表会では,プレゼン内容に関する質疑や討論がおこなわれ
験にあたりアシスタントが 1 ∼ 2 名つきます。研修テーマ
ます。また,研修期間中は,仕事以外でも懇親会や夏祭り
は,以下の点に重点をおきながら,若手指導員と上長が議
などの社内イベントにも可能な限り参加してもらっていま
論して,毎回オリジナルテーマを立案しています。
す。若手社員の本音を聞いてもらうことも会社を知っても
・安全が確保できる実験内容であること
らう上で大切なことと位置付けています。
・会社における技術者の業務がイメージできる実務的
テーマであること
・研修期間中に実験の企画∼実験の実施∼結果の考察∼
2.‌イ
‌ ンターンシップ受け入れ企業としての感想
当社では,インターンシップは学生と企業が相互に良く
知り合うことができる,貴重な機会になっています。特に
報告書の作成までやりきること
研修生はまず指導員から生活や安全上の注意事項,テー
化学工学会ではインターンシップの募集はオープンですの
マの背景・目的とおおまかなシナリオおよび実験室・実験
で,企業にとっても学生にとっても選択の範囲が広いこと
装置の使用法などの説明を受けます。説明が終わるといよ
が特徴です。また,インターンシップ期間中の企業と学生
いよ研修本番です。まず,テーマに関する予備知識の学習
の交流により,生々しい仕事の様子を肌で感じてもらうこ
や事前調査から始まります。指導員から予め資料を渡しま
とができ,お互いに理解を深める絶好の機会になっている
すが,それだけでは不足の場合が多く,さらに文献調査を
と思います。なお,今後インターンシップをさらに有意義
してもらいます。事前調査が終わりますと,実験結果のグ
にして行くためには,企業と学生さんの情報交換に加え
ラフをイメージしながらの実験企画をおこないます。実験
て,企業と大学の指導教員との情報交換を深められないだ
に必要な器具や材料なども考えます。指導員の了解が得ら
ろうか,と思います。現状では,指導教員との情報交換は
Yukihiro KATAI(正会員・上席化学工学技士)
1988 年 京都大学大学院工学研究科化学工学
専攻修士課程修了
現 在 富士フイルム(株)R&D 統括本部 生
産技術センター 研究マネージャー
連絡先;〒 250-0193 神奈川県南足柄市中沼
210
E-mail yukihiro.katai@fujifilm.com
成果発表会のわずかな時間か懇親会の場しかありません。
もっと,指導教員とも情報交換をおこない,インターンシッ
プの理解を深めてもらいたいと思います。学生インターン
シップは企業の負荷は少なくはありませんが,企業の若手
指導員の成長にもつながっている感触を持っており,今後
も継続してゆく方針です。多数の学生さんの参加をお待ち
しております。
第 79 巻 第 4 号(2015)
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