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SIDS in HPV programme & CCAP 初期評価プロファイル(SIAP) 1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8,-ヘキサメチルシクロペンタン-γ-2-ベンゾピラン (HHCB) 物 質 名 :1,3,4,6,7,8-Hexahydro-4,6,6,7,8,8-hexamethylcyclopenta-γ-2-benzopyran CAS No.:122-05-5 SIAR の結論の要旨 物理的-化学的特性 HHCB は融点が-10 と 0℃の間で、沸点が 325℃の粘性のある液体である。蒸気圧は 0.0727 Pa (25℃)である。HHCB は測定水溶解度が 1.75 mg/L(25℃)である。ゆっくりと撹拌する方法によっ て測定された時の log Kow は 5.3 と判定された。 ヒトの健康 HHCB の経口または吸入によるばく露後の入手可能なトキシコキネティクデータはない。静脈内投 与の後に多くの HHCB 代謝物がラットとブタの尿サンプル中に検出された。96 %アルコール中の 1 % HHCB を用いるヒトの表皮粘膜による in vitro 吸収試験で、塗布用量の 5.2 %が 24 時間以上で吸収さ れた。 HHCB は、意図的にばく露されていない欧州の数カ国の女性の母乳サンプル中に、最高濃度 1316 ㎍/kg 脂肪で、また脂肪組織中に濃度範囲 12-189 ㎍/kg 脂肪で検出された。 ラットの経口LD 50 はウサギの経皮LD 50 と同様に > 3000 mg/kg bwであった。ラット経皮LD 50 (雌) は > 6500 mg/kg bwであった。急性吸入毒性データは入試できなかった。 1 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター HHCB は、動物とヒトにおける刺激性と感作性の試験から判断されように、皮膚に対して、腐食性 でも刺激性でも感作性でもなかった。気道刺激性に関するデータは入手できなかった。関連する試験で、 HHCB はウサギで僅かな眼刺激性物質であると考えられた。動物試験から(ウサギとモルモット)HHCB は光刺激性かもしれないという若干の徴候があった。ヒトおよび in vitro 試験は光刺激性影響を示さな かった。 OECD ガイドライン 408 に従った、動物 15 匹/性/用量(経餌濃度は 5、15、50、または 150 mg/kg bw/d であった)の 90 日経口試験において、死亡または有害性臨床徴候は無かった。処置群の体重およ び摂餌量は対照群で観察されたものと同様であった。眼科的評価では変化は観察されず、どの用量でも 有意な組織病理学的所見は観察されなかった。対照との血液学的および血液化学的な違いは、全て僅か で、多くの場合、投与量に比例していなかった。これらの所見は有害な組織病理学的または他の関連す る所見を伴わず、それらは有害性影響では無いとの結論に達した。ラットにおいて、HHCB について試 験した最高用量 150 mg/kg bw/d の NOAEL が結論された。 広範な in vitro の一連の試験および一つの in vivo マウス小核試験により証明されたように、HHCB は、非遺伝毒性物質であった。in vitro で HHCB は、複数の細菌による代謝活性化系有無の遺伝子突然 変異試験で、一つの代謝活性化系有無の CHO-K1 細胞による染色体異常試験で、代謝活性化系有無の ヒト細胞による SCE と小核試験で、ならびに一つの初代培養肝細胞による UDS 試験で陰性であった。 HHCB は in vivo 小核試験で有意な染色体異常も誘発しなかった。 発がん性試験データは入手できなかった。 標準多世代試験は入手できなかった。13 週間経口反復投与毒性試験において、経餌による 0、5、15、 50 および 150 mg/kg bw/d の投与は、雌雄ラットの生殖器官への影響がなかった。さらに、生殖能力へ の影響は周産期/出産後の検査で見出されなかった。 経口による周産期/出生後毒性試験において、妊娠雌ラット 28 匹の群は、毎日一回 0、22、6、およ び 20 mg/kg bw/d の用量に胃管強制により、妊娠 14 日から離乳を経て出産後 21 日(周産期段階の期間 の子宮内、または授乳中母獣のミルクへの移行を通じた F1 世代のみの HHCB のばく露)までばく露さ れた。母獣またはその F1 および F2 の新生仔の毒性は最高用量まで見られなかった。NOAEL 20 mgHHCB/kg bw/d(試験した最高用量)が確定された。 経口による発生毒性試験において、HHCB は、コーン油中、胃管強制により、雌ラット 25 匹の群に 用量 50、150 および 500 mg/kg bw/d で妊娠 7 日から 17 日投与された。母獣毒性の徴候が 150 mg/kg bw/d 以上で観察された。最高用量の 500 mg/kg bw/d で胎仔の骨格奇形の発生の増加と骨形成の減少があっ た。