遺伝子工学試薬カタログ2013-2014, 「In vitro Packaging」p.447

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遺伝子工学試薬カタログ2013-2014, 「In vitro Packaging」p.447
トラブルシューティング
ト ラ ブ ル
予想される原因
Competent
が温度上昇により溶解
導入組換えプラスミドの純度が低い
ATP が反応系に含まれていない
対 策
他の Competent
を用意して下さい。
組換えプラスミドを再度精製して下さい。
ATP を添加して下さい。
末端を確認して下さい。特に認識配列に
Py、Pu、N を含む制限酵素断片の場合に
は要注意です。
制限酵素反応で生ずる短い DNA 断片をゲ
ル電気泳動などで除去して下さい。
PCR 断片は、末端が不ぞろいなので結合し
にくい。極端に効率が低い場合には DNA
Polymerase などで末端を揃えて下さい。
T4 DNA Ligase は高塩濃度で反応阻害を
受けるのでエタノール沈殿などで余分な
塩を除いて下さい。
PEG はトランスフォーメーションを阻害
するのでエタノール沈殿などで除去して
下さい。
DNA 断片の末端の不一致
短い DNA 断片の混入
高いトランスフォーメー
ション効率が得られない
PCR 断片
ライゲーション反応
が不十分
高塩濃度
PEG の混入
セルフライゲーションの有無をあらかじ
め確認して下さい。
ベクターの脱りん酸化が不十分
文 献
1)Mandel, M. and Higa, A. :
., 53, 159(1970)
2)Cohen, S. N., Chang, A. C. Y. and Hsu, L. :
3)Hanahan, D. :
., 166, 557(1983)
4)Chung, C. T., Niemela, S. L. and Miller, R. H. :
5)Hara, N.
.:
., 16, 8727(1988)
4. Electroporation の原理
エレクトロポレーション法によるプラスミドの大腸菌への導入
は、限られた量の臓器、組織からクローンサイズの大きいプラス
ミド cDNA ライブラリーを作製するために研究されてきた技術
である。電気パルスにより細胞が DNA を取り込む機構の詳細は
不明であるが、おそらく高い電場強度により細胞膜にプラスミド
DNA が通過する一過性の小孔ができるためと考えられている。
5. Electroporation の実際
,69,2110(1973)
,86,2172(1989)
Ⅱ.
(
1.
Packaging
Packaging Kit LAMBDA INN)
Packaging Kit LAMBDA INN の原理
1975 年に Becker と Gold によって初めて発表されたλファージ
DNA の
Packaging は、以来改良を重ねられ、108 pfu/
g λDNA を越えるパッケージング効率を示すまでとなった。
(用
いられたλファージ DNA 分子の 0.05 ∼ 0.5%の分子がファージ
粒子として得られる計算になる)
パッケージングは大まかに、①外殻前駆体形成、② cos site
で連結して concatemer を形成しているλファージ DNA の外殻
前駆体への挿入、③ cos site での切断、④ファージ粒子の成熟
という課程で進む。
Packaging Kit LAMBDA INN に 含 ま れ る Packaging
Extract は、1985 年に Rorsenberg らが発表した、1 種類の溶原
菌(cos site を持たないλファージ DNA が溶原化している)を用
いて extract を調製する方法を改良して調製しており、より簡便
にパッケージングを行うことが可能である。
Packaging Kit LAMBDA INN の実際
Packaging の反応
① Packaging Extract を− 80℃のフリーザーから氷中に移し、
速やかに溶かす。
② DNA 溶液(∼ 1 g/ )を 1 ∼ 6 加える。
③ 室温(約 22℃)にて 1 ∼ 2 時間放置する。
④ ファージバッファー 注 2)を 1 m 加え、穏やかに混合する。
(数日 4℃に保存する場合にはクロロホルムを一滴加える)
25
Basic Protocol
2.
注 1)
注 1)p.160 参照。HB101
(Code No. 317-02581)
、JM109
(Code No. 314-02591)
注 2)ジーンパルサーキュベット 0.1cm(Bio‐Rad 社製)
注 3)ジーンパルサー(Bio‐Rad 社製)
文 献
Bottger, E. C. :
, 6, 878(1988)
447
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25_2013_P437_472.indd 447
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宿主菌への導入
① 宿主菌の調製
ⓐ
VCS257 の単一コロニーを 2 m の LB broth(20%
マルトースを 70 含む)
に植菌し、37℃にて一晩培養する。
ⓑ 菌液 1 m を 1.5 m のチューブに取り、上清を残さぬよ
うに取り除き、10 mmol/ MgCl2(または MgSO4)0.5 m
に懸濁する。
② パッケージングの反応後のファージ液を軽く遠心して残査を
落とし、上清を 105 希釈した液から 100 取り、調製した
菌液 100 と混合し、室温(約 22℃)にて 15 分間放置する。
③ 48℃に保温しておいた LB top agar 注 3)3 m と速やかに混合
し、すでに固化している LB-plate に重層する。
注 1)
「2.
Packaging Kit LAMBDA INN の実際」に示したプロトコールは、
Packaging Kit LAMBDA INN に含まれているλファージ DNA を用いた対
図 1 Packaging 反応における温度の影響
照実験の手順である。組換え DNA のパッケージング効率が、λファージ DNA
のパッケージング効率より低下すると考えられる場合には、DNA 溶液の濃度を
高くするなどの変更が必要となる。
注 2)Phage Buffer
2.9 g
NaCl
MgSO4 . 7H2O
1g
1 mol/ Tris-HCl(pH 7.5)
25 m
2% gelatin
2.5 m
以上を H2O にて 500 m とし、オートクレーブ処理し、4℃にて保存する。
注 3)LB top agar
Tryptone
10 g
5g
Yeast Extract
5g
NaCl
agar
7.5 g
以上を H2O にて 1 とし、オートクレーブ処理し、4℃にて保存する。
図 2 Packaging 反応における Incubation time の影響
備考)Packaging Extract を調製する際に混入する溶原化λファージ DNA が、目的
DNA のパッケージング反応時にパッケージングされ、プラークが形成されるこ
とはほとんどない。
図 3 Packaging 反応におけるλDNA 量とプラーク数の関係
LAMBDA INN
Basic Protocol
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トラブルシューティング
ト ラ ブ ル
高いパッケージング効率が
得られない
予想される原因
Packaging Extract が温度上昇により溶解した
ライゲーション産物が、挿入 DNA とベクター
が交互に線状に連なったコンカテマーを形成し
ていない
パッケージングに用いた DNA が高度にメチル
化されている
対 策
他の Packaging Extract を用意して下さい。
挿入 DNA とベクターのモル比などのライゲー
ションの条件を再検討して下さい。
メチル化されていない DNA を用いて下さい。
文 献
1)Sambrook, J.
“
.
2)Rorsenberg, S. M.
3)Rorsenberg, S. M.
.:
.:
”, A Laboratory Manual, 2nd ed. 2. 3(1989)
, 39, 165(1985)
, 39, 313(1987)
448
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25_2013_P437_472.indd 448
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