母獣毒性の NOAEL は 50 mg/kg bw/d、発生毒性の NOAEL は 150 mg/kg bw/d であった。上記の 周産期/出産後毒性試験から、NOAEL 20 mg/kg bw/d(試験された最高用量)が確定された。HHCB は in vitro で非常に弱いエストロゲン性を有したが、他の点では OECD TG 440 と同じである、最高が 40 mg/kg bw/d(マウスの飼料中 300ppm 、2 週間)までの in vivo の非卵巣摘出マウスによる子宮肥大試 験において、このような影響は見られなかった。 2 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター HHCB は、入手可能な情報によれば、生殖/発生毒性に対する懸念を示さない。 HHCB は、その低い有害性プロファイルにより、ヒトの健康に有害性を示さない。OECD HPV プロ グラムの目的のために、ヒト健康の有害性を特徴付けるのに適切なスクリーニングレベルのデータが入 手可能である。 環境 分子中に水と反応する官能基を含んでいないので、HHCBは加水分解的に安定であると考えられる。 大気条件下で、太陽光による直接光分解およびOHラジカルとの気相の反応がHHCBの主要な分解経路 であると考えられる。測定反応速度定数 2.6×10-11cm3 molecule-sec-1 に基づき、そして昼間 12 時間、 OHラジカル濃度 1.5×106 OH-ラジカル/cm3と仮定すると、大気中半減期は 3.7 時間である。湖水中の UV照射による分解半減期は、北緯 50 度の真夏晴天時の太陽光に相当する実験室での設定条件下で、約 109 時間であった。HHCBはOECD TG 301B試験で易生分解性でなかった。一次生分解行程で、HHCB は、ありそうな中間体としてHHCB-ラクトンとヒドロキシカルボン酸と共に、より極性のある一連の代 謝物に急速に変化した。10 mgの活性汚泥を用いる放出地点の表層水の状況をシミュレートする河川水 のdieaway試験で、 14C-標識された親物質の消失と代謝物の生成が確認された。全体の半減期は 100 時 間であり、28 日で生分解(初期)は 60 %を超えた。汚泥のdieaway試験で、10~15 時間の半減期が観 察され、28 日後に代謝物として 70 %が存在していた。被験物質を添加した土壌と底質におけるメソコ スムス試験は、HHCBがほぼ完全に 1 年以内に消失したことを示す。通常の活性汚泥を散布した圃場に おいて、HHCBおよびAHTN (CAS.1506-02-1) *JETOC註 1の合計として表される土壌中の残留は、最後の 汚 泥 散 布 後 数 年 以 内 に 、 推 定 散 布 量 の 1% よ り も 十 分 に 低 か っ た 。 * : JETOC 註 1 : 7-Acetyl-1,1,3,4,4,6-hexamethy-1,2,3,4-tetrahydronephtalene 大気、水および土壌コンパートメントに同等に継続的に分布するレベルⅢのフガシティーモデルは HHCBが大気に<<1 %、水に 2 %、土壌に 34 %および底質に 64 %分布することを示唆した。Henry則 定数の測定値は 36.9 Pa.m3/mol( 25℃)である。logKowに基づく推定logKocは 4.39 であり、測定logKoc 値(様々なマトリックスで 3.6~4.9)の範囲内であった。OECD TG 305E の試験に従ったHHCBの生 物濃縮係数測定値は、ブルーギル サンフィシュで 1584 およびゼブラフィッシュで 624 であった。その 排出半減期は 2 日未満であった。 急性水生毒性データが得られている。 Taxon Test species Endpoint Result Guideline M/N** 1.36 OECD TG 204 M 0.88 OECD TG 202 - part 2 OECD TG 201 M mg/L Fish Lepomis macrochirus Invert Daphnia magna Algae Invert Pseudokirchneriella subcapitata Acartia tonsa [marine] Invert Nitocra spinipes [marine] 3 Bluegill sunfish 96h-LC 50 (mortality) 72h-EC 50 * (immobility) 72h-EC 50 (growth rate biomass) 48h-LC 50 (mortality) 48h-LC 50 (mortality) 0.854 0.723 0.47 1.9 一般社団法人 draft ISO/DIS 14669 draft ISO/DIS 14669 M N N 日本化学物質安全・情報センター *OECD TG 202-part2 試験(以下参照)から導出 **N:設定濃度;M:測定濃度 以下の慢性毒性試験結果が水生生物種について決定されている: Taxon Test species Invert Pseudokirchneriella subcapitata Daphnia magna Invert Acartia tonsa [marine] Fish Lepomis macrochirus Fish Pimephales promelas Algae Bluegill sunfish Fathead minnow Endpoint 72h-NOEC (growth rate) 21d-NOEC (reproduction) 6d-EC10 (larval development ratio) 21d-NOEC(respiratio n, equilibrium) 32d-NOEC (survival, growth, evelopment) Result mg/L 0.201 Guideline M/N* OECD TG 201 M M 0.093 OECD TG 202-part 2 OECD draft TG (lifecycle test) (2004) OECD TG 204 M 0.068 OECD TG 210 M 0.111 0.044 M *N:設定濃度;M:測定濃度 毒性試験はOECD TG218 に基づき、または沿って 3 種の底生生物種で実施された。有機炭素含量 2 %*JETOC註 2で、28 日NOECは、小昆虫の幼虫 Chironomus riparius で 200 mg/kg dwt*JETOC註 3(発生)、 端脚類 Hyalella aztecaで 7.1 mg/kg dwt (生長)および水生貧毛虫 Lumbriculus variegatesで 16.2 mg/kg dwt( 生長)であった。毒性試験は土壌生物についても実施された。OECD TG207 に従ったミミズ Eisenia foetida の 8-週間NOEC(繁殖)および、ISO/CD 11267 に従ったトビムシ Folsomia Candida の 4-週 間NOEC(繁殖)は双方とも 45 mg/kgであった。 *JETOC 註 2:基質または底質中の含量 *JETOC 註 3:dry weight(乾重量) HHCB は環境有害性(急性水生毒性値 < 1 mg/L および易生分解性ではない)を示すかもしれない。 OECD HPV プログラムの目的のために、環境有害性を特徴付けるのに適当なスクリーニングレベルの データが入手可能である。 ばく露 HHCB の製造 の全て は、 2000 年で 製造量 1000~ 5000 ト ン /年の欧州の 1 つ の工 場にあ る。 RIFM(Research Institute of Fragrance Materials )と IFRA(International Fragrance Association)に よれば、使用量は 1993 年と 2006 年の間に実施された地域調査に基づいている。EU-15 に所属する国々 に、準加盟国のノルウェーとスイスを加えた国々について、1992 年の 2400 トン/年、2000 年の 1427 トン/年から 2004 年には 1307 トン/年へと使用量が減少した。 HHCB は 芳 香 油 ( fragrance oil ) の 原 料 に 使 わ れ る 。 fragrance oil は 文 献 中 で 、 fragrance compounds, fragrances, fragrance composition, perfume oil または perfume compositions とも言 われる。HHCB は一般的に多環ムスクとして知られる最大量の芳香剤原料の製品である。芳香油は複雑 な混合物であり、多くの芳香剤原料の様々な濃度での調合により作成される。これらの原料のほとんど は HCCB を溶解した液体である。芳香油の主な用途は、香水、化粧品、石けん、シャンプー、洗剤、 繊維製品のコンディショナー、家庭クリーナー製品および空気清浄剤のような消費者製品である。最終 4 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター 消費者製品とするための芳香油と他の原料との混合は、しばしば調剤(formulation)と呼ばれる。 HHCB の環境放出は、製造、混合、配合および消費者による使用中/後に生じるかもしれない。全使 用量は下水中に排出されると推定される。 職業ばく露は製造、混合、配合および洗濯業者による洗濯中に生じうる。経皮および吸入による HHCB 純物質への職業ばく露、および HHCB を含む混合物への経皮ばく露が関連する。芳香油の混合 および消費者製品の配合は、相互汚染を避けるために、高いレベルのオートメーション化、厳密な換気 および高度な作業精度を必要とする。職業清掃作業者は洗浄剤の使用時に HHCB にばく露し、また、 希釈洗浄液に手を入れる都度、経皮ばく露が生じるかもしれない。洗濯業者は洗剤を使用中にばく露さ れるかもしれず、そして、薄めた洗剤水溶液に手を浸す毎に経皮ばく露が生じるかもしれない。 消費者ばく露は経皮ならびに吸入ばく露の後に生じるかもしれず、経皮ばく露が最も高い。 5 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター